この研究は、アメリカの研究機関の研究論文です。

掲載誌:Journal of Public Health Policy

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

栄養表示の数字を比べやすくするために

世界的に、ナトリウムの平均摂取量は世界保健機関(WHO)の推奨上限を超えています。ナトリウムのとり過ぎは高血圧のリスク上昇と関連しており、高血圧は心筋梗塞や脳卒中、腎臓病、認知症、早期死亡のリスクを高めます。論文によると、WHOは2024年に、30〜79歳で高血圧のある人を14億人と推計しました。

食事中のナトリウムの大きな供給源の一つが、包装食品や加工食品です。包装食品の栄養表示にはナトリウム量が載っていますが、多くはミリグラム(mg)で示されているため、一般の人が商品どうしを比べるのは簡単ではありません。そこで研究チームは、栄養表示をもっと使いやすくする方法として、1食分のナトリウム量(mg)をエネルギー量(kcal)と比べる「ナトリウム密度」(mg/kcal)という考え方を提案しました。

「1 mg/kcal」という目安

著者らが注目したのは、栄養表示で基準とされる1日のエネルギー摂取量(2000 kcal)と、WHOが推奨する成人のナトリウム上限(1日2000 mg)が、数字の上で同じだという点です。このため、ナトリウム量がエネルギー量を上回るかどうか、つまりナトリウム密度が1 mg/kcalより大きいか小さいかを、商品を比べる際の実用的な目安にできると考えました。1 mg/kcalを超える商品は、エネルギーに比べてナトリウムが多く、比較のうえでは選ぶ優先度が低い可能性がある、という位置づけです。

論文ではまず、米国の国民健康栄養調査(NHANES)の記録から、2003〜2023年の20歳以上の米国成人の平均ナトリウム摂取量が男性で1日3809 mg、女性で1日2854 mgと、WHOの推奨水準を超えていたことを紹介しています。一方、エネルギー量に対するナトリウムの比率は、男女でほぼ同じでした。

身近な食品で見えた違い

研究チームは、実際の商品の栄養表示を集め、ナトリウム密度が商品によってどう違うかを示しました。トマト、豆、ナッツでは、生のトマトと缶詰、乾燥豆と缶詰の豆、生・無塩・有塩・味付けのナッツなどを比較しました。乾燥豆のように目安の1を下回るものもあれば、リフライドビーンズ(豆を煮てつぶした料理)のように上回るものもありました。加工品は、加工の過程でどれだけ塩を加えたかによって、目安の上にも下にもなりました。

スナック菓子の例では、プレッツェルのナトリウム密度が4.5だったのに対し、ポップコーンは0.8でした。ナトリウム量そのもの(490 mgと90 mg)を比べても同じ結論になりますが、著者らは、ナトリウム密度には推奨上限と関連づけられること、1食分の量の違いに左右されないこと、1つの商品だけでも判断できることという利点があると説明しています。

さらに4つの食品群で比べると、肉、野菜、穀物のように塩を加えることの多い食品群では、ハムなどの加工肉のような加工食品のほうが、生肉のような未加工の食品よりもナトリウム密度が高い傾向がありました。一方、牛乳をアイスクリームにするように、塩ではなく砂糖や脂肪を加えた加工品では比率が低くなりました。また、エネルギー量が多くナトリウム密度も1を超える食品は、1食分が大きいほどナトリウム摂取量に大きく影響しうるとして、1食550 kcal・ナトリウム1160 mg(密度2.1)の冷凍ピザが例に挙げられています。研究チームは、朝食のオムレツに使うハムをナトリウムの少ない商品に置き換える例も示しました。

使い方と注意点

著者らは、この方法には限界もあると述べています。調べた食品はごく一部で、市場の商品全体を代表するものではありません。また、1つの商品のナトリウム密度は1日の総摂取量と同じではなく、実際の食事は1を上回る食品と下回る食品の組み合わせでできています。スキムミルクのように健康的な食品でも1を超えるものがあり、逆に塩分と脂肪がともに多い加工肉は、エネルギー量が多いぶん、低脂肪の同種品よりナトリウム密度が低く出ることがあります。そのため、一つの指標だけに頼らず、食事全体のパターンを見ることが大切だとしています。必要なナトリウムやエネルギーの量が年齢や活動量、健康状態によって異なる点も挙げられています。

それでも研究チームは、栄養表示のナトリウムとエネルギーを比べ、1 mg/kcalを目安にするこの方法が、ナトリウムの少ない商品を選びやすくする教育的な道具になりうると結論づけています。一般の人がブランドを比べたり、医療・栄養の専門家が置き換える食品を提案したりする場面での活用を想定しており、著者らは、さまざまな集団や食生活での有効性や受け入れやすさをさらに評価すべきだとも述べています。いつもの栄養表示の2つの数字を見比べるだけで塩分の多さの見当をつけられる、という発想を示した研究です。

著者:Helene Power(Friedman School of Nutrition Science and Policy, Tufts University, Boston, MA, United States. [email protected])、Yuezhong Li(Friedman School of Nutrition Science and Policy, Tufts University, Boston, MA, United States)、Yutong Chen(Friedman School of Nutrition Science and Policy, Tufts University, Boston, MA, United States. [email protected])

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Helene Power, Yuezhong Li, Yutong Chen. Sodium density, a new approach to assess salt in packaged foods. Journal of Public Health Policy 2026-09-21. DOI: 10.1057/s41271-026-00666-1. 原著ライセンス:CC BY.