健康的な食事といえば「食物繊維は多めに、添加糖は控えめに」というイメージを持つ人は多いのではないでしょうか。では実際に、世界の人々はこの30年ほどでどのように食べてきたのでしょうか。今回紹介する研究は、世界185カ国・地域の食事データを用いて、食物繊維と添加糖の摂取量が時代とともにどう変化してきたか、そしてそれが非感染性疾患(NCD、いわゆる生活習慣病)の広がりとどう関係しているのかを調べたものです。
研究でわかったこと
この研究では、世界の食事摂取量を推計する「Global Dietary Database(GDD)」というデータベースを用いて、食物繊維については1990年から2018年まで、添加糖については1990年から2020年までの摂取量の推移を分析しました。地域や年齢層、教育レベル、都市化の状況ごとに摂取量を比較したうえで、食物繊維・添加糖の摂取量や両者の比率(食物繊維対添加糖比)と、非感染性疾患の有病率との関連についても統計モデルを用いて検討されています。その際、国の社会人口指標(SDI)や所得水準、都市化の程度による影響も考慮されました。
その結果、世界全体で見ると、食物繊維の摂取量(中央値)は1日あたり14.8gから21.6gへと増加していました。一方、添加糖の摂取量は総エネルギー摂取量に占める割合として7.7%から10.5%へと増加していたと報告されています。
地域別に見ると、興味深い対照が浮かび上がりました。食物繊維の摂取量は高所得国を除くすべての地域で増加していた一方、高所得国では逆に21.5gから16.4gへと減少していたとされています。添加糖についても地域差があり、ラテンアメリカ・カリブ海地域では15.6%から13.3%へと減少していたのに対し、それ以外の地域では増加が見られたということです。
さらに、こうした摂取パターンは教育レベルや都市化の程度とも関連が見られ、社会人口指標(SDI)が高い国ほど添加糖の摂取量が多い傾向が示されました(相関係数r=0.195、p=0.008)。一方で、食物繊維対添加糖比と非感染性疾患の有病率との関連については、統計的に有意な関連は認められなかった(β=−10.15、p=0.067)と報告されています。
この研究の位置づけ・読むうえでの注意
この研究は、各国・地域の集団レベルでの食事データと疾患有病率を組み合わせて分析した「生態学的研究」と呼ばれる手法によるものです。個人ごとの食事内容と健康状態を直接結びつけたものではなく、あくまで国・地域という集団単位での傾向を捉えたものである点には留意が必要です。また、食物繊維対添加糖比と非感染性疾患有病率との関連は有意ではなかったと報告されており、この研究の結果だけから「食物繊維や添加糖の摂取が非感染性疾患の増減に直接影響する」と結論づけることはできません。一つの研究であり、これをもって結論が確定したわけではないことを念頭に置いて読んでいただければと思います。
まとめ
この研究では、1990年代以降、世界的に食物繊維の摂取量が増加傾向にある一方、高所得国では減少していること、また添加糖の摂取量は多くの地域で増加している一方、ラテンアメリカ・カリブ海地域では減少していることが示されました。摂取パターンには教育や都市化といった社会的要因との関連もうかがえたとされています。著者らは、こうした世界的な格差を踏まえ、栄養状態の改善や非感染性疾患の負担軽減に向けた的を絞った対策の必要性を指摘しています。今後、こうした地域差がどのような要因によって生じているのか、さらなる研究の蓄積が期待されるところです。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:食物繊維および添加糖摂取量の世界・地域・国レベルでの変動:非感染性疾患への影響(パブリックヘルス・ニュートリション)