この研究は、インドネシアの研究機関の研究論文です。

掲載誌:Journal of Food Science

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

糖尿病や心血管疾患、肥満といった非感染性疾患の増加を背景に、研究チームは、日常的によく食べられ、配合の自由度も高い朝食用シリアルに注目しました。基本的な栄養に加えて健康に役立つ成分を届ける食品を、手に取りやすい形で実現できないかという問題意識です。

素材として選ばれたのは、米ぬかと未熟バナナ粉です。米ぬかにはトコトリエノールやγ-オリザノール、食物繊維などの有用成分が含まれ、未熟バナナ粉には消化されにくいでんぷん(レジスタントスターチ)が含まれます。さらに、ショウガ・シナモン・レモングラスを混ぜたスパイス粉末を加えました。これらのスパイスは香りづけになるだけでなく、ポリフェノールなどの成分を持つ、比較的安価な素材として位置づけられています。

著者らによれば、米ぬかとバナナ粉を使った押出成形シリアル自体は先行研究で作られていましたが、そこにスパイス由来の成分を組み合わせ、消費者の嗜好を軸に配合を検討した研究はこれまで十分に行われていませんでした。本研究は、スパイス配合量を変えたときにシリアルの物理的・機能的・官能的な性質がどう変わるかを調べたものです。

どのように調べたか

押出成形(エクストルージョン)とは、原料の生地を高温・高圧の装置に通し、短時間で加熱しながら押し出して成形する連続生産の技術です。この過程ででんぷんが糊化し、たんぱく質が変性し、酵素の失活や微生物の低減も起こります。研究チームは二軸押出機を用い、コーンスターチ、安定化した米ぬか、未熟バナナ粉、脱脂粉乳、椰子糖などを共通の配合とした上で、スパイス混合粉末の量だけを0%(対照)、1%、2%、3%の4段階に変えた試作品を作りました。

得られたシリアルについて、色、牛乳に浸したときに食感を保つ時間、硬さと砕けやすさ、かさ密度、吸水性と水溶性、膨化の程度といった物理的性質を測定しました。あわせて、水分・たんぱく質・脂質・灰分・炭水化物といった一般成分、総ポリフェノール量、総フラボノイド量、DPPH法およびABTS法による抗酸化活性を分析しています。

官能評価には、訓練を受けていない一般消費者70名が参加しました。そのままの状態、8℃の冷たい牛乳をかけた状態、30℃の温かい牛乳をかけた状態という3つの食べ方それぞれについて、当てはまる味や香りの特徴を選ぶ方式(CATA)、選んだ特徴の強さを5段階で評価する方式(RATA)、全体としての好ましさを6段階で答える方式で評価が行われました。最も良い配合はベイズ流の多基準分析によって選ばれ、その配合について総食物繊維量と血糖指数(GI)が測定されています。なお研究は倫理委員会の承認を受け、参加者からは事前に書面による同意が得られています。

報告された主な結果

一般成分では、スパイスの配合量が増えるにつれて脂質と灰分が有意に増加したと報告されています。著者らは、脂質の増加はスパイスに含まれる油溶性成分が粗脂肪として計上されたこと、灰分の増加はスパイス由来のミネラルの寄与を反映している可能性を指摘しています。炭水化物は差し引きで計算されるため、他の成分が増えた分だけ低下しました。たんぱく質には有意な差は見られませんでした。

色は明確に変化しました。明度は対照の65.07からスパイス入りの各配合で70.50〜71.47へ上がり、彩度はスパイス3%で最も高く、色相角は82.76から78.06へと赤みがかった黄色寄りに移りました。対照との色差は配合量とともに大きくなり、より黄金褐色に近い外観になったと述べられています。

牛乳に入れたときの食感の持続時間は、スパイス1%と2%でそれぞれ27.26分、27.63分と最も長く、対照の26.35分を上回りました。一方、3%では24.67分と短くなっています。ただし、すべての配合が既報の即席朝食シリアルの最低目安である3分を大きく超えていました。硬さは2%で13.53Nと最も低く、3%では16.02Nへ戻る非直線的な変化を示し、砕けやすさの指標は3%で最も高い値となりました。かさ密度は対照の0.0917 g/mLから3%の0.1031 g/mLへ増え、より緻密な製品になったことが示されています。

最適とされた1%配合の総食物繊維は5.65%で、原料の配合から計算した理論値8.03%より約30%低い値でした。著者らはこれについて、押出成形の高温・高圧・せん断によって多糖類が低分子化し、分析法で回収されにくくなった可能性や、未熟バナナ粉のレジスタントスターチが糊化して消化されやすくなった可能性などを、確認されていない推測として挙げています。

官能評価では、25項目のうち有意な差が出たのは主に香り・味・口当たり・後味に関する項目で、食感に関する項目の多くでは配合間に有意差が見られませんでした。特にショウガの香りと辛味の香りは、3つの食べ方すべてで配合による違いが明確でした。一方、シナモンの香りは牛乳を加えると配合間の区別がつきにくくなり、著者らは牛乳が香気成分の放出や知覚を変えた可能性を挙げています。なお参加者は19〜25歳が77.1%、女性が72.9%、学生が91.4%と偏りがあり、著者ら自身、結果はこの参加者層の反応として解釈すべきで、より多様な消費者での検証が望ましいと述べています。

この研究が示すこと

この研究は、地域で得られる米ぬかや未熟バナナ粉といった素材に、身近なスパイスを組み合わせることで、押出成形シリアルの色・食感・香りをどう変えられるかを、一つひとつ測りながら描き出したものです。

目を引くのは、スパイスを増やせば増やすほど良くなる、という単純な関係が成り立たなかった点です。牛乳の中での食感の持続も、硬さも、膨らみ方も、配合量に対して直線的には動きませんでした。著者らは、これらの性質が配合と加工条件の複数の要因の組み合わせで決まっていること、そして推定した仕組みの多くは本研究では直接確かめられていないことを繰り返し断っています。

栄養を高める素材を加えることと、消費者に受け入れられる形に仕上げることは、どちらか一方だけでは足りません。この研究は、その両方を同じ土俵で評価した記録として読むことができます。

著者:Zaki Muhammad Husyemi Rafsanjani(Division of Food Science and Technology, Faculty of Engineering and Technology, IPB Dramaga Campus IPB University Bogor Indonesia)、Slamet Budijanto(Division of Food Science and Technology, Faculty of Engineering and Technology, IPB Dramaga Campus IPB University Bogor Indonesia)、Vallerina Armetha(Division of Chemical Engineering, Design, and Smart Manufacture, Faculty of Engineering and Technology IPB Dramaga Campus IPB University Bogor Indonesia)、Azis Boing Sitanggang(Division of Food Science and Technology, Faculty of Engineering and Technology, IPB Dramaga Campus IPB University Bogor Indonesia)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Zaki Muhammad Husyemi Rafsanjani, Slamet Budijanto, Vallerina Armetha, et al. Customer‐Oriented Development and Characterization of Spice‐Enriched Extruded Breakfast Cereal From Rice Bran and Unripe Banana Flour. Journal of Food Science 2026-09-01. DOI: 10.1111/1750-3841.71475. 原著ライセンス:CC BY.