タンポポ(Taraxacum officinale)やハイビスカス(Hibiscus sabdariffa)は、サラダや飲み物、ハーブ製品として世界各地で食べられてきた植物です。近年ブラジルでは、これらの花を粉末にしてカプセル入りのサプリメントとして販売する動きが広がっています。しかし、こうした「食用花サプリメント」に鉄や亜鉛といった微量元素がどれだけ含まれ、実際に人の消化管でどの程度吸収されうるのかは、これまでほとんど調べられていませんでした。ブラジル・バイア州立大学の研究グループは、市販のタンポポとハイビスカスのカプセルを分析し、含有量だけでなく「体に取り込まれうる量(生体アクセシビリティ)」まで踏み込んで調べました。

研究チームはブラジル国内で通信販売されている3社のタンポポおよびハイビスカスのカプセル(1カプセル500mg、賦形剤なし)を購入し、DFV・DNN・DPN(タンポポ)、HFV・HNN・HPN(ハイビスカス)と符号を付けて分析しました。まず密閉容器内での酸分解と、マイクロ波誘導プラズマ発光分光分析(MIP OES)という手法で、クロム(Cr)・銅(Cu)・鉄(Fe)・マンガン(Mn)・ニッケル(Ni)・亜鉛(Zn)の総含有量を測定しました。

カプセルにはどれだけの微量元素が含まれていたか

分析の結果、元素濃度(1gあたりのマイクログラム)は、Crが定量限界未満〜2.82、Cuが定量限界未満〜11.45、Feが159.44〜1880.90、Mnが48.94〜441.34、Niが定量限界未満〜3.21、Znが定量限界未満〜30.98という幅で検出されました。特にハイビスカスのHFVサンプルは鉄が1880.90µg/gと突出して高く、製造元によって含有量にかなりのばらつきがあることが分かりました。研究チームは、こうした差は花の収穫時期や産地の環境条件、乾燥・保存方法の違いによる可能性があると考察しています。

「含まれている量」と「吸収されうる量」は別物

この研究のもう一つの柱が、INFOGEST 2.0という国際的な標準プロトコルを使った「in vitro消化実験」です。これは、唾液・胃液・腸液を模した溶液と消化酵素(アミラーゼ、ペプシン、パンクレアチンなど)を順番に反応させ、pHや温度、反応時間を体内に近い条件(胃では pH3・37℃で2時間、腸では pH7・37℃で2時間など)に設定して、実際にどれだけの元素が「溶け出して吸収されうる状態」になるかを調べる方法です。サンプル量の制約から、この生体アクセシビリティの評価はタンポポのDFVとハイビスカスのHNNの2サンプルに絞って行われました。

結果は元素によって大きく異なりました。鉄は総含有量こそ高かったものの、消化液に溶け出した割合(生体アクセシブル分画)はわずか0.13%にとどまりました。一方でマンガンは12.13%、ニッケルは14.31%と、比較的高い割合で溶け出すことが分かりました。全体を通じて、評価された元素の生体アクセシブル分画は0.13%〜14.31%の範囲でした。さらに、マンガンについては消化液中に溶け出した量が1日の推奨摂取量(RDI)の最大209.3%に相当すると算出されており、含有量だけを見ていては分からない摂取実態が浮かび上がりました。

サプリメントの表示にも課題

あわせて研究チームは、購入した製品のラベル表示がブラジルの関連法規(ANVISAが定める規則)に適合しているかも確認しました。その結果、分析した製品はいずれもブラジル保健省への届出登録がなされておらず、また全製品が「食品サプリメント」という表示区分を法定の書式で明記していないなど、複数の不備が見つかったと報告されています。一部の製品では「医薬品ではありません」「推奨摂取量を超えないでください」といった必須の注意書きが欠けているケースもありました。

この研究の位置づけと読むうえでの注意

この研究は、タンポポとハイビスカスを使った食用花サプリメントの元素組成と生体アクセシビリティを、MIP OESとINFOGEST 2.0プロトコルを組み合わせて評価した研究として位置づけられています。ただし、生体アクセシビリティの測定はサンプル量の制約により2種類の製品に限定されており、全ての製品・全ての元素で同様の傾向が見られるとは限りません。また、in vitro消化モデルは実際の体内環境に近づけて設計されているものの、細胞の活動やホルモン・神経系の関与、免疫系の働きまでは再現できないという限界も著者らは指摘しています。ラベル表示の不備についても、今回調査した製品に限った結果である点に留意が必要です。あくまで一つの研究であり、食用花サプリメントの安全性や有効性について結論を出すものではありません。

今回の結果は、含有量の多さだけでミネラル摂取源としての価値を判断すべきではないことを示しています。鉄のように量は多くても吸収されにくい元素がある一方、マンガンのように少量でも消化管で溶け出しやすい元素もあり、サプリメントの栄養価を評価する際には総含有量と生体アクセシビリティの両方を見る必要があることが、この研究からうかがえます。

※本記事は原著論文の翻訳ではなく、研究内容を独自に解説したものです。参考文献:Taís Lorena Santos Fiais, Jorge Machado Freitas Junior, Ygor Felipe Garcez Brito, et al. Multielement Composition and in Vitro Bioaccessibility in Brazilian Edible Floral Supplement Capsules Containing Dandelion and Hibiscus. バイオロジカル・トレース・エレメント・リサーチ (2026). DOI: 10.1007/s12011-026-05309-w. 原著ライセンス: cc-by.