日本主導:この研究は、筆頭著者・責任著者、または著者の主要所属が日本の研究機関である研究です。

掲載誌:Oral

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

口の働き(口腔機能)が衰えると、食べられる食品の種類が狭まることが指摘されています。一方で、噛む力などの口腔機能が、食べ物ごとの噛み方の違いにどう関わっているのかは、はっきり分かっていませんでした。

大阪歯科大学の研究チームは、性質の異なる食品を食べるときに噛み方がどう変わるか、そしてその変わり方が「最大咬合力」(歯を最大の力で噛みしめたときの力)や「最大舌圧」(舌を上あごへ最大の力で押し付けたときの圧力)と関係しているかを調べました。論文はこの研究を、仮説を本格的に検証する前段階の予備的な観察研究と位置づけています。

何を調べたか

対象は、歯並びや噛み合わせに問題のない健康な若い日本人15人(男性7人、女性8人、平均年齢26.2歳)です。食品には、崩れやすいビスケット、魚のすり身を固めた弾力のあるかまぼこ、水分の多いきゅうりの3種類を選び、それぞれ約10グラムを普段どおりのペースで食べてもらいました。

食べている間の噛む回数、噛んでいた時間、1分あたりの噛むテンポ(咀嚼リズム)は、耳に掛けるタイプの咀嚼回数計で記録しました。同時に、頬にある噛むための筋肉(咬筋)の活動を皮膚の上に貼った電極で測り、その平均的な強さを筋活動の指標としました。さらに専用の機器で最大咬合力と最大舌圧も測定しました。

そのうえで、食品ごとの噛み方そのものと口腔機能との関係に加え、ビスケットを他の2食品と比べたときに噛む回数・時間や筋活動がどれだけ変わるか(比率)と口腔機能との関係を分析しました。

主な結果

同じ重さでも、ビスケットは噛む回数(中央値100回)と噛んでいた時間(同91秒)が、かまぼこ(36回、32秒)やきゅうり(32回、31秒)より多くなりました。一方、噛むテンポには3食品の間で差が見られませんでした。

最大咬合力が強い人ほど、ビスケットときゅうりを食べるときの噛む回数が少なく、きゅうりでは噛むテンポもゆっくりである傾向(負の相関)が見られました。かまぼこではこうした関係は見られず、最大舌圧は食品ごとの噛み方とは関係していませんでした。

食品間の変化に注目すると、噛む回数や時間の比率は口腔機能と関係していませんでした。これに対し、ビスケットを食べるときの咬筋の活動を、かまぼこやきゅうりを食べるときと比べた比率は、最大舌圧が大きい人ほど小さいという関係が見られました。つまり、舌の力が強い人ほど、食品による筋活動の変化の幅が小さい傾向があったということです。

研究が示すこと

著者らは、健康な若年者でも、特定の食品の噛み方と噛む力の間、また食品による筋活動の変わり方と舌の力の間に関連がある可能性が示されたとしています。ただし、ある一時点の観察にもとづく研究のため、口腔機能が噛み方を決めているのか、日頃の噛み方が口腔機能に影響しているのかは判断できません。

また、参加者が少なく食品も3種類に限られていることから、著者ら自身が結果は慎重に解釈する必要があると述べています。この研究は、歯科で使われる検査機器と市販の咀嚼回数計を組み合わせることで、口の機能と食べ物に合わせた噛み方の関係を探れることを示した、最初の手がかりといえます。

著者:伸通 高橋(Department of Geriatric Dentistry, Osaka Dental University, Osaka 540-0008, Japan)、Takahiro Ono(Department of Geriatric Dentistry, Osaka Dental University, Osaka 540-0008, Japan)、Akiyo Kawamoto(Department of Geriatric Dentistry, Osaka Dental University, Osaka 540-0008, Japan)、Akiko Shimada(Department of Oral Health Sciences, Faculty of Health Sciences, Osaka Dental University, Hirakata 573-1144, Japan)、Kazuya Takahashi(Department of Geriatric Dentistry, Osaka Dental University, Osaka 540-0008, Japan)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):伸通 高橋, Takahiro Ono, Akiyo Kawamoto, et al. Is the Modulation of Masticatory Behaviors in Response to Different Foods Associated with Oral Function?: A Preliminary Observational Study. Oral 2026-10-13. DOI: 10.3390/oral6050133. 原著ライセンス:CC BY.