この研究は、ルーマニアの研究機関の研究論文です。
掲載誌:Foods
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
ジュースやワインを製造すると、皮や種などが混ざった固形の残りかす(ポマス、搾りかす)が大量に生じます。著者らによれば、こうした搾りかすにはポリフェノールや食物繊維、有機酸などの成分が含まれており、単に廃棄するのではなく食品の材料として活かす道が探られてきました。
この研究で研究チームが取り上げたのは、フルーツロール(フルーツレザー)と呼ばれる食品です。果物のピューレを薄く広げて乾燥させたシート状の菓子で、水分が少なく水分活性(食品中の水の自由さを示す値)も低いため保存性が高いとされます。論文では、搾りかす粉末をパンや乳製品、菓子に加えた研究は多い一方、フルーツロールへ加えた例は限られており、りんごとバナナを組み合わせた土台に搾りかすを入れた検討はとくに少ないと述べられています。
そこで著者らは、赤ワイン用ブドウ(ルーマニアの品種フェテアスカ・ネアグラ)とシーバックソーン(サジー)の搾りかすを凍結乾燥して粉にし、りんごとバナナのピューレに加えた乾燥フルーツロールを試作しました。合成の着色料や保存料、増粘のための添加物を使わず、はちみつとレモン果汁だけで味と色を整える「クリーンラベル」の配合を目指した点、そして官能評価(人が食べて評価すること)で受け入れられる基本のレシピを確立することが、この初期段階での主眼だったと説明されています。
何をどう調べたか
搾りかすは冷凍したものを凍結乾燥機で乾かし、粉砕・ふるい分けして0.500mm以下の細かい粉末にしました。フルーツロールは、皮と種を除いたりんごとバナナを2対1の重量比で用い、はちみつ2%、レモン果汁2%、搾りかす粉末3%を加えて均一に混ぜ、厚さ約4.5mmに広げて60℃で6時間乾燥させています。比較のため、搾りかすを入れない対照品も同じ条件で作られました。なお、りんごは見た目の傷などで市場に出しにくいものを使い、取り除いた皮は捨てずに乾燥させて有機肥料の原料に回す想定だったと述べられています。
測定したのは、水分、水分活性、pH、滴定酸度(酸の量)、総ポリフェノール量、総カロテノイド量、そしてCIE L*a*b*という色の数値です。官能評価は二段階で、まず50名へのアンケートで製品の第一印象を一語で答えてもらう調査を行い、別に学生20名の非訓練パネルが、外観・色・味と香り・甘さ・食感と全体的な満足度を7点尺度(7が「非常に好き」)で評価しました。試料は3桁の乱数で符号化し、提示順を無作為化する盲検条件がとられています。
報告された主な結果
搾りかす粉末そのものの比較では、サジー由来の粉末はブドウ由来より水分が低く、pHが低く酸度が高いこと、総ポリフェノール量も有意に高いことが報告されました。色は、サジー粉末が明るく黄色みの強い profile(明度68.04、黄色み53.59)、ブドウ粉末は暗く赤みの強い profile(明度29.47、赤み30.66)でした。
フルーツロールはいずれも同じ条件で乾燥したため水分15.19〜16.10、水分活性0.48〜0.49と近い値になり、著者らは0.50未満という低い水分活性が製品の安定性の面で重要だと述べています。ただし、この研究では保存試験そのものは行っていないと明記されています。pHは対照の5.97に対し、ブドウ添加で5.63、サジー添加では5.05まで下がりました。
成分では、カロテノイドが対照の乾燥重量1gあたり5.92mgから、ブドウ添加で9.12mg、サジー添加で17.05mgへ増加。総ポリフェノールは対照の59.62mg(没食子酸相当/g乾燥重量)から、ブドウ添加86.54mg、サジー添加95.77mgへ増えたと報告されています。色については、サジー添加が黄色みを高めて色差ΔE*は9.64、ブドウ添加は紫系へ大きく変化してΔE*は36.57となりました。
官能評価では、外観と色でブドウ添加品が最も高い評点を得ました。サジー添加品は味と香りが好ましく評価された一方、サジー特有の酸味が甘さの感じ方に影響したとされます。ブドウ添加品の味と香りは対照よりやや低く、著者らは搾りかす由来の渋みや苦味が関係すると説明しています。甘さと食感は対照が最も高く、搾りかす添加でやや下がりました。全体的な満足度は、対照6.05、サジー添加6.15、ブドウ添加6.20と、いずれも6点を超えて「やや好き」寄りの水準でした。アンケートでは「おいしい」「興味深い」といった語が最も多く挙げられたとされています。
この研究が示すこと
著者らは、飲料産業の副産物である搾りかすを凍結乾燥して加えることで、ポリフェノールとカロテノイドが対照より多いフルーツロールが作れ、同時に搾りかすが天然の着色材としても働いたと結論づけています。人工の保存料や着色料を使わない配合で、評価者の受容も損なわれなかったことが、この初期段階での成果として報告されました。
一方で論文自身が、機器による食感の詳細な測定、長期保存中の品質維持、微生物学的な安定性の評価は今後の課題として残っていると述べています。食品加工で出る残りかすを、傷のある果実とともに食品の材料として使い直す道筋を、実際の試作品で示した研究だと読み取れます。
著者:Luminița Grosu(Department of Chemical and Food Engineering, Faculty of Engineering, “Vasile Alecsandri” University of Bacău, 157, Calea Mărăşeşti, 600115 Bacău, Romania)、Oana‐Irina Patriciu(Department of Chemical and Food Engineering, Faculty of Engineering, “Vasile Alecsandri” University of Bacău, 157, Calea Mărăşeşti, 600115 Bacău, Romania)、IRINA-CLAUDIA ALEXA(Department of Chemical and Food Engineering, Faculty of Engineering, “Vasile Alecsandri” University of Bacău, 157, Calea Mărăşeşti, 600115 Bacău, Romania)、Adriana-Luminița Fînaru(Department of Chemical and Food Engineering, Faculty of Engineering, “Vasile Alecsandri” University of Bacău, 157, Calea Mărăşeşti, 600115 Bacău, Romania)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Luminița Grosu, Oana‐Irina Patriciu, IRINA-CLAUDIA ALEXA, et al. Development, Physicochemical, and Sensory Evaluation of Naturally Formulated Dehydrated Fruits Rolls Enriched with Sea Buckthorn and Grape Freeze-Dried Pomace Powders. Foods 2026-08-28. DOI: 10.3390/foods15173059. 原著ライセンス:CC BY.