著者の所属・活動拠点の国は、中国です。
掲載誌:Animals
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の背景と目的
採卵鶏、特にケージで飼われ産卵数の多い鶏では、肝臓に脂肪が過剰にたまる「脂肪肝出血症候群」がよく見られます。この病気では肝臓が腫れてもろくなり、出血を伴うこともあります。産卵成績や卵の品質の低下、死亡の増加につながるため、養鶏の現場では重要な問題です。鶏では肝臓が脂肪酸合成の中心を担っており、産卵後期には加齢や長期の生産負担によって、肝臓の脂質代謝が滞りやすくなると考えられています。
飼料のエネルギーを高めるために脂肪の多い飼料が使われることがあります。しかし脂肪が過剰になると、肝臓や腸の代謝に負担がかかります。腸内細菌が肝臓の脂質代謝に影響する「腸と肝臓のつながり(腸肝軸)」も注目されています。
胆汁酸は肝臓でコレステロールから作られる物質です。腸で脂肪を乳化して消化吸収を助けるほか、脂質代謝などを調節する信号としても働きます。また、胆汁酸と腸内細菌は互いに影響し合う関係にあります。
これまで採卵鶏で胆汁酸を飼料に加えた研究は、結果が一致していませんでした。そこで研究チームは、高脂肪飼料を与えた産卵後期の鶏に胆汁酸を加えた場合を調べました。対象は、生産成績、卵の品質、血液と肝臓の脂質関連指標、盲腸の細菌構成で、これらをまとめて評価しました。
どのように調べたか
研究チームは、50週齢のハイライン・ブラウン種の採卵鶏150羽を3つのグループに分けました。1つ目は通常の飼料(脂肪3.25%)、2つ目は高脂肪飼料(脂肪8.07%)、3つ目は高脂肪飼料に胆汁酸を飼料1kgあたり300mg加えたものです。添加量は、産卵後期の鶏を対象とした先行研究の用量比較や安全性の報告をもとに選ばれました。
使われた胆汁酸製品は、ヒオデオキシコール酸を主成分とし、ケノデオキシコール酸やヒオコール酸も含んでいました。研究チームは、産卵率や飼料の摂取量、卵の品質、血液と肝臓の脂質関連の値、肝臓の組織の様子を比べました。さらに、盲腸の内容物に含まれる細菌の遺伝子を解析し、細菌の構成も調べました。
主な結果
産卵率はグループ間で大きな差がありませんでした。一方、胆汁酸を加えたグループは、高脂肪飼料だけのグループに比べて1日の飼料摂取量が減り、飼料要求率(卵を生産するのに必要な飼料の量の目安)が改善しました。著者らは、胆汁酸が産卵そのものを増やすというより、飼料の利用効率を高めた可能性があると考察しています。
卵の品質では、殻の強さや厚さ、卵の形といった外見の指標にはあまり影響が見られませんでした。ただし、卵白の質を表す「ハウユニット」は、高脂肪飼料だけのグループより改善しました。
肝臓については、高脂肪飼料だけのグループで脂肪肝の状態がはっきり見られました。肝臓が黄色みを帯び、脂肪の粒が増え、総コレステロール、中性脂肪、LDLコレステロールの値が上がっていました。胆汁酸を加えたグループではこれらの値が低く、組織で見られる脂肪の粒や空胞も少なくなっていました。また、肝臓の損傷と関係する血液中の酵素(ALTとAST)の活性も低くなっていました。
腸内細菌については、細菌の種類の豊富さや偏りといった全体の多様性には大きな差がありませんでした。一方、細菌の構成そのものにははっきりした違いが見られました。たとえば、プロテオバクテリア門の割合が高脂肪飼料だけのグループより増えていました。
特定の細菌と体の指標との関連も見つかりました。リケネラ科のある細菌群が多いほど、血液中のALTやAST、肝臓の中性脂肪やLDLコレステロールが低く、HDLコレステロールが高いという関連です。
この研究が示すこと
この研究は、高脂肪飼料を与えた産卵後期の鶏で、胆汁酸の添加に次の変化が伴ったことを報告しています。肝臓への脂肪の蓄積が少ないこと、肝臓の損傷に関わる指標が低いこと、卵白の質が保たれていること、盲腸の細菌構成が違うことです。著者らは、胆汁酸が高脂肪条件下で鶏の肝臓の健康を保つ栄養面の手段になりうると結論づけています。
ただし、細菌と体の指標の関係は、試験の終わりの一時点で測った相関にとどまります。細菌の変化が脂質代謝の改善をもたらしたのか、それとも代謝の変化の結果なのかは、著者ら自身が「まだ判断できない」としています。
また、通常の飼料に胆汁酸を加えたグループは設けられていません。そのため、今回の効果が高脂肪条件に特有のものかどうかは分かっていません。調べた添加量も一つだけでした。こうした範囲の中で、胆汁酸と鶏の肝臓、腸内細菌のつながりを一体的に示した研究といえます。
原著論文の著者・所属:Cai Ma(Department of Medical Genetics and Cell Biology, Shandong Medical and Pharmaceutical University, Yantai 264003, China)、Mingzhi Liang(Institute of Animal Science and Veterinary Medicine, Yantai Academy of Agricultural Sciences, Yantai 265500, China)、Zengguang Wang(Institute of Animal Science and Veterinary Medicine, Yantai Academy of Agricultural Sciences, Yantai 265500, China)、Guanghui Teng(College of Water Resources & Civil Engineering, China Agricultural University, Beijing 100083, China)、Junhai Xue(Yantai Jinlai Food Co., Ltd., Yantai 261413, China)、Jie Ma(Yantai Jinlai Food Co., Ltd., Yantai 261413, China)、Ruili Li(Institute of Animal Science and Veterinary Medicine, Yantai Academy of Agricultural Sciences, Yantai 265500, China)、Ming Qin(Institute of Animal Science and Veterinary Medicine, Yantai Academy of Agricultural Sciences, Yantai 265500, China)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Cai Ma, Mingzhi Liang, Zengguang Wang, et al. Dietary Bile Acid Supplementation Improves Lipid Metabolism and Selected Egg Quality Traits in Late-Phase Laying Hens Fed a High-Fat Diet and Is Associated with Alterations in Gut Microbiota. Animals 2026-08-12. DOI: 10.3390/ani16162518. 原著ライセンス:CC BY.