肺がんの予防というと禁煙や大気汚染対策がまず思い浮かびますが、日々の食事内容も関係しているのでしょうか。これまで果物や野菜の摂取と肺がんリスクの関連を調べた研究はいくつかありましたが、野菜や果物に多く含まれる「食物繊維」そのものに注目して肺がんリスクとの関連を検討した研究はこれまでなかったとされています。今回紹介する論文は、世界各地で行われた複数の前向きコホート研究のデータを統合し、食物繊維の摂取量と肺がんリスクの関係を系統的に見直したものです。
研究でわかったこと
この研究では、2025年4月21日までに公表された文献をPubMed、Scopus、Web of Science、Google Scholarといったデータベースから系統的に検索し、食物繊維摂取量と肺がんリスクとの関連について報告している前向きコホート研究を集めました。研究の質はNewcastle–Ottawa Scaleという評価基準で確認され、エビデンス全体の確実性についてはGRADEという手法を用いて評価されています。統合には合計で約300万人(2,999,203人)の参加者と26,012人の肺がん症例を含む複数のコホート研究が用いられ、ランダム効果モデルによって各研究の結果がまとめられました。
用量反応関係を解析した結果、食物繊維の摂取量が1日あたり5g増えるごとに、肺がんリスクが8%低いという関連が認められました(相対危険度0.92、95%信頼区間0.85〜0.98)。また、摂取量とリスクの関係は直線的であり、摂取量が多いほど急激にリスクが下がる、あるいは横ばいになるといった非直線的な傾向は認められませんでした(非直線性の検定でP=0.995)。このエビデンス全体の確実性は、GRADE評価によって「中程度」とされています。
この研究の位置づけ・読むうえでの注意
著者らは、この解析結果は食物繊維摂取と肺がんリスク低下との関連を支持するものだとしつつも、いくつかの限界があるため結果の解釈には注意が必要だと述べています。今回の解析はあくまで既存の観察研究(前向きコホート研究)を統合したものであり、食物繊維の摂取そのものが肺がんを予防する「原因」であることを直接証明するものではありません。食事内容や生活習慣にはさまざまな要因が絡み合っているため、今回示された関連が他の要因の影響を受けている可能性も踏まえて理解する必要があります。
この研究は、複数の前向きコホート研究を統合した信頼性の高い解析手法を用いていますが、それでも一つの系統的レビュー・メタ解析であり、これだけで結論が確定したわけではない点には留意したいところです。
まとめ
約300万人分のデータを対象としたこの解析では、食物繊維の摂取量が多いほど肺がんリスクが低い傾向にあることが示唆され、5g/日の増加ごとに8%のリスク低下という直線的な関連が報告されました。エビデンスの確実性は中程度と評価されており、今後さらなる研究による検証が期待されます。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:食物繊維摂取量と肺がんリスクの関連:前向きコホート研究のGRADE評価付き系統的レビューと用量反応メタ解析(ニュートリション・ジャーナル・2026年05月)