著者の所属・活動拠点の国は、中国です。

掲載誌:Scientific Reports

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

ぜんそくは、空気の通り道である気道に慢性的な炎症が起きる病気です。著者らは、食事が炎症や酸化ストレス(体内で活性酸素が過剰になり細胞を傷つける状態)、さらに腸と肺の相互作用である「腸–肺軸」を通じて、ぜんそくに関わる可能性があると考えました。

この研究で注目したのは「PURE健康食スコア(PHDS)」という食事の評価指標です。80か国、20万人を超える人のデータをもとに作られたもので、果物、野菜、豆類、ナッツ、魚、乳製品の6つの食品群をどれだけ食べているかを0〜24点で表します。点数が高いほど、これらの食品を多くとる食事に近いことを意味します。論文によると、このスコアとぜんそくの関係を調べた研究はこれまで報告されていませんでした。

研究チームは、成人を対象にこのスコアとぜんそくの有無との関連を調べ、あわせて肺機能、ぜんそくのコントロール状態、生活の質、血液などで測る生体指標との関係も検討しました。

どのように調べたか

研究は「症例対照研究」という方法で行われました。病気のある人とない人を集め、過去の生活習慣などを比べる方法です。参加者は、医師にぜんそくと新たに診断された成人200人と、病院の健康診断に来た健康な成人200人で、両グループの年齢構成がそろうように集められました。

食事は110品目の食品摂取頻度調査票を使い、ぜんそくの診断前1年間に何をどれくらい食べていたかを振り返って答えてもらいました。そこからPURE健康食スコアを計算しています。さらに、呼吸の検査(肺機能検査)、呼気中の一酸化窒素濃度(気道の炎症の目安)、ぜんそくのコントロール状態や生活の質を測る質問票、血液中の炎症や酸化ストレス、腸–肺軸に関わる指標を測定しました。

分析では、年齢、性別、体格、身体活動、喫煙、社会経済的状況、家族歴などの影響をできるだけ考慮した統計的な手法を用いています。

主な結果

健康な人のスコアの平均は14.4点で、ぜんそくの人の10.4点より高い結果でした。スコアが1点高いごとに、ぜんそくである見込みを示すオッズは約0.89倍でした。スコアを高さ順に4つのグループに分けると、各要因を考慮したモデルで、最も高いグループのオッズは最も低いグループの0.28倍でした。

ぜんそくの人の中では、スコアが高いグループほど肺機能の指標がおおむね良く、ぜんそくのコントロール状態や生活の質の点数も高い傾向がありました。気道の炎症の目安となる呼気中の一酸化窒素濃度は、スコアが高いほど低くなっていました。一方、過去1年間のぜんそく悪化の回数とスコアの間には、はっきりした関連は見られませんでした。

血液の指標では、スコアが高いグループほど、高感度CRP、赤血球沈降速度、TNF-αといった炎症に関わる指標が低い傾向がありました。また、腸のバリア機能の乱れなどに関わるとされるゾヌリン、リポ多糖(LPS)、トリメチルアミンN-オキシド(TMAO)の濃度も低いことが報告されました。著者らはこれを、炎症や腸–肺軸に関わる指標がより好ましい状態にあることを示すものとしています。これらの生体指標が食事とぜんそくの関係を統計的に説明するかを探る追加分析も行われましたが、著者らはあくまで探索的なもので、原因や仕組みを示すものではないとしています。

この研究が示すこと

この研究は、果物や野菜、豆類、ナッツ、魚、乳製品を多くとる食事のパターンと、ぜんそくである見込みの低さや呼吸の状態の良さとの間に関連があることを報告しました。

ただし、これは観察研究で示された「関連」であり、食事がぜんそくを防ぐという因果関係を証明したものではありません。食事は過去を振り返って答えたもので、生体指標は診断後に測定されています。そのため、診断前から出ていた症状によって食事が変わっていた可能性も否定できないと著者らは述べています。こうした限界を踏まえつつ、食事の質とぜんそくの関係を考えるうえで手がかりとなる結果といえます。

原著論文の著者・所属:Xiaoli Liu(Department of Respiratory and Critical Care Medicine, Xinjiang Production and Construction Corps Hospital, No. 232 Qingnian Road, Tianshan District, Urumqi, 830002, Xinjiang, China)、Yuting Zhong(Department of Respiratory and Critical Care Medicine, Xinjiang Production and Construction Corps Hospital, No. 232 Qingnian Road, Tianshan District, Urumqi, 830002, Xinjiang, China)、Qian Luo(Department of Respiratory and Critical Care Medicine, Xinjiang Production and Construction Corps Hospital, No. 232 Qingnian Road, Tianshan District, Urumqi, 830002, Xinjiang, China)、Qunbao Ma(Department of Respiratory and Critical Care Medicine, Xinjiang Production and Construction Corps Hospital, No. 232 Qingnian Road, Tianshan District, Urumqi, 830002, Xinjiang, China)、Yun Xiang(Department of Respiratory and Critical Care Medicine, Xinjiang Production and Construction Corps Hospital, No. 232 Qingnian Road, Tianshan District, Urumqi, 830002, Xinjiang, China)、黄玉蓉(Department of Respiratory and Critical Care Medicine, Xinjiang Production and Construction Corps Hospital, No. 232 Qingnian Road, Tianshan District, Urumqi, 830002, Xinjiang, China)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Xiaoli Liu, Yuting Zhong, Qian Luo, et al. PURE healthy diet score associated with lower asthma odds: a case–control study. Scientific Reports 2026-10-13. DOI: 10.1038/s41598-026-73020-w. 原著ライセンス:CC BY.