掲載誌:IJORER International Journal of Recent Educational Research
ライセンス: CC BY-SA 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
地域で受け継がれてきた伝統食品は、料理であると同時に文化遺産や地域のアイデンティティでもあり、地域経済を支える飲食ビジネスの基盤にもなっています。一方で、現代的な食品産業との競争の中で、伝統食品の事業者は消費者に選ばれ続けるための工夫を求められています。
著者らは、消費者が伝統食品を探し、選び、食べると決めるまでに積み重ねる「消費者教育の経験」に着目しました。ここでいう消費者教育とは、学校での授業に限らず、食品の由来や文化的な意味、作り方を知ること、過去に食べた経験、人との交流などを通じて、消費者が知識や理解を深めていく過程を指します。
著者らによると、これまでの研究は購入意図、本物らしさ(真正性)、サービスの質、顧客満足、味の評価などを個別に扱うものが多く、消費者が伝統食品を選ぶ前にどのような学びを得ているのかは体系的に整理されていませんでした。そこで本研究は、既存の研究を集めて統合し、この分野の全体像を明らかにすることを目的としています。
どのように調べたか
研究チームは、既存の論文を一定の手順で収集・選別して内容を統合する「系統的文献レビュー」という方法を用いました。問いは二つで、一つは「消費者は伝統食品を食べる前にどのような学びの経験をしているか」、もう一つは「伝統食品に対する消費者の認識や意思決定を形づくる特徴は何か」です。
文献の検索には学術データベースのScopus、EBSCO、Emeraldを使い、「消費者教育」「消費者経験」「伝統食品」「地域の食品」「食品選択」などの語を組み合わせました。対象は2019年から2024年に発表された英語の査読付き学術論文に限り、学会発表や書籍、学位論文などは除外しています。
選ばれた論文からは、重要な概念や消費者の行動、学びの要素を抜き出して似たものをまとめ、繰り返し見直しながら主要なテーマへと整理しました。あわせて、論文中のキーワードがどのくらいの頻度で、どの語と一緒に現れるかを図示する分析も行い、研究の重心や時間とともに変化する関心を調べています。
主な結果
著者らが分析対象とした論文は57本で、発表数は2020年の13本が最も多く、2024年は6本でした。研究手法では、アンケートなどで数値を集める量的研究が32本(65%)と大半を占めていたと報告されています。
キーワードの分析からは、伝統食品、食品の好み、消費者経験といった話題に研究が集中している一方で、消費者教育や学びの経験そのものを扱う研究は比較的少なく、ほかの主要テーマとのつながりも弱いことが示されました。著者らは、研究の関心が製品中心の見方から、消費者の学びを重視する見方へと少しずつ移りつつあるとも述べています。
二つの問いに対しては、伝統食品の選択は一つの要因で決まるのではなく、二種類の要因が組み合わさって形づくられていると報告されています。一つは味、香り、食感、品質、安全性、本物らしさといった食品そのものの特徴で、消費者が実際に食べる前後に直接確かめられるものです。もう一つは、文化的な価値観や規範、懐かしさ(ノスタルジア)、なじみの深さ、産地への関心、家族の行事や特別な機会の思い出、地元の人や旅行者との交流など、社会や文化に根ざした間接的な要因です。
著者らは、食品の特徴は「なぜその食品を好むのか」を説明する一方、社会・文化的な要因は「なぜ消費者が伝統食品に象徴的・感情的な意味を見いだすのか」を説明すると整理しています。また、年齢や性別、居住地域といった属性も好みに関わる要因として挙げられています。
この研究が伝えること
この研究は、伝統食品を選ぶという行為が、単に商品を買う判断ではなく、味や品質の評価に文化的な理解や過去の経験、感情的な結びつきが重なっていく「学びの過程」として捉えられることを示しています。そのため著者らは、伝統食品の事業者は味の良さだけでなく、その食品が持つ文化的な背景や本物らしさも伝えることが、消費者との結びつきを強めるうえで大切だと論じています。
同時に著者らは、分析した文献の多くが量的研究であることを踏まえて結論を解釈する必要があると述べています。消費者教育という視点はこの分野でまだ十分に掘り下げられていない領域であり、本レビューはその現状と論点を整理したものといえます。
原著論文の著者・所属:Ajat Sudrajat、Vanessa Gaffar、Dita Amanah、Ayu Krishna Yuliawati、Hilda Monoarfa、Ade Sobandi、Suddin Lada
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Ajat Sudrajat, Vanessa Gaffar, Dita Amanah, Ayu Krishna Yuliawati, Hilda Monoarfa, Ade Sobandi, Suddin Lada Consumer Education and Traditional Foods: A Five-Year Review of Learning Experiences. IJORER International Journal of Recent Educational Research 2026-07-30. DOI: 10.46245/ijorer.v7i4.1485. 原著ライセンス:CC BY-SA 4.0.
本紹介記事の文章(題名・見出しを含む)は、CC BY-SA 4.0で提供します。原著論文をもとにNutriMap Japanが日本語で要約・説明を加えています。対象は本紹介記事の文章に限り、ヒーロー画像・サイトのロゴ・画面デザイン・他の記事・データベース全体は含みません。