この研究は、ブラジルの研究機関の研究論文です。

掲載誌:Tropical Animal Health and Production

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

動物福祉や持続可能性への関心の高まりを背景に、屋外に出られる環境で肉用鶏を育てる「放し飼い(フリーレンジ)」方式が注目されています。こうした方式で使われるのは、短期間で急速に大きくなる一般的な品種ではなく、成長のゆるやかな「スローグローイング」と呼ばれる系統です。研究チームによれば、これらの系統は増体や歩留まりの面では劣るものの、肉の風味や食感、色といった品質面で評価され、飼育環境への適応力の高さも指摘されてきました。

一方で著者らは、市販されているスローグローイング系統どうしを放し飼い条件で比べた情報、とくに雌雄の違いや出荷日齢の違いを含めた比較情報が限られていると指摘しています。品種(遺伝的背景)と性別は、栄養の利用のされ方や体の組織のつき方に影響しうるため、両者を合わせて評価する必要があるという考えから、本研究は品種と性別が発育成績、と体の歩留まり、胸肉の品質にどう関わるかを、複数の出荷日齢について調べることを目的としました。

何を、どのように調べたか

研究はブラジル・ミナスジェライス州のジェキチニョニャ・ムクリ渓谷連邦大学(UFVJM)の養鶏部門で実施され、動物実験に関する学内委員会の承認を受けています。用いられたのは市販の放し飼い向けスローグローイング4系統(Pesadão Hubbard、Pescoço Pelado Hubbard、Pesadão Sasso、Pescoço Pelado Sasso)の初生ひな864羽で、4系統×雌雄の8区分に分け、各区分4反復、1区あたり27羽という構成がとられました。

飼育は屋内の区画(2.0×2.0 m)で始まり、生後21日までは赤外線ランプによる保温が行われました。28日齢までは屋内飼育で、29日齢からは1区あたり30平方メートルの屋外運動場(草地を張り、金網で囲ったもの)へ日中に出られるようになり、夜間は屋内に戻す「半集約的な放し飼い」方式がとられました。飼料はトウモロコシと大豆粕を主体とし、育成の段階に応じて3期に分けて与えられ、飼料と水は自由に摂取できる状態でした。

評価は70日齢、77日齢、84日齢の3時点で行われました。発育成績としては体重、飼料摂取量、飼料要求率(体重を1増やすのに必要な飼料量で、値が小さいほど効率がよい)が測定されています。と体については、絶食後の生体重、と体歩留まり、胸肉歩留まり、もも・すね肉の歩留まりが調べられました。胸肉の品質としては、明度(L*)・赤み(a*)・黄色み(b*)といった色の指標、彩度と色相角、pH、加熱による重量減少(加熱損失)、保水力、そして肉のかたさを示すせん断力が測定されました。統計解析では、品種の効果、性別の効果、そして両者の組み合わせによる効果(交互作用)が検討されています。

報告された主な結果

発育成績については、どの日齢でも品種と性別の交互作用は認められませんでした。そのうえで、70・77・84日齢のいずれにおいても雄と Hubbard 系統(Pesadão Hubbard と Pescoço Pelado Hubbard)が高い体重と高い飼料摂取量を示したと報告されています。飼料要求率については、70日齢と84日齢では性別の影響のみが認められ、いずれも雄のほうが効率が良好でした。77日齢では性別に加えて品種の影響もみられ、Pescoço Pelado Hubbard が Pescoço Pelado Sasso より良好な値を示しました。

と体の特徴では、絶食時の生体重はすべての日齢で雄と Hubbard 系統が高い値を示しました。胸肉歩留まりは一貫して雌のほうが高く、もも・すね肉の歩留まりは雄のほうが高いという対照的な傾向が報告されています。著者らは、これは組織のつき方に関する雌雄の生理的な違いと整合する結果だとしています。

著者らがとくに重視しているのは、性別の効果が品種によって異なる場面があった点です。77日齢のと体歩留まりでは性別と品種の交互作用が認められ、Pescoço Pelado Hubbard では雄が雌を上回った一方、他の3系統では雌雄の差がみられませんでした。また84日齢の加熱損失でも交互作用が認められ、Pesadão Sasso では雌のほうが雄より加熱損失が大きく、他の系統では雌雄差が検出されませんでした。

胸肉の品質全般については、性別と品種の影響は中程度で、主に色の指標と一部の食感に関わる項目に現れました。77日齢では明度が雌で高く、赤みと彩度は雄で高い値を示しました。同じ77日齢で、加熱損失は Pescoço Pelado Hubbard が Pescoço Pelado Sasso より低く、せん断力は Pescoço Pelado Sasso で高い値が報告されており、著者らはこれを他系統に比べて軟らかさが劣ることを示唆するものと述べています。

この研究が示すこと

著者らは結論として、放し飼いで育てるスローグローイングの肉用鶏では、性別と品種のいずれもが発育成績、と体の特性、胸肉の一部の品質に影響することを示したとしています。雄は発育とももの歩留まりで、雌は胸肉の歩留まりで優れ、系統別では Hubbard の2系統が今回の条件下で高い生産効率を示しました。

そのうえで本研究が強調するのは、性別の影響が品種によって変わる場合があるため、主効果だけを見て判断するのでは不十分だという点です。品種、性別、そして出荷日齢を切り離さず、組み合わせて考えることが、放し飼いのような代替的な養鶏方式で飼育や出荷の方針を決めるうえで重要だ、というのが論文の示す意味だといえます。

著者:Marcela Batista Lacerda(Department of Animal Science, Federal University of the Jequitinhonha and Mucuri Valleys (UFVJM), Diamantina, MG, Brazil)、Jean Kaíque Valentim(Department of Animal Production, Federal Rural University of Rio de Janeiro (UFRRJ), Seropédica, RJ, Brazil. [email protected])、Rodolpho de Almeida Torres Filho(Fluminense Federal University (UFF), Niterói, RJ, Brazil)、Cláudio Vieira Araújo(Federal University of Mato Grosso (UFMT), Sinop, MT, Brazil)、Raiane Azeredo Silva(Fluminense Federal University (UFF), Niterói, RJ, Brazil)、Eugênia Viana Romanelli(Fluminense Federal University (UFF), Niterói, RJ, Brazil)、Cleube Andrade Boari(Department of Animal Science, Federal University of the Jequitinhonha and Mucuri Valleys (UFVJM), Diamantina, MG, Brazil)、Alexander Alexandre de Almeida(Federal University of Grande Dourados (UFGD), Dourados, MS, Brazil)、Sandra Regina Freitas Pinheiro(Department of Animal Science, Federal University of the Jequitinhonha and Mucuri Valleys (UFVJM), Diamantina, MG, Brazil)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Marcela Batista Lacerda, Jean Kaíque Valentim, Rodolpho de Almeida Torres Filho, et al. Growth performance, carcass traits, and breast meat quality of slow-growing broiler strains reared in a free-range system: effects of genotype and sex at different slaughter ages. Tropical Animal Health and Production 2026-09-01. DOI: 10.1007/s11250-026-05328-8. 原著ライセンス:CC BY.