海藻は食物繊維を豊富に含む食材として、腸内環境への働きかけが注目されています。ただし海藻をそのまま食べることは少なく、湯通しや乾燥、発酵といった加工を経て食卓に上ることが一般的です。こうした加工方法の違いが、海藻に含まれる食物繊維の腸内細菌叢への働きかけ方を変えるのかどうかは、これまではっきりしていませんでした。今回紹介する研究は、コンブ科の海藻であるSaccharina latissimaを対象に、加工方法の違いが腸内細菌叢の組成や代謝活動にどう影響するかを、試験管内での実験を通じて調べたものです。
研究の方法
研究チームはSaccharina latissimaを、湯通し(ブランチング)、オーブンでの乾燥、乳酸菌Lactiplantibacillus plantarumによる発酵という3種類の方法で加工しました。これらの加工済み海藻を、まずINFOGEST 2.0という標準化された消化シミュレーション法により模擬消化させ、続いてヒトの便を用いた試験管内発酵(fecal fermentation)に供しました。この過程で腸内細菌叢の組成がどう変化するか、また短鎖脂肪酸(SCFA)の濃度がどう変わるかが調べられました。
研究でわかったこと
海藻を加えた培地では、高繊維対照(high-fiber control)と比較して、Bacteroides属、Escherichia/Shigella属、そしてLachnospiraceae科の相対的な存在量が増加した一方、Bifidobacteria(ビフィズス菌)は減少したと報告されています。
一方で、加工方法(湯通し・乾燥・発酵)の違いによる影響は限定的で、細菌叢の多様性を示すアルファ多様性・ベータ多様性はいずれの加工法でも同程度だったとされています。つまり、どのように加工した海藻であっても、腸内細菌叢へ与える影響の傾向はおおむね似通っていたということです。
短鎖脂肪酸の濃度については、海藻を加えた培地は高繊維対照よりも高い値を示しましたが、低繊維対照(low-fiber control)との間には統計的に有意な差は見られなかったとされています。
この研究の位置づけ・読むうえでの注意
この研究はヒトの便を用いた試験管内(in vitro)での発酵実験であり、実際に人が海藻を食べた場合の体内での反応を直接示したものではありません。また、研究チームは今後の課題として、海藻の発酵されやすさ(fermentability)を高めるために、別の加工方法や他の食品との組み合わせ(co-formulation)を検討する余地があると述べています。一つの研究であり、海藻の加工法が腸内環境に与える影響について結論が確定したわけではない点に留意が必要です。
まとめ
今回の研究では、コンブ科の海藻Saccharina latissimaを加えることで腸内細菌叢の組成に変化が生じる一方、湯通し・乾燥・乳酸菌発酵といった一般的な加工方法自体による違いは小さいことが示されました。海藻の腸内環境への働きかけについては今後もさらなる研究が必要とされています。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:海藻(Saccharina latissima)は一般的な加工法の影響が限定的なまま便発酵中の微生物叢組成を変化させる(ジャーナル・オブ・ファンクショナル・フーズ・2026年08月)