この研究は、中国、アメリカ、香港の研究機関の研究論文です。

掲載誌:Frontiers in Nutrition

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の背景と目的

肥満は、食道がん、大腸がん、肝がん、膵がん、腎がん、子宮体がんなど複数のがんの発生と関係があると指摘されており、こうした「肥満関連がん」は世界的な健康課題になっています。研究チームは、肥満の広がりとともにその負担が今後さらに増すと見込まれる中で、生活の中で変えられる要因を見つけることに臨床的・公衆衛生的な意義があると述べています。

食事の質、運動不足、喫煙、睡眠の不足はそれぞれ単独でも肥満や慢性的な炎症、インスリン抵抗性などと結びつくことが知られていますが、生活習慣はまとまって現れやすく、一つずつ切り離して評価すると全体像をとらえにくいという問題があります。そこで著者らが用いたのが「健康的な植物性食事・生活習慣スコア(hPDI-Lifestyleスコア)」です。これは、果物・野菜・全粒穀物・豆類・ナッツなどを多く含む健康的な植物性の食事パターンの評価に、身体活動、喫煙状況、睡眠時間を組み合わせて、健康的な生活習慣をどれだけ守れているかを0〜100点で表す合成指標です。もともと心血管疾患の予防という文脈で開発されたもので、がんの結果に対する妥当性は確かめられていませんでした。この研究の目的は、英国の大規模データであるUKバイオバンクを使って、このスコアと肥満関連がんの発生、肥満関連がんによる死亡、全死因死亡との関連を前向きに調べることです。

何をどのように調べたか

UKバイオバンクは、2006年から2010年にかけて英国内22か所で37〜73歳の約50万人を登録した住民ベースの研究です。この研究では、ウェブ上で前日24時間の食事内容を尋ねる調査(Oxford WebQ)を2回以上受けており、スコアの計算に必要な情報がそろい、起点の時点で肥満関連がんがなかった人を対象としました。食事は複数回の平均値を用いることで、日ごとのばらつきを抑えて普段の食べ方に近づける工夫がなされています。最終的に、対象となる10万4713人のうち、解析に必要な項目がすべてそろった9万3763人が主たる解析対象となりました。

肥満関連がんの発生は、国の がん登録、入院記録、死亡記録との連結によって確認され、食道、胃の噴門部、大腸、肝、胆のう、膵、腎、子宮体部、卵巣、甲状腺、髄膜のがんと多発性骨髄腫が含まれています。追跡の中央値はおよそ15〜16年で、この間に肥満関連がんの新規発生が2258件、肥満関連がんによる死亡が1095件、全死因死亡が6215件記録されました。

統計解析ではCox比例ハザードモデルが用いられ、スコアを三分位に分けた比較と、1標準偏差(SD)増えるごとの比較の両方が検討されました。性別、民族、学歴、世帯収入、がんの家族歴、総エネルギー摂取量、飲酒状況に加えて、主要なモデルではBMIの区分と糖尿病も調整されています。さらに著者らは、追跡開始から2年以内に発症した人を除く解析、他の原因による死亡を競合事象として扱う解析、欠測値を補完した解析、理想的な生活習慣の数を単純に数え上げる別の指標による解析、個々のがん部位を一つずつ除いた解析など、多くの感度分析で結果の安定性を確かめています。

報告された主な結果

すべてのモデルで、スコアが高いほど三つの結果のリスクが低いという逆方向の関連が報告されました。BMIと糖尿病まで調整した主要なモデルでは、スコアが1SD高いごとのハザード比は、肥満関連がんの発生で0.92(95%信頼区間0.88〜0.96)、肥満関連がんによる死亡で0.82(同0.77〜0.86)、全死因死亡で0.78(同0.77〜0.80)でした。ハザード比は、比較した集団でその出来事がどれだけ起こりやすいかの比で、1より小さければリスクが低い方向であることを示します。

スコアを連続的な値として曲線で検討すると、三つの結果すべてで全体的な関連が認められました。ただし、肥満関連がんの発生とがん死亡については曲がった関係の統計的な証拠は見られず、全死因死亡では非直線性が認められ、スコアが低い範囲で急に下がり、高い範囲ではより緩やかに下がる形だったと報告されています。

性別で分けた解析では、肥満関連がんの発生について、男性で最も高い三分位群のリスクが29%低く(ハザード比0.71、95%信頼区間0.60〜0.83)、女性では統計的に意味のある関連が認められませんでした(同0.95、0.82〜1.10)。しかし著者らは、この性別による違いは、早期の発症例を除いた解析や、男女ともに起こる部位に限定した解析では統計的に意味のあるものではなくなったとし、真の性差を示すものではないと慎重に位置づけています。

構成要素ごとの解析では、互いに調整した後、身体活動と喫煙は三つの結果すべてと逆方向に関連していました。食事の指標はがん死亡と全死因死亡には逆方向に関連したものの、がんの発生とは関連が見られず、睡眠は全死因死亡とのみ関連していました。喫煙を除いて作ったスコアでも逆方向の関連は残っており、著者らは関連が単一の要素だけで説明されるものではないとしています。部位別には食道がんと膵がんで逆方向の関連が見られた一方、腎、子宮体部、卵巣、甲状腺、多発性骨髄腫では明確な逆方向の関連は認められませんでした。

結果の受け止め方

著者らは、この研究が観察研究であるため因果関係は導けないと明記しています。測りきれていない交絡の影響は完全には排除できず、BMIと糖尿病を調整したことで、代謝を経る関連が弱く見えている可能性もあると述べています。生活習慣は主に調査開始時点で測られたもので、追跡中に変わったかもしれず、自己申告による誤差も残ります。スコアには飲酒が構成要素として含まれていない点も限界として挙げられています。さらに、UKバイオバンクの参加者は欧州系が大半で、一般の人々より健康な傾向があるため、結果をそのまま他の集団に当てはめられるとは限らず、今回示されたのは相対的な関連であって、生活習慣を変えることで得られる絶対的な利益を直接表すものではないとされています。

それでも、植物性中心の食事と身体活動、喫煙、睡眠をひとまとめにした指標が、肥満関連がんの発生と死亡、そして全死因死亡のいずれとも一貫して逆方向に関連していたという報告は、生活習慣を個別の行動ではなく全体として見る視点の手がかりになります。著者らは、予防に関する含意を確かなものとするには、より代表性のある集団での確認と介入研究が必要だと結論づけています。

著者:Jinzhou Yu(School of Nursing and Health, Zhengzhou University)、Qiang Zhang(School of Nursing and Health, Zhengzhou University)、Qianyu Zhou(College of Public Health, Zhengzhou University)、Jifeng Sun(Department of Biological Sciences, De Anza College)、Buwei He(Department of Epidemiology and Biostatistics, Arnold School of Public Health, University of South Carolina)、Zhaohan Wang(Corona del Mar Middle and High School)、Ziqiu Guo(School of Nursing, The University of Hong Kong)、Mengting Liu(School of Nursing and Health, Zhengzhou University)、Mingyang Zhao(College of Public Health, Zhengzhou University)、Tong Wanyan(College of Public Health, Zhengzhou University)、Yulong Wan(College of Public Health, Zhengzhou University)、Hua Ye(College of Public Health, Zhengzhou University)、Changqing Sun(School of Nursing and Health, Zhengzhou University)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Jinzhou Yu, Qiang Zhang, Qianyu Zhou, et al. Association of healthy plant-based diet-lifestyle score with obesity-related cancer incidence and mortality: a prospective cohort study in the UK Biobank. Frontiers in Nutrition 2026-09-08. DOI: 10.3389/fnut.2026.1922232. 原著ライセンス:CC BY.