著者の所属・活動拠点の国は、ボスニア・ヘルツェゴビナです。
掲載誌:Biomolecules and Biomedicine
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
妊娠のかなり早い時期に生まれた「極早産児」は、生まれてしばらくは消化管が未熟なため、栄養の多くを点滴(静脈栄養)で受け取ります。その後、胃や腸へ入れるミルクなどの経腸栄養を少しずつ増やし、点滴を減らしていきます。この切り替えの時期に十分なエネルギーやたんぱく質がとれているかは、赤ちゃんの成長に関わる関心事です。
研究チームは、この「静脈栄養から経腸栄養への移行期」の栄養摂取量と、経過の中で見られる成長の停滞(成長が期待される経過より遅れること)との関係を調べました。ここで紹介するのは、論文の補足資料で示された、移行期の栄養摂取量の比較結果です。
何を比べたか
研究チームは、成長の停滞が見られた赤ちゃんのグループと、見られなかったグループに分け、移行期の栄養摂取量を比べました。比較は、経腸栄養の量が体重1キログラムあたり1日30ミリリットルから160ミリリットル未満になるまでを、10ミリリットルごとの13の段階に区切って行われています。
調べた指標は三つです。点滴と経腸栄養を合わせた体重1キログラムあたり1日の総エネルギー量、同じく体重1キログラムあたり1日の総たんぱく質量、そしてエネルギー100キロカロリーあたりに含まれるたんぱく質の量を示す「たんぱく質・エネルギー比」です。各段階で比較に加わった赤ちゃんの数は、グループごとにおおむね60〜80人台で、段階によって顔ぶれが完全に同じではありません。値は中央値(データを順に並べたときの真ん中の値)で示されています。
主な結果
総エネルギー量は、経腸栄養が増えるにつれて両グループとも上昇し、最初の段階ではおよそ75キロカロリー、最後の段階ではおよそ124〜125キロカロリー(いずれも体重1キログラムあたり1日)でした。どの段階でも、グループ間にはっきりした差は報告されていません。
たんぱく質については、一部の段階で成長の停滞が見られたグループの値がやや低い傾向がありました。たとえば経腸栄養が80〜90ミリリットル未満の段階では、総たんぱく質量の中央値が停滞グループで体重1キログラムあたり1日3.5グラム、非停滞グループで3.8グラムでした。たんぱく質・エネルギー比も、いくつかの段階で停滞グループがわずかに低い値でした。最終段階では、総たんぱく質量は両グループとも体重1キログラムあたり1日4.2グラム、たんぱく質・エネルギー比は両グループとも100キロカロリーあたり3.4グラムとなっています。
ただし著者らは、これらを探索的な比較と位置づけています。3つの指標×13段階の計39回の比較を行ったため、偶然の差を見誤らないよう補正(ボンフェローニ補正)をかけたところ、統計的に有意な差として残ったものはありませんでした。
この結果が示すこと
補足資料の比較からは、点滴から経腸栄養への移行期において、成長の停滞が見られた赤ちゃんとそうでない赤ちゃんの間で、エネルギー摂取量に目立った違いは見られませんでした。たんぱく質に関しては一部の段階でわずかな差の傾向がうかがえたものの、多数の比較を考慮すると確かな差とはいえない、という結果です。移行期の栄養の中身を段階ごとに細かく追った記録として、成長と栄養の関係を考えるうえでの手がかりを示しています。
原著論文の著者・所属:Melika Melunović(Department of Gastroenterohepatology, Nutritional Disorders and Milk Preparation Unit, Pediatric Clinic, Clinical Center of the University of Sarajevo, Sarajevo, Bosnia and Herzegovina)、Nedim Strukar(Department of Gastroenterohepatology, Nutritional Disorders and Milk Preparation Unit, Pediatric Clinic, Clinical Center of the University of Sarajevo, Sarajevo, Bosnia and Herzegovina)、Sabina Terzić(Department of Neonatology and Neonatal Intensive Care, Pediatric clinic, Clinical Center of the University of Sarajevo, Sarajevo, Bosnia and Herzegovina)、Mirza Halimić(Department of Cardiology, Pediatric clinic, Clinical Center of the University of Sarajevo, Sarajevo, Bosnia and Herzegovina)、Emina Vukas(Department of Neurology, Pediatric clinic, Clinical Center of the University of Sarajevo, Sarajevo, Bosnia and Herzegovina)、Mirela Lisičić-Konaković(Department of Allergology, Rheumatology, and Clinical Immunology, Pediatric clinic, Clinical Center of the University of Sarajevo, Sarajevo, Bosnia and Herzegovina)、Sunita Palo(Department of Neonatology and Neonatal Intensive Care, Pediatric clinic, Clinical Center of the University of Sarajevo, Sarajevo, Bosnia and Herzegovina)、Lamija Hukić Fetahović(Department of Gastroenterohepatology, Nutritional Disorders and Milk Preparation Unit, Pediatric Clinic, Clinical Center of the University of Sarajevo, Sarajevo, Bosnia and Herzegovina)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Melika Melunović, Nedim Strukar, Sabina Terzić, et al. Nutrient intake during the parenteral-to-enteral transition and longitudinal growth faltering in very preterm infants. Biomolecules and Biomedicine 2026-10-26. DOI: 10.17305/bb.2026.15033. 原著ライセンス:CC BY.