炭酸飲料やスポーツドリンク、フルーツドリンクなど、砂糖が添加された飲料(Sugar-Sweetened Beverages、SSB)は、むし歯や酸による歯の表面の損傷(酸蝕症)と関連することが知られています。それだけでなく、2型糖尿病や肥満といった全身の健康問題との関わりも指摘されています。英国では11〜18歳がSSBの消費量が最も多い年代とされ、ある全国調査では平均で1日あたり124ml、多い場合には606mlもの加糖ソフトドリンクを摂取していたと報告されています。SSBは子ども・若者の1日の総カロリー摂取のうち10〜15%を占めるとも言われ、社会経済的に厳しい層ほど消費量が多い傾向も知られています。こうした背景から、SSBの摂取を減らすことは公衆衛生上の課題となっており、英国では清涼飲料業界への課税強化や、高カフェインエナジードリンクの未成年への販売禁止について国レベルの議論も行われてきました。今回紹介する研究は、こうした社会全体への働きかけ(アップストリーム対策)だけでなく、歯科医院という現場での個別の関わり(ダウンストリーム対策)に注目し、歯科医療専門職(Oral Health Professionals、OHP)が若者のSSB摂取を減らす役割を担えるのかを、当事者たちの生の声から探ったものです。

誰に、どのように聞いたのか

研究チームは、11〜16歳の子ども・若者18名、その保護者9名(うちインタビューが実施できたのは8名)、そして一般開業歯科・小児歯科・矯正歯科で働く歯科医療専門職11名の合計38件について、半構造化インタビューを実施しました。専門職の内訳は歯科衛生士や歯科治療士を含む歯科助手4名、歯科医師3名、歯科衛生士・歯科治療士2名、コンサルタントや専門医2名で、一次医療機関8名・二次医療機関3名から集まりました。インタビューは英国のイースト・ミッドランズ地方と南ヨークシャー地方の歯科診療所や病院を通じて8か月かけて集められ、対面またはオンライン(Google Meet)で行われ、1回あたり15〜55分(平均30分)でした。対象の子ども・若者は性別(男子9名・女子9名)、年齢層(11〜13歳9名・14〜16歳9名)、居住地域の社会経済的な状況(相対的に厳しい地域9名・そうでない地域9名)がほぼ均等になるよう意図的に選ばれています。分析には、行動変容の障壁や促進要因を整理する「Theoretical Domains Framework(理論的領域枠組み)」という考え方を用いてインタビューの質問項目が組み立てられ、得られた発言はフレームワーク分析という手法で整理されました。

浮かび上がった4つのテーマ

分析の結果、歯科医療専門職の役割をめぐって4つのテーマが見えてきました。第一に、専門職はコーラなどの伝統的なSSBやスポーツ・エナジードリンクについては把握していたものの、バブルティーやアイスコーヒーといった、若者の間で人気の比較的新しいSSBについては問診で尋ねる発想自体がなかったと語られました。専門職が主に参照していたのは英国の指針「Delivering Better Oral Health」で、これに加えて口腔保健関連の団体からの情報を活用していたとのことです。第二に、味の好み、友人関係、そしてソーシャルメディアがSSB摂取に影響する要因として挙がりました。ある16歳の参加者は友人と自転車で出かけた際に立ち寄った店でスポーツドリンクを買うと話し、別の参加者は「みんな飲んでいるから」という理由で保護者が時々許可してしまうと語っています。専門職側は、思春期の患者でむし歯や歯の表面の損傷が急激に増える様子を見てきたと述べています。第三に、子ども・若者と保護者はいずれも、歯科医療専門職がSSBの影響について助言する立場にふさわしいと捉えており、実際に助言を受けた記憶がある人もいました。歯科助手が会話に加わることで、保護者や子どもに違った角度から言葉が届くという「多職種連携」の価値も指摘されています。ただし、専門職は口腔への影響については話しやすい一方、肥満や糖尿病など全身の健康影響については、患者を傷つけたり苦情を受けたりすることへの懸念から、踏み込みにくいと感じている様子もうかがえました。

行動を変えることの難しさ

第四のテーマは、実際に若者の行動を変える難しさです。専門職の中には、歯並びの美しさ(「インスタ映えする笑顔」という表現も使われました)や、SSBを買わずに浮いたお金を友人との外出や化粧品・靴などに使えるという発想を伝える工夫をしている人もいました。矯正治療を控えている、あるいは治療中の若者には、装置の周りが脱灰しやすくなることを伝えるのが効果的だと感じられていた一方、抜歯や根管治療といった将来のリスクを「脅し文句」のように使うことには専門職自身が慎重な姿勢を示していました。思春期は自分の食生活を自分で決め始める時期であり、友人からの影響が強く、将来の健康リスクを自分事として感じにくい年代でもあるため、行動変容の働きかけが特に難しいと多くの専門職が「もどかしさ」を口にしています。加えて、診療時間の制約が大きな壁として繰り返し語られ、英国の公的医療制度(NHS)における歯科診療の報酬の仕組みが、病気を予防するより治療することに対して有利に働いている点も課題として挙げられました。

この研究の位置づけと注意点

著者らは、一次・二次医療双方の専門職や、年齢・性別・地域の社会経済状況が異なる子ども・若者を幅広く含めた点を本研究の強みとして挙げています。一方で、調査対象がイースト・ミッドランズと南ヨークシャーという2つの地域に限られており、他地域にそのまま当てはまるとは限らない点、歯科医療専門職の参加者が11名にとどまり、多様な意見を完全には捉えきれていない可能性がある点を限界として述べています。さらに、参加者全員が歯科医療の現場を通じて募集されているため、ふだん歯科を受診していない子ども・若者の見方は含まれておらず、著者らは今後そうした層も対象にした研究が必要だとしています。今回の結果は、SSB摂取と口腔の健康との関連が広く知られている中で、歯科医療専門職がその削減を支援できる立場にあることを示唆するものであり、著者らは今後、子ども・若者や保護者、専門職と共同で設計した、根拠に基づく行動変容プログラムを歯科の診療現場向けに開発・検証していく必要があると結論づけています。この研究はあくまで一つの質的研究であり、特定の助言方法がSSB摂取を実際に減らす効果を証明したものではない点には留意が必要です。

今回の論文情報の範囲では、日本の研究機関や日本の食習慣・飲料に関する言及は含まれていません。

※本記事は原著論文の翻訳ではなく、研究内容を独自に解説したものです。参考文献:Samantha Watt, Jenifer Li, Catherine Brierley, et al. Oral healthcare professionals' role in reducing young people's sugar-sweetened beverage consumption: a qualitative study. ブリティッシュ・デンタル・ジャーナル (2026). DOI: 10.1038/s41415-026-9956-4. 原著ライセンス: cc-by.