エビの乾物は保存性を高める加工食品として世界各地で親しまれていますが、乾燥のさせ方によって食感や風味がどう変わるのかは、意外と体系的に比較されてきませんでした。今回紹介する研究は、中国・寧夏大学食品科学工学院などの研究者らが、バナメイエビ(Pacific white shrimp)を対象に、複数の乾燥方法が肉質と風味成分にどのような違いをもたらすかを調べたものです。
どのように比較したのか
研究チームは、生のエビ(対照群)に加えて、真空凍結乾燥(VFD)、加熱を併用した真空凍結乾燥(HAFD)、熱風乾燥(HAD)、エアフライヤーを利用した乾燥(AFD)という4種類の乾燥方法で処理したエビを比較しました。評価項目は、たんぱく質・脂肪・灰分などの基本成分、色、テクスチャー(硬さや付着性など)、遊離アミノ酸、5′-ヌクレオチド、有機酸、電子鼻・電子舌によるセンサー分析、そしてヘッドスペース固相マイクロ抽出―ガスクロマトグラフィー質量分析(HS‐SPME‐GC‐MS)による揮発性成分の分析と、多角的な手法が用いられています。
研究でわかったこと
乾燥によって水分が失われる分、たんぱく質・脂肪・灰分は相対的に濃縮され、色やテクスチャーにも変化が生じたと報告されています。VFDで処理したエビは最も色が明るく、生の状態との色の差も最も大きかった一方、HADとAFDで処理したエビは硬さや付着性がより強く出たとされています。
うま味に関わる非揮発性成分では、HAFDが最も良好なプロファイルを示し、遊離アミノ酸の総量、うま味系アミノ酸、グアノシン一リン酸(GMP)、そして等価うま味濃度(グルタミン酸ナトリウム換算で100gあたり51.35g相当)のいずれも最高値だったと報告されています。一方、5′-ヌクレオチドの総量はVFDで最も高く保持されており、有機酸についてはHADでコハク酸量とそれに由来する呈味の強さが最も高かったとされています。
電子鼻・電子舌による解析では、主成分分析(PCA)上で対照群・VFDのグループと、HAD・AFDのグループが明確に分かれる傾向が示され、加熱を伴う乾燥工程が香りと味のパターンを大きく変化させることが示唆されています。揮発性成分については51種類が同定され、HADはピラジン類、エステル類、アルコール類、ケトン類の総量が最も多く、AFDはアルデヒド類の量が最も多かったと報告されています。全体として、HAFDは品質の保持とうま味の強化のバランスに優れ、HADとAFDは焙焼香(ロースト香)の形成をより強く促す傾向があるとまとめられています。
この研究の位置づけ
この研究は、バナメイエビという特定の対象について、限られた乾燥方法の組み合わせで比較した一つの研究であり、ここで得られた傾向がすべてのエビ加工や他の乾燥条件にそのまま当てはまるとは限りません。研究チームは、目指す風味プロファイル——穏やかなうま味を重視するか、強い焙焼香を重視するか——に応じて乾燥方法を選ぶ際の参考情報になるとしています。
まとめ
この研究は、真空凍結乾燥・加熱併用真空凍結乾燥・熱風乾燥・エアフライヤー乾燥という異なる乾燥方法が、バナメイエビの食感やうま味成分、香り成分にそれぞれ異なる変化をもたらすことを示したものです。特に加熱を併用した真空凍結乾燥(HAFD)は品質保持とうま味増強のバランスに優れていた一方、熱風乾燥やエアフライヤー乾燥はより強い焙焼香を生み出す傾向が見られたと報告されています。乾物エビの製造や選び方を考えるうえで、一つの手がかりとなる研究といえるでしょう。
※本記事は原著論文の翻訳ではなく、研究内容を独自に解説したものです。参考文献:Yiming Li, Nan Wang, Li Zhou, et al. Effects of Different Drying Methods on the Meat Quality and Characteristic Flavor Compounds of Pacific White Shrimp. フード・フロンティアーズ (2026). DOI: 10.1002/fft2.70348. 原著ライセンス: cc-by.