著者の所属・活動拠点の国は、アイルランドです。
掲載誌:Current Opinion in Food Science
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
賞味期限が近い食材や製造工程で余った副産物などを活用してつくられる「アップサイクル食品」は、食品ロス削減の手段として注目されています。ただし、こうした食品が実際に選ばれるかどうかは、原材料がどのように活かされているかという価値が消費者の目に直接見えないぶん、パッケージの伝え方に大きく左右されると考えられます。アイルランドのユニバーシティ・カレッジ・ダブリン(University College Dublin)の研究者らは、2020年から2026年にかけて発表された研究をまとめ、アップサイクル食品のラベル表示のうち、どのような表現が消費者に受け入れられやすいのかを検討しました。
ラベルの「言い方」で購買意欲が変わる
この研究では、環境への配慮や栄養に関する表示が、購入意欲を高める要素として挙げられています。ただし重要なのは、何を伝えるかだけでなく、どう伝えるかだという点です。レビューでは、「持続可能な原材料からつくられています」といった抽象的な表現よりも、「廃棄されるはずだったリンゴの搾りかすを使用」のように具体的で内容がイメージしやすい表現のほうが、消費者に好まれる傾向があるとまとめられています。
また、効果的な訴求の仕方は食品の種類によっても異なると報告されています。アイスクリームのような、楽しみのために食べる嗜好品的な食品(レビュー内では「vice food」と表現されています)では、環境配慮に関する表示が食べることへの罪悪感を和らげ、魅力を高める方向に働くとされています。一方、低カロリーのマフィンのような、健康を意識して選ばれる食品(「virtue food」)では、栄養に関する情報のほうが購買意欲への影響が大きいとされています。
抽象的なエコラベルより、伝わる画像を
視覚的な要素についても触れられており、抽象的な環境ラベルのアイコンよりも、はっきりとした見栄えの良い写真やイラストのほうが、消費者の注意を引きつけ、関心を持続させやすいと指摘されています。これらを踏まえてレビューでは、アップサイクル食品を単に「廃棄物を減らす食品」として打ち出すのではなく、味や栄養、食べたときの満足感といった「品質の高さ」を前面に出す形で位置づけることが、市場での受け入れを広げる上で有効ではないかと提案されています。加えて、消費者の受け止め方には国ごとの違いもありうるため、地域の特性を踏まえた表示の工夫も必要だとされています。
この研究を読むうえで
本研究は、2020年から2026年にかけて発表された既存の研究を整理・検討したレビュー論文であり、著者ら自身が新たな消費者調査を行ったものではありません。そのため、ここで紹介した傾向は、これまでの研究結果を横断的にまとめた見立てであり、すべての国や食品カテゴリーに一律に当てはまると確定されたものではない点に留意が必要です。
まとめ
アップサイクル食品への関心が高まる中で、この研究は、パッケージ表示の「具体性」と「視覚的なわかりやすさ」、そして食品の性格に合わせた訴求内容の使い分けが、消費者の受け入れやすさに関わりうることを示しています。環境面の価値だけでなく、味や栄養といった食品そのものの魅力とのバランスが、アップサイクル食品が今後より広く選ばれていくための鍵になると考えられています。
著者:Joy Chidinma Nnadiegbulam(School of Agriculture and Food Science, University College Dublin, Dublin 4, Ireland)、Niamh Harbourne(School of Agriculture and Food Science, University College Dublin, Dublin 4, Ireland)、Simona Grasso(School of Agriculture and Food Science, University College Dublin, Dublin 4, Ireland)
※本記事は原著論文の翻訳ではなく、研究内容を独自に解説したものです。出典(原著論文):Joy Chidinma Nnadiegbulam, Niamh Harbourne, Simona Grasso. Upcycled food packaging and consumers: what works and what doesn't?. カレント・オピニオン・イン・フード・サイエンス (2026). DOI: 10.1016/j.cofs.2026.101445. 原著ライセンス: cc-by.