この研究は、スウェーデン、オーストラリアの研究機関の研究論文です。
掲載誌:BMJ Nutrition Prevention & Health
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
何を目的とした研究か
オンラインでの食料品購入が急速に増えるなかで、著者らは、デジタル上の食品小売環境が人々の食生活のあり方を左右する重要な要因になっていると述べています。実店舗のスーパーマーケットについては、どのような売り方の工夫が買い物客に影響するかがすでによく理解されている一方、オンラインの売り場に関する証拠は限られているのが現状だと研究チームは指摘しています。
そこで研究チームは、スウェーデンのネットスーパーで用いられている「配置による販売促進」、つまり商品をどこにどう目立たせて並べるかという手法の実態を明らかにすることを目的としました。
どのように調べたか
研究チームは横断研究という設計を用いました。これは、ある一時点での状態を写真のように切り取って観察する方法で、時間をかけて変化を追うものではありません。調査対象はスウェーデン最大手の2社のネットスーパー(CoopとICA)で、調査期間は2024年4月から5月です。
調べたのは、広告やサイト上の掲載内容、関連商品の同時提案やおすすめ表示、そして初期設定のまま表示される商品一覧という3種類の配置手法です。これらを、トップページ、カテゴリーページ、検索結果、商品ページ、購入手続きページといった主要なページごとに、また3つの主要都市の6地点それぞれについて、体系的に確認しました。
商品の健康度の評価にはNutri-Scoreという指標を用いています。これは食品の栄養成分から算出される格付けの仕組みです。あわせてHealth Star Ratingと、北欧で使われるKeyhole(鍵穴マーク)の表示割合も報告しています。結果の比較には記述統計とカイ二乗検定が使われ、小売業者ごとの違いと、地域単位の社会経済指標による違いが検討されました。
報告された主な結果
対象となった販売促進商品1万4099点のうち、Nutri-Scoreでは65.5%が不健康に分類されたと報告されています。Health Star Ratingによる分類では44.8%でした。北欧のKeyholeマークが表示されていたのは9.9%にとどまり、これに加えて6.5%が要件を満たす生鮮の農産物だったとされています。
手法別に見ると、関連商品の同時提案やおすすめ表示が50.6%、初期設定の商品一覧が41.2%と最も多く、そのいずれにおいても不健康な商品が優勢でした。販売促進商品の掲載数が最も多かったのはトップページで、平均78.3点でした。
2社を比べると、Coopのほうが販売促進の掲載数がかなり多かったものの、不健康な商品が占める割合そのものには統計的に意味のある差は認められませんでした(p=0.071)。また、社会経済指標が高い地域と低い地域の間にも、有意な差は観察されていません(p=0.373)。
この結果が示すもの
著者らは、スウェーデンのネットスーパーが配置による販売促進を通じて、不健康な商品を偏って前面に出していると結論づけています。サイトの設計が買い物行動に与える影響は、とりわけオンラインの環境で重要であり、加えて規制に対する市民の幅広い支持がある——こうした点を踏まえると、今回の結果は、デジタル上の小売食品環境を改善し、より健康的な食生活を支え、食事に関連する疾患のリスクを下げるための政策的な対応の余地を示している、というのが論文の述べるところです。
つまりこの研究は、画面のどこに何を置くかという一見地味な設計上の選択が、公衆衛生に関わる問題として検討されうることを、実際の売り場の観察データから示したものだといえます。
著者:Markus Holmberg(Department of Health, Medicine and Caring Sciences, Linköping University, Linköping, Sweden)、Tazman Davies(The George Institute for Global Health, University of New South Wales, Sydney, New South Wales, Australia)、Jason HY Wu(School of Population Health, University of New South Wales, Sydney, New South Wales, Australia)、Karin Rådholm(Primary Health Care Center, Linköping University, Linköping, Sweden)、Damian Maganja(The George Institute for Global Health, University of New South Wales, Sydney, New South Wales, Australia)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Markus Holmberg, Tazman Davies, Jason HY Wu, et al. Unhealthy food marketing through prominent placement in Swedish online supermarkets. BMJ Nutrition Prevention & Health 2026-09-23. DOI: 10.1136/bmjnph-2026-001553. 原著ライセンス:CC BY.