著者の所属・活動拠点の国は、チャド、ブルキナファソです。

掲載誌:American journal of food science and technology

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

発展途上国では屋台などで売られる「ストリートフード」が広く食べられており、学校の周辺でも多く見られます。チャドの首都ンジャメナでは給食施設のない学校が多く、校内や学校の近くで売られる食べ物が、子どもにとって学校で手に入る唯一の食事になることもあります。一方、著者らによれば、こうした食品の販売は十分に規制されておらず、国内での研究も多くありません。

研究チームは、ンジャメナの学校周辺で売られている伝統食品「カンダ」「サルキマ」「ダワンケ」の3種類を取り上げ、どのように作られているか、そして微生物の面から見た衛生状態はどうかを調べました。食品中の微生物を調べると、食べる人への健康上のリスクを評価できるだけでなく、製造中に適切な衛生管理が行われていたかどうかの手がかりも得られます。

調べた食品と方法

カンダは、魚とゴマを練り合わせて団子状にし、30〜60分ほど蒸した料理です。サルキマは、ひき肉をタマネギやピーマンなどと合わせて油で焼き、パンに挟んで食べるものです。ダワンケは、小麦粉や豆の粉で作った生地を団子にして、沸騰した湯で20分ほどゆでた料理です。

調査は2023年6月から9月にかけて行われました。無作為に選んだ学校で、3種類の食品それぞれの作り手10人ずつ、計30人に聞き取り調査を行い、作業の様子も実際に観察しました。これにより、調理の手順に加え、作業する人や道具の衛生状態を記録しました。

あわせて、10校から各食品10検体、計30検体を採取し、実験室で分析しました。調べた微生物は、食品全体の汚染の目安となる一般細菌(総菌数)、糞便による汚染の指標となる大腸菌群と糞便系大腸菌群、人の皮膚や髪などに多い黄色ブドウ球菌、食中毒の原因となるサルモネラなどです。結果は基準値と照らし合わせ、「良好」「許容範囲」「不適合」の3段階で判定しました。

主な結果

製造工程の調査では、3種類の食品とも、食品製造で欠かせない基本的な工程はおおむね守られていると報告されています。原料は使う前に下処理され、どの食品も最後に100℃を超える温度で数分以上加熱されていました。

微生物検査の結果をまとめると、一般細菌では60.74%の検体が「良好」、39.26%が「許容範囲」で、「不適合」はありませんでした。糞便系大腸菌群では78.52%が「良好」、6.67%が「許容範囲」、14.81%が「不適合」でした。サルモネラはどの検体からも検出されませんでした。一方、黄色ブドウ球菌については、すべての検体が「不適合」と判定されました。

著者らは、加熱温度が高いため微生物の量は全体として抑えられていると考えています。そのうえで、一部の検体で見つかった微生物は、加熱した後の取り扱いに由来する可能性が高いと考察しています。加熱後の作業は手作業が中心で、観察した製造場所の多くには手洗いや消毒の設備がありませんでした。糞便系大腸菌群が基準を超えた検体があったことについても、こうした状況が背景にある可能性が指摘されています。

研究が示すこと

この研究からは、3種類の伝統食品が全体としては比較的良好な微生物学的品質を保っていることが分かります。その一方で、黄色ブドウ球菌や一部の検体の糞便系大腸菌群の結果は、作り手や売り手の衛生管理が十分でないことを示しています。著者らは、主に子どもが食べる食品であることから、加熱後の取り扱いを中心に衛生管理を改善する必要があると結論づけています。

ただし、著者ら自身も述べているように、調べた検体は少なく、対象はンジャメナ市内に限られています。また、検査した微生物の種類も限られています。そのため、この結果はあくまでも限られた範囲での実態を示すものとして読む必要があります。

原著論文の著者・所属:Abdoullahi Hissein Ousman(Food Science and Nutrition Research Laboratory (LaRSAN) , Department of Human Health Sciences , University of N'Djamena , N'Djamena , Chad; Research Laboratory in Applied Biology, Biochemistry, and Microbiology (LaBioMA) , Department of Science and Technology , University of Doba , Doba , Chad)、Bougma Sanogo(Laboratory of Applied Biochemistry and Immunology (LaBIA) , Department of Biochemistry and Microbiology , Joseph Ki-Zerbo University , Ouagadougou , Burkina Faso)、Dieni Ibonye(Laboratory of Applied Biochemistry and Immunology (LaBIA) , Department of Biochemistry and Microbiology , Joseph Ki-Zerbo University , Ouagadougou , Burkina Faso)、Abakar Mahamat Choukou(Food Science and Nutrition Research Laboratory (LaRSAN) , Department of Human Health Sciences , University of N'Djamena , N'Djamena , Chad; Research Laboratory in Applied Biology, Biochemistry, and Microbiology (LaBioMA) , Department of Science and Technology , University of Doba , Doba , Chad)、Tapsoba François(Laboratory of Applied Biochemistry and Immunology (LaBIA) , Department of Biochemistry and Microbiology , Joseph Ki-Zerbo University , Ouagadougou , Burkina Faso)、Savadogo Aly(Laboratory of Applied Biochemistry and Immunology (LaBIA) , Department of Biochemistry and Microbiology , Joseph Ki-Zerbo University , Ouagadougou , Burkina Faso)、Abdelsalam Tidjani(Food Science and Nutrition Research Laboratory (LaRSAN) , Department of Human Health Sciences , University of N'Djamena , N'Djamena , Chad)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Abdoullahi Hissein Ousman, Bougma Sanogo, Dieni Ibonye, et al. Impact of the Production Process and Microbiological Quality of Kanda, Dawanke, and Sarkima Sold Around Certain Schools in the City of N’Djamena. American journal of food science and technology 2026-10-25. DOI: 10.12691/ajfst-14-5-3. 原著ライセンス:CC BY.