著者の所属・活動拠点の国は、マレーシア、インドネシアです。

掲載誌:Discover Public Health

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

都市化や生活の変化に伴い、手軽に食べられるファストフードは多くの国で日常の食事の一部になりつつあり、インドネシアでも消費が広がっていると著者らは述べています。ファストフードは一般に飽和脂肪、糖分、塩分、エネルギーが多く、食物繊維やビタミン、ミネラルが少ないとされ、これまで肥満や心血管疾患などとの関係が研究されてきました。近年は、食事の質と心の健康との関係を扱う「栄養精神医学」と呼ばれる分野でも、食事と抑うつ症状の関係が注目されています。

ただし、食事と抑うつの関係を示す研究の多くは米国、中国、イランなど他国のもので、食文化や社会経済状況が異なるインドネシアにそのまま当てはめることはできません。また、インドネシア国内の先行研究は大学生や青年など特定の集団に限られることが多かったといいます。そこで研究チームは、15歳以上の幅広い人々を対象に、年齢や性別、教育、就労状況、体格といった特徴を考慮したうえでも、ファストフードを食べる頻度と抑うつ症状の間に関連がみられるかを調べました。

何をどのように調べたか

研究チームは、インドネシアで1993年から長期にわたり実施されてきた大規模な家族生活調査(IFLS)のうち、2014年に行われた第5回調査のデータを用いました。対象は調査時点で15歳以上であり、必要な質問項目にすべて回答していた3,402人で、年齢は15〜84歳、平均は約31歳でした。

抑うつ症状は、気分の落ち込みなどの頻度を尋ねる10項目の質問票(CES-D)で測られ、合計点は10〜40点の範囲で、点数が高いほど抑うつ症状が強いことを示します。ファストフードについては、過去7日間のうち何日食べたかを0〜7日で尋ねた回答が使われました。この指標は食べた日数のみを表し、食べた物の種類や量、栄養成分は含まれていません。

分析では、まず年齢、性別、教育歴、収入を伴う仕事の有無、体格指数(BMI)を統計モデルに入れ、次にファストフードを食べる日数を加えて、抑うつ症状の点数のばらつきをどれだけ追加で説明できるかを確かめました。

主な結果

参加者の抑うつ症状の平均点は約20点で、著者らは全体として低〜中程度の水準だったとしています。ファストフードを食べた日数の平均は週約1.8日で、多くの人は比較的まれにしか食べていませんでした。

分析の結果、年齢などの特徴を考慮したうえでも、ファストフードを食べる日数が多い人ほど抑うつ症状の点数がやや高いという、統計的に意味のある関連がみられました。統計モデル上では、食べる日数が週に1日多いごとに、点数が約0.14点高い関係に相当します。ただし、関連の大きさはごく小さいものでした。年齢などの特徴だけで点数のばらつきの4.3%が説明され、ファストフードの頻度を加えても説明できる割合は0.1ポイント増えただけでした。

このほか、年齢が若い人ほど抑うつ症状の点数が高い傾向があり、収入を伴う仕事をしている人は、そうでない人より点数が高い傾向がみられました。一方、BMI、教育歴、性別については、最終的なモデルで統計的に意味のある関連は認められませんでした。

結果が示す意味

著者らは、この研究はある一時点の状態を調べた横断研究であるため、ファストフードが抑うつ症状を引き起こすとは言えず、どちらが先に生じたかも判断できないと強調しています。抑うつ症状のある人が気分を紛らわせるためにファストフードを多く食べるという、逆向きの関係の可能性も残ります。また、回答はすべて自己申告であり、収入や睡眠、身体活動など分析に含まれていない要因が影響している可能性もあります。調査の抽出方法を反映する重み付けを分析に用いていない点も、著者らは限界として挙げています。

そのうえで研究チームは、ファストフードを食べる頻度も抑うつ症状も全体として低い集団でさえ、両者の間に小さな関連がみられたことを報告しています。著者らは、この結果だけを根拠にファストフードを減らす取り組みが抑うつを防ぐとは言えないとしつつ、インドネシアの人々の心の健康を理解するうえで、食行動は社会的・人口学的な要因などと並んで考慮すべき一つの側面になりうると位置づけています。

著者:Wildan Haru Pradani(Department of Psychology, Faculty of Human Development, Universiti Pendidikan Sultan Idris, Tanjong Malim , Malaysia)、Anindra Guspa、Amin Akbar(Faculty of Psychology and Health, Universitas Negeri Padang, Padang, Indonesia)、Aflah Zakinov Irta(Faculty of Psychology and Health, Universitas Negeri Padang, Padang, Indonesia)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Wildan Haru Pradani, Anindra Guspa, Amin Akbar, et al. Association between the frequency of fast food consumption and depressive symptoms in Indonesia: a cross-sectional study. Discover Public Health 2026-10-15. DOI: 10.1186/s12982-026-03163-8. 原著ライセンス:CC BY.