著者の所属・活動拠点の国は、スイスです。

掲載誌:npj Science of Food

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

豆を精製せずに食感をつくれるか

研究チームは、豆からたんぱく質などを分離・精製せずに、方向性のある繊維状の構造をつくる方法を調べました。植物性食品の食感づくりには、精製した原料や高度な加工設備が使われることがあります。そこで着目したのが、加熱した豆のペーストを一方向から凍らせる「方向性凍結」です。

まずヒヨコ豆を水に浸し、水とともに粉砕して加熱し、ゲル状にしました。その後、冷蔵、通常の凍結、方向性凍結の3条件を比較しました。方向性凍結では、型の側面などを断熱して底から上へ凍らせ、解凍後の内部構造や、押したときの硬さ、繰り返し変形させたときのまとまりやすさを調べました。

氷の成長方向が、解凍後の構造にも残る

著者らによると、冷蔵したヒヨコ豆のゲルには明確な方向性がなく、通常の凍結では部分的に構造がそろうものの、その向きは試料全体でばらばらでした。一方、方向性凍結では、同じ向きに並ぶ層状の構造がはっきりと形成されました。

論文は、この構造が氷の結晶の成長によって生じると説明しています。氷が一方向へ伸びる際に豆の成分が押し出され、結晶の間に集まります。解凍して氷が水に戻った後も、成分が集まった層が残り、自立する構造を保ちました。

硬さは、いずれの冷却条件でも豆の固形分濃度が高いほど増しましたが、方向性凍結したゲルは、冷蔵や通常の凍結に比べて約1.5〜3倍硬いと報告されました。また、押す向きによって硬さが異なり、繰り返し押した際にも構造のつながりを保ちやすいという結果でした。

さまざまな豆に使えるが、仕上がりは異なる

研究チームは、レンズ豆、エンドウ豆、リョクトウ、大豆などにも同じ方法を適用しました。固形分濃度12.5%では、試したすべての豆類で方向性のある構造ができました。ただし、構造の安定性は豆の種類によって異なり、赤レンズ豆やリョクトウなどはしっかりしたゲルになった一方、大豆は同じ濃度では弱いゲルになりました。大豆では、固形分濃度を上げることで強度が増しました。

著者らは、こうした違いに、でんぷんを含む炭水化物とたんぱく質の割合など、豆がもともと持つ成分の特徴が関わると考えています。この研究は、豆の成分を分離・精製するだけでなく、凍らせる方向や原料濃度を調整することでも、豆類の構造と食感を変えられることを示しています。

原著論文の著者・所属:Andrea Bach(Institute of Food, Nutrition, and Health, Department of Health Sciences and Technology, ETH Zürich, Zürich, Switzerland)、Elin Perler(Institute of Food, Nutrition, and Health, Department of Health Sciences and Technology, ETH Zürich, Zürich, Switzerland)、Lenja S. Lemcke(Institute of Food, Nutrition, and Health, Department of Health Sciences and Technology, ETH Zürich, Zürich, Switzerland)、Patrick A. Rühs(Institute of Food, Nutrition, and Health, Department of Health Sciences and Technology, ETH Zürich, Zürich, Switzerland. [email protected])

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Andrea Bach, Elin Perler, Lenja S. Lemcke, et al. Freeze structuring unlocks minimal-processing strategies for legume texturization. npj Science of Food 2026-09-01. DOI: 10.1038/s41538-026-00991-5. 原著ライセンス:CC BY.