乳アレルギーや代謝異常など特別な事情を持つ乳幼児や患者向けに作られる「特殊調製粉乳」は、通常の粉ミルクとは異なる配合で栄養バランスが設計されています。こうした製品ではアミノ酸組成が健康に直結するため、含まれるアミノ酸の種類と量を正確に把握できる分析法が欠かせません。中国のQilu University of Technology(山東省科学院)食品科学工程学院と、Shandong Baihui Dairy社の研究グループは、特殊調製粉乳に含まれる18種類のアミノ酸を同時に定量できる高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法を開発し、その性能を検証しました。
どのような方法で分析したのか
研究グループが採用したのは、フェニルイソチオシアネートという試薬でアミノ酸をあらかじめ化学的に標識してから(プレカラム誘導体化)、C18カラムで各アミノ酸を分離し、紫外線(UV)検出器で検出するという手法です。定量には外部標準法が用いられました。さらに、粉乳中のたんぱく質を分解してアミノ酸を取り出す前処理工程についても検討が行われ、6mol/Lの塩酸を使い120℃・2時間でオートクレーブ加水分解する条件と、従来から用いられてきた110℃・24時間のオーブン加水分解とを比較し、条件の最適化が図られました。
分析法の性能としてわかったこと
検証の結果、18種すべてのアミノ酸で検量線の相関係数が0.999を超え、良好な直線関係が確認されたと報告されています。検出限界は0.07〜0.32μg/mL、定量限界は0.23〜1.07μg/mLで、精度(繰り返し測定のばらつき)は0.06〜2.44%、再現性は0.32〜2.22%、保存中の安定性は0.19〜2.77%という数値が示されました。既知量のアミノ酸を試料に添加して回収率を確認する試験では85.92〜107.55%の範囲に収まったとされています。加水分解条件を最適化したことで、全アミノ酸の分析にかかる時間は35分に短縮されたと報告されています。また、中国の既存の標準分析法であるGB 5009.124-2016では検出が難しいとされるトリプトファン・アスパラギン・グルタミンについても、この方法では定量が可能だったとされています。
この研究の位置づけと読むうえでの注意
この研究は、特殊調製粉乳という限られた製品カテゴリーを対象に、実験室内で分析法の性能を検証したものです。数値はいずれも今回の実験条件下で得られた結果であり、対象を粉乳以外の食品や別の分析環境に広げた場合に同じ性能が再現されるかは、この要旨だけからは判断できません。分析法の開発・検証研究であるため、粉乳そのものの健康効果や安全性について何かを示すものではない点にも注意が必要です。一つの研究成果として、品質管理の現場でどう活用されるかは今後の検証にも左右されるといえます。
まとめ
今回の研究では、特殊調製粉乳中の18種アミノ酸を同時に定量するHPLC法が開発され、加水分解条件の最適化によって精度・感度・分析時間の面で改善が確認されたと報告されています。特殊医療用食品の品質管理に役立つ可能性が示唆されていますが、これは分析技術に関する研究であり、特定の食品の効能を示すものではない点を踏まえて読むとよいでしょう。
※本記事は原著論文の翻訳ではなく、研究内容を独自に解説したものです。出典(原著論文):Zhimeng Yuan, Fuhao Du, Xinrui Wang, et al. Simultaneous high-performance liquid chromatography analysis of 18 amino acids in special formula milk powder: development and validation. フード・サイエンス・オブ・アニマル・プロダクツ (2026). DOI: 10.26599/fsap.2026.9240184. 原著ライセンス: cc-by-nc-nd.