豆腐づくりの過程で生まれる「オカラ」は、大豆由来の食物繊維を豊富に含む一方で、そのままでは水分を多く含み、加工しにくいことから廃棄されることも少なくない副産物です。しかし近年は、オカラに含まれる不溶性食物繊維(IDF)を機能性素材として活用する研究が進んでいます。今回紹介する論文は、オカラ由来の不溶性食物繊維に対して3種類の「物理的な改質処理」を施し、その性質がどのように変化するかを調べたものです。

粉砕や圧力といった物理的な力を加えることで、繊維の構造や機能性を変えられるのではないか、という発想が研究の出発点になっています。

研究でわかったこと

この研究では、オカラから取り出した不溶性食物繊維に対して、(1)マイクロジェット均質化処理(MT)、(2)超高圧処理(HP)、(3)超音波処理(UT)という3種類の物理的な処理を施し、無処理のものと比較しました。調べたのは、繊維の収率、微細構造、比表面積、水分保持力、熱に対する安定性、粘りけ(レオロジー特性)、そして腸内細菌への影響などです。

まず、いずれの処理方法でも繊維の収率が高まったことが報告されています。無処理では65.55%だったのに対し、MT処理で70.51%、HP処理で75.29%、UT処理では79.09%まで上昇したとのことです。また、機械的な力によって繊維の密な構造がほぐれ、粒子が細かくなることで、比表面積(物質の表面の広さを表す指標)も増加したとされています。無処理の0.18 m²/gと比べ、MT処理・HP処理・UT処理ではそれぞれ83.33%、50.00%、72.22%の増加が確認され、これに伴って水分の吸収性や吸着性能全体が向上したことが示唆されています。

個別の特徴としては、UT処理を施した繊維が特に優れた保水力(8.11 g/g)を示した一方で、熱に対する安定性(加熱時の質量減少率は無処理36.50%、MT処理23.59%、HP処理26.11%、UT処理33.74%)や粘りけの特性については、MT処理やHP処理の繊維に比べてやや劣る結果だったと報告されています。

特に注目されたのはMT処理(マイクロジェット均質化処理)です。多孔質でゆるやかな微細構造を持ち、吸着性能が高まったことに加え、腸内の善玉菌として知られるラクトバチルス・アシドフィルス菌やビフィドバクテリウム・ロンガム菌の培養試験において、良好な増殖促進の可能性が示されたとされています(培養36時間後の吸光度はそれぞれ0.594、0.509)。研究チームは、3つの処理法の中でもMT処理がオカラ由来食物繊維の品質向上や加工適性の改善、高付加価値化に有利であると位置づけています。

この研究の位置づけ・読むうえでの注意

この研究は、あくまでオカラ由来の不溶性食物繊維という素材の物理的・構造的な性質と、実験室内(in vitro)での腸内細菌への影響を調べたものです。論文自身も限界点として、食物繊維の消化速度とプロバイオティクス(善玉菌)への影響との関連性の評価が、in vitroモデルに基づくものにとどまっており、実際の食品の中でどのように働くかについては、まだ体系的に検証されていないと述べています。したがって、ここで示された結果がそのまま食品や健康への効果を保証するものではなく、一つの基礎研究の知見として捉えるのが適切です。

まとめ

今回の研究では、オカラ由来の不溶性食物繊維に物理的な処理を加えることで、収率や比表面積、吸着性能などが変化することが報告され、特にマイクロジェット均質化処理は多孔質構造の形成や善玉菌の増殖を促す可能性が示唆されました。食品廃棄物であるオカラの新たな活用法を探るうえで、興味深い基礎データを提供する研究といえそうです。今後、実際の食品への応用に向けたさらなる検証が期待されます。

※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:物理的改質処理法がオカラ由来不溶性食物繊維の理化学的・構造的・機能的特性に及ぼす影響(フーズ・2026年07月)