ザーサイやカラシナ漬けなど、アブラナ科の野菜を発酵させた漬物には独特の風味や辛みがあります。この辛みや香りのもとになっている成分のひとつが「グルコシノレート」と呼ばれる化合物で、発酵や加工の過程でイソチオシアネート類などの揮発性物質に変化することが知られています。同じカラシナ(Brassica juncea)でも品種によって、この成分の量や発酵の進み方に違いがあるのでしょうか。今回紹介する研究は、この疑問に取り組んだものです。

研究チームは、カラシナの2つの品種(川芥1号・川芥2号)を用いて漬物を発酵させ、発酵過程での微生物数、酸度などの理化学的指標、有機酸、グルコシノレート、そして揮発性代謝物を比較しました。

研究でわかったこと

まず、発酵に関わる微生物や酸の生成に品種間で差が見られました。発酵終了時点で、川芥1号の発酵液に含まれる酵母数は川芥2号よりも約1 lg CFU/mL多かったと報告されています。一方、総酸含量は川芥2号のほうが川芥1号より0.156 g/100 g高く、乳酸の増加量も2.3 mg/mL多かったとされています。

次にグルコシノレートについては、生の状態での総グルコシノレート含量は、川芥2号が川芥1号よりも50.09%高かったことが示されました。さらに、アリルイソチオシアネート、3-ブテニルイソチオシアネート、フェネチルイソチオシアネート、3-ブテンニトリル、アセトニトリルといった物質が、発酵の各段階における2品種の風味の違いを特徴づける主要な差異成分として挙げられています。

相関分析からは、総グルコシノレート量は発酵中の細菌数や乳酸菌数と負の相関を示したことが報告されています。また、イソチオシアネート類の揮発性代謝物も細菌数・乳酸菌数と負の相関を示す一方、総グルコシノレート含量とは正の相関を示したとされています。これらの結果から、研究チームは、カラシナ品種ごとのグルコシノレート含量の違いが発酵微生物の増殖や代謝に影響し、それが最終製品の風味の違いにつながっている可能性があると考察しています。

この研究の位置づけ・読むうえでの注意

この研究は、2種類のカラシナ品種を対象に、発酵過程での成分変化を比較・分析したものです。得られた関連性はあくまで観察・相関に基づくものであり、特定の成分が風味や品質を直接決定づけると断定するものではない点に注意が必要です。また、対象は2品種に限られており、他の品種や異なる発酵条件でも同様の傾向が見られるかどうかは、この要旨だけでは分かりません。一つの研究であり、結論が確定したわけではないという前提で読むとよいでしょう。

まとめ

この研究では、カラシナの品種によって発酵中の微生物の働きや酸の生成、そしてグルコシノレートとその揮発性代謝物の量に違いがあることが示されました。研究チームは、こうした品種ごとの違いが発酵漬物の風味の違いを生み出す一因になっている可能性を示唆しており、今後、風味の良い発酵用カラシナ品種を選ぶための基礎的な知見になるとしています。

※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:異なるカラシナ品種の発酵過程におけるグルコシノレートとその揮発性代謝物の差異分析(食品工業科技・2026年08月掲載予定)