プロテインパウダーやエネルギージェルなど、運動をする人々が日常的に摂取するスポーツ用食品サプリメントは、原材料の産地や製造方法によって化学的な安全性が変わりうると考えられています。ポーランドの医科大学ビャウィストク校の研究グループは、同国市場で販売されているスポーツ用サプリメント50製品を対象に、有害金属である水銀(Hg)の含有量を測定し、推奨摂取量に基づく曝露評価を行いました。

どのように調べたのか

研究チームは、原子吸光分析装置(Advanced Mercury Analyzer AMA-254)を用いて、各製品に含まれる総水銀量を測定しました。そのうえで、製品ラベルに記載された「1日あたりの推奨最大摂取量」をもとに、体重100kgの成人を想定した曝露量を試算しています。水銀は摂取形態によって毒性の強さが異なることが知られていますが、今回の分析では総水銀量のみを測定しており、無機水銀とメチル水銀のどちらの形態であるかは区別されていません。そのため研究チームは、全量が無機水銀であると仮定した場合と、全量がメチル水銀であると仮定した場合の両方について、目標ハザード指数(THQ、値が1を超えると潜在的なリスクの目安とされる指標)を計算し、上限を見積もる形での評価を行いました。

わかったこと

50製品の総水銀含有量の中央値は9.008µg/kgで、四分位範囲は5.287〜21.938µg/kg、最小値から最大値までの幅は0.395〜51.694µg/kgでした。プロテイン、ジェル、粉末など製品カテゴリー間で統計的に有意な差は見られませんでした。いずれの製品も、EU(欧州連合)が食品サプリメントに定める水銀の上限値である0.1mg/kgを下回っていました。

全量を無機水銀と仮定した場合、体重100kgの成人におけるTHQ値はすべての製品で1を下回りました。一方、より保守的に全量をメチル水銀と仮定した場合には、1日あたりの推奨最大摂取量が300gと多いジェル製品3種で、THQ値が1.040〜1.551となり、1を超える結果となりました。ただし、これらの製品についても、水銀の耐容週間摂取量に対する寄与率は55.98〜83.51%にとどまり、100%は超えていませんでした。

この研究の位置づけと読むうえでの注意

研究チーム自身が述べているように、今回の分析は総水銀量のみを対象としており、無機水銀とメチル水銀を区別する「化学形態別分析(スペシエーション)」は行われていません。そのため、THQ値の計算はあくまで最悪のケースを想定した「スクリーニング(ふるい分け)」的な評価であり、製品ごとの実際のリスクを正確に示すものではないと位置づけられています。研究チームは、水銀濃度が規制基準を満たしているかどうかの確認だけでなく、1回あたりの摂取量に基づいた曝露評価を組み合わせること、そして摂取量の多いスポーツサプリメントについては継続的なモニタリングと水銀の化学形態別分析が必要であると述べています。今回の結果はポーランド市場で販売されている50製品を対象にした調査であり、対象や地域が異なれば結果も変わりうる点に留意が必要です。

まとめ

今回の調査では、ポーランド市場のスポーツ用食品サプリメント50製品の水銀含有量はいずれもEUの規制基準を下回っていました。一方で、1日あたりの摂取量が多いジェル製品の一部については、仮に含まれる水銀のすべてがメチル水銀であった場合という保守的な想定のもとで、目安となる指標値を超える結果が示されました。この研究は化学形態を区別しない総水銀量に基づくスクリーニング評価であり、実際のリスクを確定させるものではありません。今後、水銀の化学形態別分析を含むさらなる研究が待たれます。

※本記事は原著論文の翻訳ではなく、研究内容を独自に解説したものです。参考文献:Anna Puścion‐Jakubik, Dominika Jabłonka, Daria Wojciuk, et al. Mercury Content and Screening Exposure Assessment in Sports Food Supplements. トキシクス (2026). DOI: 10.3390/toxics14080680. 原著ライセンス: cc-by.