「超加工食品(UPF)はできるだけ避けたほうがいい」という話を、健康情報でよく見かけるようになりました。加工の度合いで食品を分類する「NOVA分類」という枠組みが広まったことで、UPFという言葉自体が一種の警告サインのように扱われる場面も増えています。ただ、この論文は「UPFという一つの大きな箱ですべての食品をまとめて語ってよいのか」という、意外と見過ごされがちな疑問を投げかけています。
これまでの観察研究や実験研究では、UPFの摂取が心血管代謝疾患のリスクや総死亡率の上昇と関連づけられてきました。ただし著者らは、UPFを一括りの曝露として扱う科学コミュニケーションや公衆衛生メッセージには見落としがあるかもしれないと指摘します。同じNOVA分類に属していても、栄養組成や代謝への影響、臨床との関連は食品によって大きく異なるためです。
加工肉と全粒パンを同列に語れるか
実際、複数の前向きコホート研究では、加工肉や加糖飲料は2型糖尿病や心血管代謝疾患との関連が一貫してプラス方向に出ていました。一方でパン類や朝食用シリアルなどの一部のUPFサブグループでは、関連が中立、あるいはむしろマイナス方向に出ていたといいます。ヨーロッパの大規模コホート研究(EPIC)でも同様の傾向が見られました。動物由来の超加工食品や加糖飲料の摂取が多い人ほど糖尿病リスクが高い一方で、超加工されたパンやシリアル、植物性の代替食品は、リスク推定値がむしろ低い方向に関連していたのです。
著者らは、これはNOVA分類そのものの考え方を否定するものではないと強調します。NOVA分類はもともと栄養価の高低ではなく、工業的な加工の度合いをとらえるための枠組みだからです。しかし、生物学的にまったく異なる性質を持つ食品を一つの曝露カテゴリーにまとめてしまうと、病気の原因を考えるうえで重要な違いが見えにくくなり、因果関係の解釈が難しくなる可能性があると論じられています。
「何を食べるか」より「何の代わりに食べるか」
この論文がもう一つ強調しているのが、栄養疫学における「代替」という視点です。私たちは食品を単独で食べているわけではなく、ある食品の摂取を増やせば、通常は別の食品の摂取が減ります。つまり、あるUPFカテゴリーに帰属するとされる健康影響は、その食品自体の性質だけでなく、実際に何と置き換えられているかにも左右されるというわけです。栄養的に異なる食品を一つのカテゴリーにまとめてしまうと、こうした置き換えによる効果の違いが見えにくくなり、食事リスクの解釈が単純化されすぎる恐れがあると著者らは述べています。反事実的な視点で言えば、重要なのは「その食品が超加工かどうか」ではなく、「消費者が現実的に選べる代替品と比べて、それが改善なのか悪化なのか」だという考え方が示されています。
こうした知見は、多くのUPFに対する懸念そのものを否定するものではありません。むしろ著者らが論じているのは、食品マトリックスや栄養組成、何と置き換えられるかという文脈を抜きにして、「超加工である」ということ自体を栄養的に一貫した曝露として扱うことの限界です。同時に、添加物や乳化剤、食品構造の変化といった非栄養的な特徴が、一部のUPFサブグループを通じて、より広く疾病リスクに関わっている可能性も否定されていません。
持続可能な食生活との関係
この論点は、持続可能な食生活への転換を考えるうえで特に重要になりそうです。栄養的な特徴がまったく異なるにもかかわらず、一部の植物性代替食品が、加工肉や菓子類と同じリスクの物語の中でひとまとめに語られる例が増えていると論文は指摘します。確かにナトリウムや添加物が多い製品も残っていますが、置き換えを検証した試験では、動物性食品の一部を選ばれた植物性代替食品に置き換えることで、LDLコレステロールや体重がわずかに改善する可能性が示唆されています。
現在の食事ガイドラインは、人の健康と地球環境の両方を見据えて、植物由来の食品をより多く摂ることを推奨する方向に進んでいます。しかし、その転換を後押しするはずの強化植物性飲料や代替肉といった食品の多くは、その他の調理済み食品とあわせて、UPFに分類されてしまうという点が論じられています。
この研究を読むうえでの注意
この記事のもとになった論文は、UPFという分類の使われ方そのものを問い直す論考であり、特定の食品の効果を新たに検証した研究ではありません。示されている糖尿病リスクなどの関連は、これまでの複数のコホート研究を踏まえた議論として紹介されているものであり、この論文単独で得られた新しい結果ではない点に留意してください。また、一つの研究・論考であり、UPFと健康との関係について結論が確定したわけではありません。
この論文が投げかけているのは、「超加工かどうか」という一つの物差しだけで食品を評価することの難しさです。同じUPFという分類の中にも、栄養的な性質や、何と置き換えられるかによって、健康との関連が異なりうる食品が含まれている可能性がある、という視点は、日々の食事を考えるうえでも一つのヒントになりそうです。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:超加工食品への注目が持続可能な食生活転換を見えにくくするとき(フロンティアーズ・イン・ニュートリション・2026年08月)