この研究は、台湾の研究機関の研究論文です。
掲載誌:International Journal of Medical Sciences
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
胃食道逆流症(GERD)は、胃の内容物が食道へ逆流することで胸やけや酸の込み上げなどの症状が起こる、繰り返しやすい消化器の病気です。研究チームによれば、世界全体での有病率はおよそ13%と推定され、生活の質を大きく損なう一般的な疾患とされています。
一方、お茶とGERDの関係については、これまで一貫した見解が得られていませんでした。著者らは、過去の研究がお茶を一つのまとまった食習慣として扱い、発酵の度合いによる違いや飲む量・頻度を細かく区別してこなかった点に注目しています。そこで本研究は、台湾の大規模な健康情報データベース「台湾バイオバンク」の参加者を対象に、お茶を飲む習慣とGERDの有病率との関連を、お茶の種類・飲む頻度・1日あたりの量に分けて調べることを目的としました。
調べ方と主な報告結果
対象となったのは、お茶に関する情報が得られた27,119人です。お茶の種類は、紅茶に代表される「完全発酵茶」、ウーロン茶に代表される「半発酵茶」、緑茶や白茶にあたる「非発酵茶」に分類されました。1日の杯数(1杯は約350mLと定義)と飲む頻度も聞き取られ、GERDについては「診断されたことがあるか」という自己申告の質問で判定されています。年齢、性別、糖尿病、高血圧、喫煙・飲酒歴、コーヒーの摂取、運動習慣、教育状況、収縮期血圧、体格指数などの要因を統計的に調整したうえで、関連が分析されました。
論文の報告では、参加者のうち4,706人(17.4%)がGERDありに分類されました。お茶を習慣的に飲む人は、飲まない人と比べてGERDの有病率が低いという関連が認められています(オッズ比0.843、95%信頼区間0.779〜0.911)。ただしこの関連が確認されたのは半発酵茶と非発酵茶であり(オッズ比0.832)、完全発酵茶では統計的に意味のある関連は認められませんでした。
量と頻度でも違いが報告されています。1日1杯(オッズ比0.881)と2杯(同0.765)では有病率の低さとの関連が認められた一方、3杯以上では統計的に意味のある関連は示されませんでした。頻度についても、毎日飲む人では関連が認められましたが(オッズ比0.847)、週単位・月単位で飲む人では認められていません。なお「オッズ比」とは、ある集団での起こりやすさを比較する指標で、1より小さいほど比較対象より少ない傾向を示します。
報告をどう受け取るか
著者ら自身が強調しているのは、この研究がある一時点の状況を切り取って調べた横断研究であるため、お茶を飲むことがGERDを減らすという因果関係は示せないという点です。むしろ、逆流症状が出た人がお茶を控えるようになった結果として、GERDのある人にお茶を飲む習慣が少なく見えている可能性(逆の因果)も否定できないと論文は述べています。また、GERDの判定が自己申告であること、お茶の濃さ・飲む温度・飲用年数などが記録されていないことも限界として挙げられています。
関連の大きさについても、著者らは慎重な見方を示しています。オッズ比0.843は、絶対的な差に直すとおよそ2.6ポイントの有病率の違いにあたり、個々の人にとっては小さな差であって、それ自体が食事の助言の根拠になるものではないとしています。
それでも本研究は、お茶を一括りにせず発酵の度合いと飲み方で分けて見ると、関連の現れ方が異なることを大規模なデータで示した報告です。食習慣と消化器の病気の関係を考えるうえで、「何をどのくらい、どんな頻度で」という区別が重要になりうることを示唆しています。
著者:Cheng-Ming Kuo(. Department of Internal Medicine , Kaohsiung Medical University Hospital , Kaohsiung Medical University , Kaohsiung , Taiwan)、Jiun-Hung Geng、Wen‐Hung Hsu(. Division of Gastroenterology , Department of Internal Medicine , Kaohsiung Medical University Hospital , Kaohsiung Medical University , Kaohsiung , Taiwan)、Neng-Shen Chu(. Department of Internal Medicine , Kaohsiung Municipal Siaogang Hospital , Kaohsiung Medical University Hospital , Kaohsiung Medical University , Kaohsiung , Taiwan)、Szu-Chia Chen
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Cheng-Ming Kuo, Jiun-Hung Geng, Wen‐Hung Hsu, et al. Habitual tea consumption is associated with a low prevalence of gastroesophageal reflux disease in a Taiwanese population study. International Journal of Medical Sciences 2026-09-03. DOI: 10.7150/ijms.139922. 原著ライセンス:CC BY.