ビタミン剤やミネラルサプリメントには、カルシウムや鉄、亜鉛といった体に必要なミネラルのほか、アルミニウムやバリウムなど必須ではない金属元素も含まれていることがあります。こうした成分が「錠剤やカプセルに含まれている量」と「実際に消化管で吸収されうる量」は必ずしも一致しません。後者を推定する考え方は「生体利用可能性(バイオアクセシビリティ)」と呼ばれ、胃や腸の消化液を模した溶液に食品やサプリメントを浸し、どれだけの量が溶け出すかを調べることで評価されます。今回紹介する論文は、この生体利用可能性を調べるための代表的な実験手法そのものを検証した研究です。
研究でわかったこと
この研究では、ビタミン・ミネラル系および植物由来成分を含む食品サプリメントを対象に、必須元素であるカルシウム、銅、鉄、カリウム、マグネシウム、マンガン、モリブデン、ナトリウム、亜鉛と、非必須元素であるアルミニウム、バリウム、クロム、ストロンチウム、バナジウムの生体利用可能性が調べられました。
分析には、人工的に消化液を再現する2種類のin-vitro(試験管内)法である「UBM(Unified BARGE Method)」と「INFOGEST」が用いられ、これらの手法で得られた抽出液を誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP-OES)という装置で測定し、比較が行われました。その結果、元素の種類やサプリメントの種類によって、生体利用可能性の値に違いが見られたと報告されています。
一方で、この研究では方法論上の重要な課題も明らかになりました。消化液を模した抽出液の組成の影響により、一部の元素では定量限界(これ以上正確に測れないという下限値)が比較的高くなってしまい、その結果、多くの元素で検出された量が定量限界を下回ってしまうケースが多かったとされています。これは、ICP系の分析技術でこれらの抽出液を測定する際に生じる干渉(測定を妨げる影響)が原因とされ、生体利用可能性の評価そのものを難しくする大きな制約になっていると指摘されています。
さらに研究チームは、UBM法とINFOGEST法のどちらにも塩酸(HCl)を含む溶液が使われている点に着目し、1リットルあたり1モルの塩酸溶液のみを使ったシンプルな抽出も試しています。その結果、同じ元素において、塩酸溶液だけでも溶け出し(リーチング)が確認されたということです。
この研究の位置づけ・読むうえでの注意
この論文は、特定のサプリメントの効果や安全性を評価したものではなく、金属元素の生体利用可能性を測るための分析手法そのものの精度や限界を検証した研究です。要旨で示されている通り、多くの元素で定量限界を下回る結果となったことは、この研究が持つ重要な制約として明示されています。したがって、ここで得られた生体利用可能性の値をもって、特定のサプリメントの吸収されやすさや効果を断定的に評価することはできません。あくまで一つの研究であり、分析手法の課題を含めて今後さらなる検証が必要になると考えられます。
まとめ
この研究では、食品サプリメントに含まれる必須・非必須の金属元素について、2種類のin-vitro消化模擬法(UBM・INFOGEST)を用いた生体利用可能性の評価と比較が行われました。元素やサプリメントの種類による違いが見られた一方で、分析上の定量限界という技術的な制約が大きな課題として浮かび上がった点が、この研究の特徴といえます。また、両手法に共通する塩酸溶液のみを使った簡易的な抽出でも同様の溶出が確認されたことが報告されています。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:食品サプリメント中の金属の生体利用可能性:プロトコルと事実(バイオメタルズ・2026年06月)