コーヒーといえばアラビカ種やロブスタ種が主流ですが、東南アジアではリベリカ種(Coffea liberica)という品種への商業的な関心が高まっています。ただし、収穫後にどのような処理を施すかによって、豆の性質や体に作用する成分がどう変わるのかについては、まだ十分に調べられてきませんでした。今回紹介する研究は、インドネシアで生産されたリベリカ種の生豆(グリーンビーン)を対象に、産地と加工法の違いが豆の理化学的な特徴や抗酸化に関わる成分にどう影響するのかを調べたものです。
産地と加工法の違いを比較
研究チームは、インドネシアのジャンビ(Jambi)、カヨン(Kayong)、メランティ(Meranti)という3つの産地のリベリカ種生豆を用意しました。さらに、それぞれの産地で収穫後の処理方法として「ナチュラル製法」と「ハニー製法」の2種類を比較しています。これらの豆について、水分量や脂質の構成、アルカロイド類、ジテルペン類、カフェオイルキナ酸類(CQA類)といった成分の含有量、そして抗酸化力を測定し、産地と加工法それぞれの影響を統計的に検証しました。
研究でわかったこと
分析の結果、多くの項目で産地による差が統計的に意味のある水準(p<0.05)で認められ、生育環境が豆の性質に強く影響することが示されました。一方、加工法による違いが目立ったのは主に水分量、脂質の構成、そして抗酸化力に関する項目でした。
具体的には、ジャンビ産のハニー製法の豆でアルカロイド含有量が最も高く(100gあたり1.53g、乾燥重量換算)、カヨン産のナチュラル製法の豆ではジテルペン含有量が最も高い値(100gあたり304.70mg、乾燥重量換算)を示しました。またメランティ産のナチュラル製法の豆は、カフェオイルキナ酸類の含有量が最も高く(100gあたり5.38g、乾燥重量換算)、抗酸化活性の指標であるIC50値も101〜124μg/mLと、最も強い抗酸化力を示す結果となりました(IC50は数値が小さいほど抗酸化力が強いことを意味します)。さらに多変量解析では、まず産地の違いによってサンプルがグループ分けされ、加工法の違いはその次の分類要因として現れることが確認されました。
この研究の位置づけ
この研究は、著者ら自身が「産地と加工法が生豆の理化学的・抗酸化的特性とどう関連しているかについての予備的な知見」と位置づけているように、リベリカ種コーヒーに関する研究の初期段階の成果です。特定の産地や製法が優れているといった健康効果を保証するものではなく、あくまで生豆の成分組成に見られた傾向を報告したものである点に注意が必要です。なお、著者らはインドネシア国内の複数の研究機関に加え、東京大学とも関わりのある機関に所属していますが、論文の要旨や本文で日本の食品や生産・消費についての言及があるわけではありません(本記事作成の元となった情報の範囲では、著者所属先の記載以上の日本との直接的な関連は確認できませんでした)。
まとめ
インドネシア産リベリカ種コーヒーの生豆は、産地によって成分組成が大きく異なり、収穫後の加工法(ナチュラルかハニーか)もまた水分量や脂質、抗酸化力などに影響を与えることが、この研究から示されました。今後、こうした知見がリベリカ種コーヒーの品質評価や産地・製法選びにどう活用されていくのか、さらなる研究の展開が注目されます。
※本記事は原著論文の翻訳ではなく、研究内容を独自に解説したものです。参考文献:A. Ita Juwita, Dian Herawati, Didah Nur Faridah, et al. Unlocking the physicochemical, bioactive, and antioxidant potential of Indonesian Liberica coffee: roles of geographical origin and processing. フード・ケミストリー・エックス (2026). DOI: 10.1016/j.fochx.2026.104257. 原著ライセンス: cc-by-nc-nd.