大学で医療や看護などを学ぶ「保健系学生」は、将来、人の健康を支える立場になる人たちです。ところが皮肉なことに、彼ら自身が過密な授業スケジュールや大量の課題に追われ、不規則な生活習慣に陥りやすいことが知られています。実際、インドネシアの医学生を対象にした2023年の調査では、過体重・肥満の割合が35.5%に達したとされ、懸念すべき水準として注目されていました。
肥満や過体重は、生活習慣病(非感染性疾患)による病気や死亡の主要な危険因子のひとつとされています。では、保健系学生の過体重には、具体的にどのような生活習慣が関わっているのでしょうか。今回紹介する研究は、「いつ食べるか」という時間栄養学(クロノニュートリション)、家族などからの社会的サポート、睡眠の質、そしてエネルギー・タンパク質摂取量に着目し、過体重との関連を調べたものです。
研究でわかったこと
この研究は、インドネシア教育大学(Universitas Pendidikan Indonesia)の保健系学生90名を対象に行われた横断研究です。対象者は、あらかじめ定めた条件に基づき、層別に比例配分した無作為抽出(比例層化無作為抽出)によって選ばれました。
調査には複数の質問票と測定法が使われています。食事のタイミングなどを尋ねる「Chrononutrition Profile Questionnaire(CPQ)」、食習慣に対する周囲の支えを尋ねる「Social Support for Eating Habits(SSEH)」、睡眠の質を評価する「ピッツバーグ睡眠質問票(PSQI)」、2日間にわたる24時間思い出し法による食事調査、そして身長・体重などの身体計測が行われ、カイ二乗検定と多重ロジスティック回帰分析によってデータが解析されました。
その結果、対象学生全体の47.80%が過体重に分類されました。統計解析では、食事をとる時間帯の幅(eating window)、家族からのサポート、睡眠の質の3つが、過体重と有意な関連を示したと報告されています(オッズ比はそれぞれ、食事時間帯の幅が0.34、家族のサポートが2.69、睡眠の質が3.24)。さらに多変量解析の結果、これらの要因のなかで家族からのサポートが、過体重に最も強く関連する要因として特定されたとされています。
この研究の位置づけ・読むうえでの注意
この研究は、ある一時点でのデータをもとに複数の要因と過体重との「関連」を調べた横断研究であり、何が原因で何が結果なのかという因果関係を直接証明するものではありません。また、対象は特定の大学の保健系学生90名に限られており、他の学生集団や一般の人々にそのまま当てはまるとは限らない点にも注意が必要です。この研究の著者らは、家族を基盤とした介入が、健康的な食習慣や適切な時間栄養学的行動、良好な睡眠の質を促し、保健系学生の過体重予防に重要となりうると述べていますが、これは一つの研究から示唆された知見であり、結論が確定したわけではありません。
まとめ
今回の研究では、インドネシアの保健系学生を対象に、食事の時間帯・家族のサポート・睡眠の質と過体重との関連が調べられ、なかでも家族からのサポートが最も強く関連する要因として示されました。多忙な学生生活の中での健康管理には、本人の努力だけでなく、周囲、とりわけ家族による見守りや励ましが関わっている可能性が示唆される、興味深い調査結果だといえるでしょう。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:保健系学生における過体重と関連する時間栄養学、社会的サポート、睡眠の質(インドネシアン・ジャーナル・オブ・マルチディシプリナリー・オン・ソーシャル・アンド・テクノロジー・2026年08月)