著者の所属・活動拠点の国は、インドネシア、スペインです。
掲載誌:International Journal of Food Properties
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
ハイビスカスティーの原料として知られる「ローゼル(Hibiscus sabdariffa L.)」の萼(がく、花を支える部分)は、鮮やかな赤色や紫色をしており、アントシアニンをはじめとするさまざまなフィトケミカル(植物由来の機能性成分)を含むことで知られています。こうした食材を粉末に加工して長期保存したり食品原料として使ったりする際には、乾燥という工程が欠かせませんが、乾燥方法や温度によって色や成分の残り方がどう変わるのかは、加工食品の品質を考えるうえで興味深いテーマです。今回紹介する研究は、赤色と紫色のローゼル萼を対象に、乾燥方法や温度の違いが色調や抗酸化成分の安定性にどう影響するかを比較したものです。
研究でわかったこと
この研究では、赤色・紫色ローゼルの萼を「フォームマット乾燥(泡状にしてから乾燥させる方法)」と「従来乾燥(キャビネット乾燥)」という2種類の方法で処理し、60℃、100℃、121℃、140℃、180℃という5段階の温度(それぞれ低温殺菌、茹でる・蒸す、滅菌、揚げる、焼くといった食品加工の温度帯を想定したもの)で30分間加熱した場合の変化が調べられました。
生の赤色・紫色ローゼル萼およびフォームマット乾燥した粉末のメタノール抽出物には、アントシアニン、プロアントシアニジン、フラボノイド、フェノール類、アルカロイド、精油、ステロールおよびステロイド、糖類、有機酸などのフィトケミカルが含まれており、中でもフラボノイドが最も多く検出されたと報告されています。また、紫色ローゼルの萼は赤色のものよりも含まれる成分の種類が多く、多様性も高い傾向が示されました。アントシアニンの種類としては、赤色ローゼルではシアニジン、マルビジン、ペオニジンが、紫色ローゼルではシアニジン、デルフィニジン、ペチュニジン、ペラルゴニジンが典型的に見られたとされています。
乾燥方法の比較では、フォームマット乾燥した粉末の方が従来乾燥のものよりも、色素やフィトケミカルをより良く保持する傾向が示されました。具体的には、総フェノール含量(TPC)の保持率は、60~180℃の範囲で赤色ローゼルのフォームマット乾燥粉末が87.31~34.37%、紫色ローゼルが96.93~85.69%であったと報告されています。総アントシアニン含量(TAC)の保持率については、赤色ローゼルが96.10~7.57%、紫色ローゼルが94.42%から検出限界以下まで低下したとされています。
抗酸化活性についても評価されており、DPPHラジカル消去活性は赤色ローゼルで19.48%から9.61%へ、紫色ローゼルで45.10~37.15%へと温度上昇に伴って低下したことが示されました。同様に、ABTS消去活性の低下幅は赤色ローゼルのフォームマット乾燥粉末で51.17~35.40%、紫色ローゼルで68.57~59.80%であったとされています。特に180℃という高温条件下でも、フォームマット乾燥した粉末の方が抗酸化活性をより良く保持することが示唆されており、この研究では180℃未満の加熱を伴う製品にはフォームマット乾燥粉末の使用が提案されています。
この研究の位置づけ・読むうえでの注意
この研究は、赤色・紫色ローゼル萼を対象に、特定の乾燥方法と温度条件のもとで色調や抗酸化成分の変化を比較したものであり、一つの研究として得られた結果です。ここで示された保持率や活性の変化は、あくまでこの研究で用いられた条件下でのものであり、他の品種や加工条件、保存条件などにそのまま当てはまるとは限りません。また、要旨では健康への効果そのものについては言及されておらず、あくまで色素や抗酸化成分の「安定性」に関する知見として理解する必要があります。
まとめ
今回紹介した研究では、赤色・紫色ローゼル萼をフォームマット乾燥と従来乾燥という2つの方法で、60~180℃のさまざまな温度条件下で処理した際の色調や抗酸化成分の変化が比較されました。その結果、フォームマット乾燥した粉末の方が従来乾燥に比べて総フェノール含量や総アントシアニン含量、DPPH・ABTSによる抗酸化活性の保持率が高く、180℃という高温条件でも抗酸化活性をより良く保つ傾向が示されたと報告されています。乾燥方法や温度が食品原料の品質保持にどう関わるかを考えるうえで、参考になる知見といえそうです。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。出典(原著論文):異なる温度で乾燥させた赤色・紫色ローゼル(Hibiscus sabdariffa L.)萼粉末のフォームマット乾燥と従来乾燥における色調・抗酸化安定性(インターナショナル・ジャーナル・オブ・フード・プロパティーズ・2026年07月)
著者:Teti Estiasih(Department of Food Science and Biotechnology, The Faculty of Agroindustrial Technology and Biosystems, Universitas Brawijaya, Malang, Indonesia)、Jatmiko Eko Witoyo(Department of Food Science and Biotechnology, The Faculty of Agroindustrial Technology and Biosystems, Universitas Brawijaya, Malang, Indonesia)、Ghina Sekar Binangkit(Department of Food Science and Biotechnology, The Faculty of Agroindustrial Technology and Biosystems, Universitas Brawijaya, Malang, Indonesia)、Anisa Nofia Ramadani(Department of Food Science and Biotechnology, The Faculty of Agroindustrial Technology and Biosystems, Universitas Brawijaya, Malang, Indonesia)、Widiastuti Setyaningsih(Department of Food and Agricultural Product Technology, Faculty of Agricultural Technology, Universitas Gadjah Mada, Yogyakarta, Indonesia)、Miguel Palma(Department of Analytical Chemistry, Faculty of Sciences, Instituto de Investigación Vitivinícola y Agroalimentaria (IVAGRO), University of Cadiz, Puerto Real, Spain)、Kgs Ahmadi(Department of Agroindustrial Technology, Faculty of Agriculture, Tribhuwana Tunggadewi University, Malang, Indonesia)、Hamidie Ronald Daniel Ray(Faculty of Medicine, Universitas Pendidikan Indonesia, Bandung, Indonesia)、Angga Hermawan(Research Center for Nanotechnology System, National Research and Innovation Agency of Indonesia, South Tangerang, Indonesia)