著者の所属・活動拠点の国は、インドです。
掲載誌:Cureus
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究のねらい
出産直後は、傷の回復、子宮が元の大きさに戻る過程、母乳が出始める準備などのため、エネルギーとたんぱく質が多く必要になる時期とされています。インドでは母親の食事が不十分になりやすく、出産後の食事に関する文化的な制限も報告されています。それでも、出産後の最初の数日間に実際にどれだけ食べているかを数値で示したデータは限られていました。
研究チームは、出産直後の数日間に母親が摂取したエネルギーとたんぱく質の量を毎日測りました。そのうえで、インドの公的機関であるインド医学研究評議会・国立栄養研究所(ICMR-NIN)が2020年に定めた授乳期女性の推奨量に、どれだけ届いていないかを調べています。
どのように調べたか
研究はインド・マハラシュトラ州の高度医療を担う教育病院で、2025年2月から7月にかけて行われました。対象は、出産のために入院した18〜40歳の女性100人で、いずれも単胎妊娠でした。重い貧血や妊娠高血圧腎症などの合併症がある人は対象から外されています。
摂取量の把握には「24時間思い出し法」が用いられました。管理栄養士と訓練を受けた研修医が毎日聞き取りを行い、前日24時間に食べたものを、家庭で使う器やスプーンを目安に量として記録しました。料理は材料の量に換算し、インドの食品成分表をもとにエネルギーとたんぱく質を計算しています。
推奨量の基準には、活動量の少ない授乳期女性向けの値(1日2,260キロカロリー、たんぱく質62.6グラム)を使い、推奨量と実際の摂取量の差を「不足分」としました。出産後の日ごとに定められた推奨量は存在しないため、どの日にも同じ基準が当てはめられています。
経膣分娩の女性は通常2〜3日目までに退院するため、1〜3日目は100人全員のデータで統計的に分析されました。4〜5日目は、帝王切開で入院を続けた52人について数値を示すにとどめています。
主な結果
100人の平均エネルギー摂取量は、出産1日目の約791キロカロリーから3日目には約875キロカロリーに増えました。たんぱく質も1日約18.1グラムから約22.9グラムに増えています。エネルギーについては、3日目の値が1日目・2日目より統計的に意味のある差で多かった一方、1日目と2日目の間には意味のある差はみられませんでした。たんぱく質では、1日目と比べて2日目、3日目のいずれも意味のある増加がありました。
帝王切開で入院を続けた52人の5日目の平均摂取量は、エネルギー約886キロカロリー、たんぱく質約23.9グラムでした。
摂取量は日を追って増えたものの、全期間を通じて推奨量を大きく下回りました。推奨量との差は、1日目(100人)でエネルギー約1,469キロカロリー、たんぱく質約44.5グラム、5日目(帝王切開の52人)でもエネルギー約1,374キロカロリー、たんぱく質約38.7グラムでした。参加者は全員が鉄と葉酸のサプリメントを受け取っていましたが、著者らは、それでエネルギーやたんぱく質の不足が補われるわけではないと述べています。
結果の受け止め方
著者らは、この「不足分」は集団向けの推奨量と比べた摂取量の差であり、体の栄養欠乏を直接測ったものではないと強調しています。用いた推奨量は授乳が安定した時期を想定した値です。出産後2〜3日は母乳の量もまだ少ないため、この差がそのまま臨床的な栄養不足を意味するわけではありません。
調査は1施設のみで行われ、参加者の多くは中流上位の経済層でした。また、聞き取りによる記録は摂取量を少なく見積もりやすいとされています。帝王切開による制限、伝統的な産後の食習慣、病院食の量といった低摂取の理由は、先行研究から考えられる仮説として挙げられているもので、この研究で直接確かめたものではありません。母親の回復や授乳、赤ちゃんへの影響も調べられていません。
こうした前提を踏まえても、この研究は出産直後の入院中に母親が食べている量が、授乳期の推奨量と比べて大きく少ない状態が続いていることを、日ごとの数値で示しました。これまで記録が乏しかった産後最初の数日間の食事の実態をとらえた報告といえます。
原著論文の著者・所属:Sunil Gavhane(. Pediatrics , Mahatma Gandhi Mission Institute of Health Sciences , Aurangabad , IND)、Sachin Subhash Dhule、Jagruti S Mahale、Apeksha Rajeardad、Surya Pratap Singh(. Pediatrics , Mahatma Gandhi Mission Institute of Health Sciences , Aurangabad , IND)、Mohd Saeed Siddiqui
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Sunil Gavhane, Sachin Subhash Dhule, Jagruti S Mahale, et al. Energy and Protein Intake Deficits in the Immediate Postpartum Period: A Prospective Observational Study. Cureus 2026-10-21. DOI: 10.7759/cureus.118312. 原著ライセンス:CC BY.