著者の所属・活動拠点の国は、トリニダード・トバゴ、メキシコです。

掲載誌:Frontiers in Sustainable Food Systems

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

チャドンベニは、カリブ地域で料理の香り付けに広く使われるハーブで、生のまま食べることもあります。研究チームによると、トリニダード・トバゴではよく消費されている一方、微生物による汚染の実態や、それに伴う健康上の懸念について、公表された情報がありませんでした。

そこで著者らは、トリニダードで販売されるチャドンベニの細菌数を調べ、地域や販売形態による違いを比較しました。また、衛生状態の指標となる腸内細菌科などの細菌を特定し、一部の菌について抗菌薬が効きにくい性質である「耐性」を調べました。

何を、どのように調べたか

研究チームは2025年9~10月、トリニダードの北部・中部・南部にある路上市場とスーパーマーケットで、計90束のチャドンベニを採取しました。各束について、酸素のある条件で培養して増える細菌の総数と、衛生状態の指標となる大腸菌群の数を測り、地域と販売形態を組み合わせた6群で比較しました。大腸菌群は、病原性のある大腸菌だけを指すものではありません。

分離した細菌のうち38株では、細菌の種類を見分ける手掛かりとなる16S rRNA遺伝子の配列を調べ、既知の配列と照合しました。さらに、代表的な12株について、9種類の抗菌薬に対する反応を、薬剤の周囲で細菌の増殖が抑えられる範囲から判定しました。

主な報告結果

著者らは、調査したすべての地域・販売形態で高い細菌数を報告しました。培養して増える細菌の総数の中央値は、北部の路上市場で最も低く7.10、南部の路上市場で最も高く7.76 log10 CFU/gでした。これは、試料1グラム当たりの、培養で集落をつくる細菌数を常用対数で表した単位で、値が1増えると菌数は10倍になります。スーパーの中央値は、3地域とも7.44~7.45 log10 CFU/gと近い値でした。

大腸菌群の数の中央値は、北部の路上市場の5.62から、中部の路上市場の7.11 log10 CFU/gまでの範囲でした。細菌の総数、大腸菌群の数ともに、6群全体の比較では統計的に有意な違いがありました。

遺伝子配列の解析では、クレブシエラ属、シトロバクター属、エンテロバクター属など、多様な細菌が見つかりました。これらには、体の抵抗力が低下した場合などに感染を起こしうる日和見病原菌も含まれます。ただし、近縁の菌種をこの方法だけで区別することには限界があるため、種名の判定は暫定的なものとされています。

抗菌薬を試験した12株では、アンピシリンへの耐性が最も多く、9株、75.0%に認められました。一方、メロペネムには12株すべてが感受性を示し、薬剤による増殖抑制が認められました。シプロフロキサシンとゲンタマイシンにも、多くの株が感受性を保っていました。

この報告が示すこと

研究チームは、今回の結果がチャドンベニを食べると病気になることを示すわけではないと明記しています。そのうえで、衛生管理上の課題と、日和見病原菌や抗菌薬耐性菌が食品を通じて広がる可能性を指摘しました。スーパーで販売された試料にも汚染が認められたことから、販売場所だけでなく、栽培から収穫、輸送、販売までを通した衛生管理が重要だと述べています。

ただし、抗菌薬の試験に用いた菌株数は限られ、耐性の原因となる遺伝子や、病気を起こす性質に関わる遺伝子・特徴は調べていません。この報告は、チャドンベニに付着する細菌と耐性の状況を示す基礎資料であり、検出された菌による具体的な発症リスクまで明らかにしたものではありません。

原著論文の著者・所属:Vidya de Gannes(Department of Food and Resource Management Systems, Faculty of Agricultural Sciences and Sustainability (FASS), The University of the West Indies, St. Augustine Campus)、Narisa Singh(Department of Food and Resource Management Systems, Faculty of Agricultural Sciences and Sustainability (FASS), The University of the West Indies, St. Augustine Campus)、Sivakumar Karuppusamy(Department of Food and Resource Management Systems, Faculty of Agricultural Sciences and Sustainability (FASS), The University of the West Indies, St. Augustine Campus)、José Germán Serrano-Gamboa(Facultad de Ingeniería Química, Universidad Autónoma de Yucatán, Mérida, Yucatán, Mexico)、Chandrashekhar Unakal(Department of Pathology/Microbiology & Pharmacology, Faculty of Medical Sciences, The University of the West Indies, St. Augustine Campus)、Ronald Roopnarine(Department of Food and Resource Management Systems, Faculty of Agricultural Sciences and Sustainability (FASS), The University of the West Indies, St. Augustine Campus; Global Institute for Climate-Smart and Resilient Development (GICSRD), The University of the West Indies, St. Augustine Campus; Global Water Partnership-Caribbean (GWP-C))

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Vidya de Gannes, Narisa Singh, Sivakumar Karuppusamy, et al. First study in the Caribbean on molecular characterization and AMR of indicator and opportunistic Enterobacteriaceae from Chadon Beni (Eryngium foetidum), a widely consumed Caribbean culinary herb. Frontiers in Sustainable Food Systems 2026-11-04. DOI: 10.3389/fsufs.2026.1876419. 原著ライセンス:CC BY.