写真: Yamaguchi Yoshiaki / Wikimedia Commons / CC BY-SA 2.0
あんこうは冬が旬の魚です。冬に向けて肝が大きくなり、淡白な白身に加えて、濃厚な肝も食べ頃を迎えます。鍋にすると、身の柔らかさや皮のぷるりとした食感を、一つの器で味わえます。
肝には、一切れの具として食べるだけでなく、鍋つゆそのものを作る使い道もあります。身や皮を食べ、肝の味が混ざった汁を味わう。冬のあんこうを買うときは、身のほかに皮や肝もそろうか確かめてみましょう。
鍋で味わう「七つ道具」
あんこうの身、皮、ひれ、肝、胃、えら、卵巣は「七つ道具」と呼ばれます。胃やえらも、あんこう鍋では歯ごたえのある具になります。白い身のほかにも、味わえる部位がいくつもある魚なのです。
あんこうには、口に鉤を掛けてつるし、皮や内臓、身を切り分ける「つるし切り」というさばき方があります。体が柔らかく、表面にぬめりがあって、まな板の上では安定させにくいためです。鮮魚売り場では、身や皮、肝などを鍋用に切り分けたものも売られています。
含まれる部位は商品によって違い、七つすべてがそろうとは限りません。皮付きの切り身があれば、白身と皮を食べ比べられます。肝が付いていれば、濃厚なみそ味のつゆも作れます。肝は下処理済みかどうかも、表示や売り場で確認しておくと調理に取りかかりやすくなります。
肝を炒って、鍋つゆをつくる
肝入りのみそ仕立てにするなら、肝は身や皮とは分けて用意します。身や皮などの切り身は、さっと熱湯にくぐらせて冷水に取り、表面に残った血のかたまりや汚れを落として水を切ります。鍋つゆに臭みを持ち込まないための下ごしらえです。
つゆに使う肝は、残っている薄い膜や血管を取り除き、洗って水気を拭いてから細かくたたきます。肝は脂質を多く含み、加熱すると脂がにじみ出るので、焦げつきにくい加工のフライパンなら油を足さずに炒められます。へらでつぶし、味噌を加えて練り合わせていきます。
肝と味噌がペースト状にまとまったら、水や酒を少しずつ加えてのばし、鍋つゆにします。細かくつぶした肝が汁全体に混ざるので、ひと口の汁からも、肝の濃厚でまろやかな風味を味わえます。
このつゆにあんこうの身や白菜、ねぎ、豆腐などを入れ、身も肝も中まで十分に火を通します。淡白な白身を食べるときにも、汁を含んだ白菜を食べるときにも、肝と味噌の味を一緒に味わえます。
白身と皮を味わい、締めは雑炊に
煮えたあんこうは、身と皮を一緒に取り分けてみてください。白身は柔らかく、皮やひれはぷるりとした口当たりになります。皮やひれに含まれるコラーゲンが、煮ることでゼラチンに変わるためです。皮のついた切り身なら、白身をかむ感触に皮の滑らかさが重なり、ひと口の中でも食感が変わります。
具を食べ終えたら、汁に残った骨などを除き、ご飯を加えて雑炊に。煮詰まって味が濃ければ水を足して調え、溶き卵を回し入れて火を通します。肝の風味がしみたご飯を、卵と一緒に味わえます。
次の寒い夜には、身も皮も肝もそろえて、あんこう鍋に。白身を食べたら皮のついた一切れを、続いて肝の味が広がる汁をひと口。この冬は、自宅でちょっと贅沢な鍋を楽しむか、お店で職人の味を堪能するのか、これからの季節、一つ楽しみが増える季節となりました。
※参考資料
以下の公開資料をもとにNutriMapが構成・執筆しました。
- 新潟県「1月の旬:アンコウ(キアンコウ)」(冬の肝と食味)
- 農林水産省 aff「冬の風物詩 山口県の『あんこう』」(冬に向けた肝の変化、七つ道具、つるし切り)
- 北九州市中央卸売市場「1月の水産物(アンコウ、トラフグ等)」(七つ道具、つるし切り、身・肝・皮・ひれの性質)
- 三越伊勢丹 FOODIE「【プロ直伝】意外と簡単だった! あんこう鍋の作り方。あん肝と味噌でコクを出すのがコツ」(東信水産・石戸宏さんによる下ごしらえと肝入りの鍋つゆの解説)
- 日本酒造組合中央会「あんこう鍋」(肝を炒めて調味料と合わせる調理)
- 時代劇専門チャンネル「料理昔ばなし:あんこう鍋」(里見陽子さんによる肝をペーストにする調理と、おじやへの仕立て方)
- 出典:文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」:あんこう(生)、あんこう(きも・生)(身と肝の成分)