この研究は、ブラジルの研究機関の研究論文です。

掲載誌:The Journal of the Food and Culture of the Americas

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

何を明らかにしようとした研究か

著者らは、ブラジルの保健医療分野で働く人たちが、どのような食生活を送っているのかに注目しました。背景にあるのは、収入や教育といった社会的な条件が健康問題の大きさを左右するという考え方です。とくに新型コロナウイルス感染症の流行下では、医療現場の負担が重くなり、働く人自身の生活習慣が変化したことが指摘されていました。論文は、業務の性質上こうした職種が感染症に接する機会の多い集団であることにも触れ、その健康を守るには影響要因の分析が必要だと述べています。

そこでこの研究の目的は、保健分野のさまざまな職種の間で「地中海食パターン」への近さに関連する要因を明らかにし、議論することに置かれました。地中海食パターンとは、果物、野菜、ナッツ、精製されていない穀類、魚、オリーブ油などを中心とする食べ方の型を指し、世界的に知られた食事様式です。著者らは、食品や栄養素を一つずつ取り上げるのではなく、食事全体の組み合わせをとらえられる点を利点として、この指標を参照枠に選んだと説明しています。

どのように調べたか

調査は、ある一時点の状況を観察する横断的な研究として行われました。著者らは社会人口学的な項目と、適切で健康的な食事に関する保健教育の内容を尋ねる電子アンケートを作成し、教育分野1名と保健分野3名の博士研究者による内部評価を経て用いました。倫理委員会の承認を得たうえで、案内をメッセージアプリで配布し、2022年1月から2月にかけて回答を集めています。

参加者は知人づてに広げる方法で集められ、22歳を超え保健分野の職務に就いている121人が対象となりました。分析のために、参加者は事務、支援、技術レベル、大学卒業者の4つの職種群に分けられています。支援群には清掃補助や警備、配膳などの担当者が、技術群には看護や検査、栄養、放射線の技術者が、大学卒業者群には看護師、医師、栄養士、薬剤師、心理職などが含まれます。

食生活は、ポルトガル語に訳して用いた「地中海食順守スクリーナー(MEDAS)」で測られました。これは申告された食品群の摂取から0〜14点を算出する道具で、0〜5点を低、6〜9点を中、10点以上を高と分類しています。さらに、食品を加工の程度で分けるNOVA分類に沿って、流行期に摂取が増えたか変わらなかったか減ったかを尋ね、あわせて情報を探す手段、教育活動への参加頻度、ガイドやパンフレットの理解度なども調べました。

報告された主な結果

回答者は北東部在住者が95%、女性が80.2%を占め、黒人または褐色と自認する人が68.6%でした。大学卒業者のうち最も多いのは栄養士(42.1%)で、65.3%が10年以上の勤務経験をもつと答えています。MEDASの得点では、中程度が57.9%、高い群が25.6%と、全体としては良好な結果が示されました。

そのうえで著者らは、地中海食への近さがより良好だったのは、世帯収入が最低賃金の3倍を超える家庭と、保健分野の高等教育を修了した人たちであったと報告しています。ボンフェローニ補正による比較では、最低賃金1人分で暮らす家庭に比べ、3〜10倍および10倍超の家庭で順守度が高く、技術職と支援職では大学卒業者に比べて順守度が低いという結果でした。ガイドやパンフレットの理解度については、補正後には統計的に有意な差は認められませんでしたが、こうした資料をよく理解している人のほうが成績が良い傾向がみられたとされています。

情報源にも職種による違いが現れました。大学卒業者は、合意文書やガイドライン、学術出版物を情報源として使う点で統計的に有意な差を示し、ガイドや冊子の理解度も技術・事務・支援の各群より高かったと報告されています。回答者全体では、インターネットが最も使われる手段(61.2%)で、相談先として最も多く挙げられたのは栄養士(61.2%)でした。また、教育活動に「よく」または「いつも」参加していると答えた人は32.2%にとどまりましたが、超加工食品の摂取が減ったという回答は、こうした活動に定期的に参加している人に多く分布していました。

この報告が示すもの

著者らは、教育・収入・職業上の養成が保健医療に従事する人の食生活に影響を与えうると結論づけ、流行下のような負担の大きい状況と重なったときには、より悪い健康上の帰結につながる可能性があると述べています。全体の成績が良好であっても、収入の低い層、資料にアクセスできない層、技術職や支援職では結果が有意に悪く、働く人々の間に機会の不平等による分断が生じうることを示す所見だと論じています。

一方で著者らは、この調査の限界も明示しています。電子アンケートは距離を保った状況でも調査を可能にする反面、記憶に基づく自己申告という偏りを伴います。また、内部評価のみを経た道具を用いたことや、群ごとの人数の偏りが結果の質に影響した可能性にも言及しています。

それでも、同じ職場で働く人々が同じように健康的な食べ方に近づけるわけではない、という指摘は明快です。栄養に関する知識や資料が誰にどこまで届いているのかという問いは、健康を守る仕事の内側にも向けられている、というのがこの報告から伝わる意味だと言えるでしょう。

著者:Mariângela de Souza Ramos(Universidade Federal da Bahia)、Fernando Luís de Queiroz Carvalho(Universidade Federal da Bahia)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Mariângela de Souza Ramos, Fernando Luís de Queiroz Carvalho. Educação, renda e adesão ao Padrão Alimentar Mediterrâneo entre profissionais brasileiros da área da Saúde no contexto da pandemia de COVID-19. The Journal of the Food and Culture of the Americas 2026-08-26. DOI: 10.35953/raca.v7i1.227. 原著ライセンス:CC BY.