著者の所属・活動拠点の国は、中国です。
掲載誌:Journal of Food Composition and Analysis
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
なぜ包装食品のナトリウムを調べたのか
食塩の主成分であるナトリウムのとりすぎは、循環器疾患などの慢性疾患と関係する食事上の大きなリスク要因とされています。研究チームによると、中国では家庭で料理に加える塩は減ってきた一方、外食や加工食品からの摂取が増え、成人の大半が推奨上限を超えてナトリウムをとっている状況が続いています。なかでも、袋や箱に入れて売られる包装食品は主要な摂取源の一つになっています。
こうした状況を受け、中国では食品業界向けの減塩ガイドラインが、食品の種類ごとにナトリウム量の平均値と上限値の自主目標を定め、2027年と2030年に向けて段階的な引き下げを求めています。世界保健機関(WHO)も2024年に、食品の種類ごとに100グラムあたりのナトリウム量の上限を示した「世界ナトリウム・ベンチマーク」の第2版を公表しています。
研究チームは、上海を代表地点とする長江デルタ地域で販売されている包装食品のナトリウム量を調べ、現状が中国の2027年・2030年目標やWHOのベンチマークとどれだけ離れているかを明らかにすることを目的としました。
8,711品目の栄養成分表示を集めて分類
調査は2025年7月から10月に行われました。ネットスーパーなどのオンライン販売、大型スーパーやコンビニエンスストアの店頭、さらに地元企業から直接提供された製品データを合わせて、計8,711品目の包装食品の情報を集めています。ナトリウム量は実験室で測ったものではなく、各製品の栄養成分表示から読み取り、100グラムあたりにそろえて比較しました。
集めた製品は、中国のガイドラインとWHOのベンチマークという二つの分類の枠組みに当てはめ、食品の種類ごとに平均値や中央値(並べたときの真ん中の値)、目標値を超えた製品の割合を算出しました。また、エネルギー(カロリー)に対してナトリウムがどれだけ多いかを示す指標も計算しています。この指標が1を超えると、基準となる1日の摂取量の比率と比べて、カロリーの割に多くのナトリウムを含む食品であることを意味します。
主な結果:目標に届かない食品群と、すでに達成している食品群
集めた製品のうち64.5%(5,616品目)は、中国のガイドラインかWHOのベンチマークの少なくとも一方で減塩の対象とされる種類に当たりました。これらの対象製品では、カロリーあたりのナトリウムの多さを示す指標の中央値が1.80で、対象外の製品の0.27を大きく上回りました。対象製品の81.5%は、100グラムあたり120ミリグラムを超え、「低ナトリウム」などの表示ができない水準でした。
中国の目標と比べると、平均値が2027年の目標を上回った食品の種類は43種類中20種類(46.5%)で、より厳しい2030年の目標では26種類(60.5%)に増えました。平均値と2027年目標との差が大きかったのは、複合調味料、加工乾燥水産物、味付きの即席麺、ハム、ソーダクラッカーなどでした。また、2027年の上限値を超える製品の割合が30%を上回ったのは、ソーダクラッカー(76.7%)、その他の冷凍の米・小麦粉製品(44.1%)、冷凍の蒸しパン類(39.7%)、オーツ麦製品(37.8%)、味付きの即席麺(37.4%)、パン(33.7%)の6種類でした。一方で、しょうゆや中華風菓子、ソーセージなど17種類(約39.5%)は、すでに平均値が2030年目標を満たしていました。
WHOのベンチマークと比べると、結果はさらに厳しいものでした。基準が設けられている41種類のうち27種類(65.9%)で、半数を超える製品が基準値を上回っていました。超過の割合が最も高かったのは、ディップやスプレッド類(96.7%)、その他のアジア風ソース(95.1%)、魚の缶詰(90.6%)、生ソーセージ(90.1%)、味付けされた乾燥タイプの麺・ご飯類(87.9%)です。反対に、焼き菓子・蒸し菓子、濃縮タイプのだし・スープの素、プレッツェルの3種類は、超過の割合が5%未満にとどまりました。
研究チームは過去の国内調査とも比較しています。2017〜2022年の全国データと比べると、比較できた34種類のうち28種類で中央値が同程度か低く、2021年の北京の調査と比べて低ナトリウムの基準を満たす製品の割合も高くなっていました。ただし、ソーダクラッカー、ナッツ、パン、オーツ麦製品、即席麺、複合調味料では全国データより中央値が高い結果でした。
この研究が示すこと
著者らは、この地域の包装食品のナトリウム量には緩やかな改善がみられるものの、WHOのベンチマークとは依然として大きな差があるとまとめています。そのうえで、よく食べられ、かつ目標超過の割合が高い主食やスナック、たとえば即席麺、ソーダクラッカー、パン、オーツ麦製品の配合見直しを優先すべきだと提言しています。
また、ソース類のように幅広い製品をひとまとめにした分類では、塩分の高い製品が平均値の中に埋もれてしまうことがあるとして、分類の定義を細かくし、分類の手引きを整備することも勧めています。なお、この調査は長江デルタ地域に限られ、ナトリウム量は表示値にもとづくため、他地域への当てはめや表示の誤りには注意が必要だと著者ら自身が述べています。
一つの地域で大量の包装食品を国内とWHOの二つの物差しで同時に測ったことで、どの食品で減塩が進み、どこに課題が残るのかが具体的に見えてきた研究といえます。
著者:Sun Zhuo(Division of Health Risk Factors Monitoring and Control, Shanghai Municipal Center for Disease Control and Prevention, Shanghai, 200336, China)、Liping Shen(Division of Health Risk Factors Monitoring and Control, Shanghai Municipal Center for Disease Control and Prevention, Shanghai, 200336, China)、Wenqing Ma(Division of Health Risk Factors Monitoring and Control, Shanghai Municipal Center for Disease Control and Prevention, Shanghai, 200336, China)、Zhengyuan Wang(Division of Health Risk Factors Monitoring and Control, Shanghai Municipal Center for Disease Control and Prevention, Shanghai, 200336, China)、Wei Lu(School of Public Health, Shanghai University of Traditional Chinese Medicine, Shanghai, 201203, China)、Qi Song(Division of Health Risk Factors Monitoring and Control, Shanghai Municipal Center for Disease Control and Prevention, Shanghai, 200336, China)、Shupeng Mai(Division of Health Risk Factors Monitoring and Control, Shanghai Municipal Center for Disease Control and Prevention, Shanghai, 200336, China)、Zehuan Shi(Division of Health Risk Factors Monitoring and Control, Shanghai Municipal Center for Disease Control and Prevention, Shanghai, 200336, China)、Xinyi Lu(School of Public Health, Shanghai University of Traditional Chinese Medicine, Shanghai, 201203, China)、Jiajie Zang(Division of Health Risk Factors Monitoring and Control, Shanghai Municipal Center for Disease Control and Prevention, Shanghai, 200336, China)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Sun Zhuo, Liping Shen, Wenqing Ma, et al. Sodium level in sampled prepackaged foods from the Yangtze River Delta: Benchmarking against Chinese and WHO targets. Journal of Food Composition and Analysis 2026-09-18. DOI: 10.1016/j.jfca.2026.109531. 原著ライセンス:CC BY.