日本主導:この研究は、筆頭著者・責任著者、または著者の主要所属が日本の研究機関である研究です。

掲載誌:Postharvest Biology and Technology

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

収穫後の野菜も呼吸を続けており、酸素を使って二酸化炭素(CO₂)を出しながら、少しずつ状態が変わっていきます。研究チームは、コリアンダー(パクチー)の葉の鮮度を数値で評価するための枠組みを開発しました。

この研究では、保存中の呼吸で放出されたCO₂の積算量(累積呼吸CO₂)を、保存中に進む生理的な変化の目安として用いています。葉に含まれる代謝物(生命活動の中で作られたり使われたりする物質)の組成から、この累積CO₂量を推定することが狙いです。ここで紹介する内容は、論文の抄録に記載された範囲に基づいています。

調べた方法

著者らは、ガスクロマトグラフィー・タンデム質量分析(GC-MS/MS)を使いました。これは、混ざり合った物質を分離し、その種類と量を調べる分析法です。この方法で、生命の基本的な営みに関わる一次代謝物の組成を測定しています。

このデータをもとに、部分最小二乗回帰(PLSR)と呼ばれる統計手法で、累積呼吸CO₂量を予測するモデルを作りました。PLSRは、互いに関連し合う多数の測定値をまとめて、目的の値を予測する手法です。予測の確かさは、データを1つずつ外して残りでモデルを作り、外したデータを予測するという検証法(一個抜き交差検証)で確かめられました。

主な結果

論文によると、モデルの予測性能は中程度でした。交差検証での予測能力を示す指標Q²は0.717、予測誤差の大きさを示すRMSECVは1キログラム当たり38.86ミリモルと報告されています。

予測に使われた64の変数のうち、モデルへの寄与が大きい代謝物として、チラミン、セリン、リシン、イソロイシン、トレオニンが挙げられました。

モデル作成とは別に、10℃で保存する応用実験も行われました。モデルから求めた累積CO₂量は保存期間が長くなるほど増えた一方で、葉の黄色みには有意な変化が見られませんでした。著者らは、この方法が従来の見た目による評価では捉えにくい、保存に伴う生理的な変化を捉えられる可能性を示すものだとしています。

さらに、2種類の包装によって袋内の気体組成を変えた条件でも、この枠組みが試されました。厚さ0.08ミリの低密度ポリエチレン(LDPE)で包装した強い低酸素状態では、モデルから求めた値と、気体の収支から独立に見積もった値とが大きく食い違いました。著者らは、モデルの学習データに含まれていない生理条件では、数値をそのまま当てはめられる範囲が限られる可能性があると述べています。

研究が示すこと

この研究は、葉の代謝物の組成をもとに、コリアンダーの保存に伴う生理的な変化を評価する枠組みを示しました。10℃保存の実験では、葉の黄色みに有意な変化がない段階でも、モデルによる推定値は保存期間とともに増えており、見た目の評価とは異なる側面を捉えられる可能性が示されています。一方で、強い低酸素のような学習時と異なる条件では推定が合わない場合もあり、著者らは収穫後のより幅広い条件でさらに検証する必要があるとしています。

原著論文の著者・所属:Nahar Ashrafun(The United Graduate School of Agricultural Science, Gifu University, Gifu, 501-1193, Japan)、Kasumi Nakagawa(The United Graduate School of Agricultural Science, Gifu University, Gifu, 501-1193, Japan)、Manasikan Thammawong(The United Graduate School of Agricultural Science, Gifu University, Gifu, 501-1193, Japan)、Pongphen Jitareerat(Division of Postharvest Technology, School of Bioresources and Technology, King Mongkut’s University of Technology Thonburi, Bangkok, 10140, Thailand)、Mizuki Tsuta(Institute of Food Research, National Agriculture and Food Research Organization, Tsukuba, Ibaraki, 305-8642, Japan; The United Graduate School of Agricultural Science, Gifu University, Gifu, 501-1193, Japan)、Kohei Nakano(The United Graduate School of Agricultural Science, Gifu University, Gifu, 501-1193, Japan)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Nahar Ashrafun, Kasumi Nakagawa, Manasikan Thammawong, et al. Metabolomics-based framework for the quantitative evaluation of coriander leaf freshness using cumulative respiratory CO₂ as a physiological reference. Postharvest Biology and Technology 2026-09-25. DOI: 10.1016/j.postharvbio.2026.114744. 原著ライセンス:CC BY.