この研究は、中国の研究機関の研究論文です。

掲載誌:Nutrients

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

著者らは、望ましくない食事の内容が中国における心血管疾患(心臓や血管の病気)の死亡に、どの程度関わっているかを推計しました。食事は本人の努力や社会の取り組みで変えられる要因であり、地域によって食事の質に差があることが、心血管疾患の負担の地域差につながっている可能性があると論文は述べています。

そこで研究チームは二つの問いを立てました。一つは、沿海部にある浙江省で、望ましくない食事に起因すると推定される心血管疾患死亡の割合が、年を追ってどう変化したかです。もう一つは、内陸部の河南省の食事が、浙江省沿海部と同じ内容になったと仮定した場合、心血管疾患による死亡がどれだけ減りうるかという試算です。

調べた方法

この研究は、同じ地域で時期を変えて繰り返し行われた集団調査のデータを用いる「反復横断研究」として実施されました。浙江省で2008年から2024年にかけて複数回行われた住民対象の栄養モニタリング調査に、2015年の河南省のデータを比較用に加え、合計56,018人の成人が対象となっています。

食事の内容は、3日間にわたって前日に食べたものを聞き取る方法と、家庭の調味料の重量測定を組み合わせて把握されました。評価されたのは、果物、野菜、水産物、ナッツ類、全粒穀物、赤身肉、加工肉、加糖飲料、調味料由来の食塩、オメガ3脂肪酸という10項目です。

そのうえで著者らは、既に公表されている相対リスクの推定値をもとにした「比較リスク評価」という枠組みを用い、人口寄与割合(PAF、集団の死亡のうちその要因に起因すると見積もられる割合)を算出しました。望ましくない食事の広がりの度合いは、都市部と農村部の人口構成に合わせて調整されています。河南省についての試算は、食事に起因するPAFが浙江省沿海部の水準まで下がったと仮定する反実仮想シナリオとして行われました。

報告された主な結果

浙江省の食事の特徴として、水産物・全粒穀物・野菜の摂取不足の割合が比較的低く、食塩のとりすぎも減少していたと報告されています。

望ましくない食事に起因すると推定された心血管疾患死亡の割合は、2008年に49.8%(95%不確実性区間40.8〜57.4)、2022年には数値上55.3%(48.1〜61.6)へと上がり、2024年は52.5%(45.6〜58.6)でした。検討された集団の中では、浙江省沿海部に住む女性でこの推定値が最も低くなっていました。浙江省は河南省より食事の内容が良好で、食事に起因する心血管疾患死亡のPAFも低いと報告されています。

設定された反実仮想シナリオのもとでは、河南省の食事が浙江省沿海部と同じ内容になった場合、年間およそ23,575件の心血管疾患死亡が避けられうると推計されました。ただし著者らは、浙江省でもナッツ類、果物、全粒穀物の摂取が少ない点など、なお重要な課題が残ると述べています。

この報告が示すこと

著者らの結論は、望ましくない食事への曝露が、心血管疾患死亡のかなりの部分に関わり続けているというものです。これらの数値はあくまで、既存のリスク推定値と仮定にもとづく推計であり、個人の食事が死亡を直接引き起こしたことを測ったものではありません。

そのうえで論文は、江南地域の食事パターンを整理し、その望ましい要素を負担の大きい地域に合わせて取り入れることが、地域ごとの心血管疾患予防を考える手がかりになりうると述べています。食事の地域差に目を向けることが、健康の地域差を理解する一つの道筋であることを示した報告といえます。

著者:Mengjie He(Department of Nutrition and Food Safety, Zhejiang Provincial Center for Disease Control and Prevention, Hangzhou 310051, China)、Lichun Huang(NHC Specialty Laboratory of Food Safety Risk Assessment and Standard Development, Hangzhou 310051, China)、Peiwei Xu(NHC Specialty Laboratory of Food Safety Risk Assessment and Standard Development, Hangzhou 310051, China)、Danting Su(NHC Specialty Laboratory of Food Safety Risk Assessment and Standard Development, Hangzhou 310051, China)、Yan Zou(NHC Specialty Laboratory of Food Safety Risk Assessment and Standard Development, Hangzhou 310051, China)、Dan Han(NHC Specialty Laboratory of Food Safety Risk Assessment and Standard Development, Hangzhou 310051, China)、Gangqiang Ding(Department of Nutrition and Food Safety, Zhejiang Provincial Center for Disease Control and Prevention, Hangzhou 310051, China)、Ronghua Zhang(NHC Specialty Laboratory of Food Safety Risk Assessment and Standard Development, Hangzhou 310051, China)、Pengyu Fu(Public Health Institute, Henan Provincial Center for Disease Control and Prevention, Zhengzhou 450016, China)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Mengjie He, Lichun Huang, Peiwei Xu, et al. SuboptimalDietaryPatterns and Estimated Cardiovascular Disease Mortality Burden in China: A Repeated Cross-Sectional Comparative Risk Assessment. Nutrients 2026-09-17. DOI: 10.3390/nu18183043. 原著ライセンス:CC BY.