植物性食品の分野では、豆類や海藻を使った代替タンパク質が注目されています。とはいえ、それらを組み合わせて実際に「食べたいと思える製品」に仕立てるのは簡単ではありません。特に、消費者の声を製品開発の初期段階からどう取り入れるかは、まだ十分に検討されてこなかったテーマだといいます。今回紹介する研究は、豆類と海藻を使い、魚介類を思わせる風味を持つヴィーガンスプレッド(塗るタイプの食品)を、消費者や専門家を巻き込んだ「共創(コ・クリエーション)」の手法で開発しようとした取り組みです。
研究チームは、3段階からなる共同開発の枠組みを用いました。まず、約1000人を対象としたオンライン調査を実施し、消費者がこうした植物性スプレッドに何を求めているか、風味や食感の好み、市場としての可能性などを調べました。次に、この調査結果をもとに、17人の多様な関係者(研究者や食品業界関係者などを含むと考えられます)が参加するワークショップを開催。ここでは「LEGO® Serious Play®」という、レゴブロックを使いながらアイデアを形にしていく手法を用いて、豆類・海藻・精油を組み合わせた4種類のスプレッドの試作コンセプトを共同で作り上げました。
最後の段階では、専門家によるパネルが、できあがった試作品を評価しました。簡易的な官能検査や品質評価、さらに技術的な観点からの評価がそれぞれ3回ずつ行われています。その結果、4つの試作品のうち2つが、特に高い官能的な受容性と商業的な可能性を示したと報告されています。これらは、旨味のバランスが取れていることと、魚介類を思わせる風味の方向性を持つことが特徴だったとされています。
この研究の位置づけと読むうえでの注意
この研究の特徴は、約1000人規模のアンケートで得られた消費者の大まかな傾向と、少人数の多様な関係者による手を動かすワークショップでの共創、そして専門家による評価という、異なる規模・性質の知見を組み合わせて製品開発の初期段階に活かそうとした点にあるとされています。論文では、こうした早期段階での多分野にわたる共創が、消費者の期待を実際の製品設計に落とし込むうえで役立つ可能性が示唆されています。また、市場のニーズと技術的な実現可能性を結びつけるうえでオープンイノベーション的なアプローチが助けになったとしつつも、試作品についてはさらなる研究が必要だとも述べられています。
この記事で紹介したのはあくまで一つの研究であり、ここで開発された試作品がそのまま商品化されることを保証するものではありません。また、味や食感の評価は限られた人数の専門家パネルによるものであり、栄養面や健康への効果を検証したものでもない点には注意が必要です。
まとめ
本研究は、豆類と海藻を組み合わせたヴィーガンスプレッドを、消費者調査とレゴブロックを使ったワークショップ、専門家評価という複数の手法を組み合わせて開発しようとした試みです。旨味と魚介類を思わせる風味を持つ試作品が高い評価を得たと報告されており、植物性食品への関心が高まる中で、代替食品の開発における一つの参考事例になりうると考えられます。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:共創を通じた魚様の官能特性を持つヴィーガンスプレッドの開発(フューチャー・フーズ・2026年12月掲載予定)