掲載誌:JMIR Pediatrics and Parenting

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

なぜこの研究が行われたのか

小さな子どもの食習慣は人生の早い時期に形づくられ、その後も続きやすいことが知られています。そして子どもの食べ方は、親の食習慣や、食事の場での親のかかわり方に影響を受けます。研究チームが着目したのは「レスポンシブ・フィーディング(応答的な食事支援)」と呼ばれる考え方です。これは、子どもの「おなかがすいた」「もうおなかがいっぱい」というサインを親が読み取って適切に応じ、自分自身も健康的な食べ方の手本になるという、根拠にもとづいたアプローチです。無理に食べさせようとせず、いろいろな食べものに繰り返し、穏やかな雰囲気のなかで出会わせることを重視します。

しかし親にとって、子どもの食事は悩みの種になりがちです。情報を実生活にどう落とし込めばよいのか分かりにくく、インターネットやソーシャルメディアでは食い違う助言や誤った情報にも出会います。子どもが新しい食べものを警戒したり、好き嫌いを示したりするのはよくあることですが、それが心配につながり、無理に食べさせる、受け入れられる食べものだけを出すといった対応を招くこともあります。論文は、親の食事のかかわり方は公的な食事ガイドラインよりも、家族や友人といった身近な仲間からより強く影響を受けるという先行研究も紹介しています。

スウェーデンでは、地域の子ども保健サービス(CHS)が子育てと食事の支援を担っていますが、プログラム全体が多岐にわたるため、栄養についてひとりひとりに向き合って話す時間は限られています。一方オーストラリアでは、親自身が管理栄養士主導のワークショップで学び、平易な言葉で書かれたオンライン情報を仲間と共有していく「PICNIC」というプログラムが進められてきました。研究チームは、このオーストラリア発のプログラムがスウェーデンの親にも受け入れられ、実施可能なのかを確かめようとしました。

何をどう調べたか

研究チームは「PICNIC Sweden」という試行研究(フィージビリティ・スタディ)を行いました。比較する対照群を置かない単一群の設計で、数量データと聞き取りの両方を組み合わせています。データは2023年10月から2024年2月にかけて集められ、アンケート、ソーシャルメディアの利用状況の記録、そして一対一の聞き取りから構成されました。

対象となったのは、生後0〜24か月の子どもをもつ親や主な養育者です。スウェーデンのスールムランド地域の26か所すべての子ども保健センターに募集資料が配られ、さらに参加者から知人へと広がる形でも参加が呼びかけられました。関心を示した80人のうち47人が正式に参加し、事前アンケートに回答して全10回のワークショップのいずれかに出席しました。

介入の中身は二つです。ひとつは、家族支援の経験が豊富な管理栄養士が担当する2時間のオンライン・ワークショップで、離乳食の進め方と応答的な食事支援を扱いました。内容はオーストラリア版と同じ考え方を保ちながら、スウェーデンの食事ガイドラインと現地の食文化に合わせて翻訳・調整されています。もうひとつは、研究チームが運営する非公開のFacebookグループです。ここでは週に3件ほどの投稿が共有され、親が自分から質問を投稿すると管理栄養士が答え、それをグループの全員が読めるようにしていました。参加者はパートナーや友人をグループに招くこともできました。

評価のために、ワークショップから2か月後に追跡アンケートが送られ、43人(91.5%)が回答しました。さらに2〜3か月後には15人への半構造化インタビューが電話で行われ、性別、学歴、出生国、子どもの数や年齢などが幅広く含まれるように参加者が選ばれました。インタビューの記録は帰納的な主題分析にかけられ、複数の研究者が独立して符号づけを行ったうえで議論を重ねています。

参加者の多くは母親(47人中46人)で、スウェーデン生まれが44人、大学の学位をもつ人が43人でした。子どもの年齢は生後6〜12か月が22人、0〜6か月が17人と、離乳食が始まる時期に集中していました。参加のきっかけは、友人や家族からが24人、子ども保健センターや看護師からが15人、ソーシャルメディアが8人でした。

報告された主な結果

追跡アンケートでは、参加した親の満足度が高かったと報告されています。ワークショップが役立つ助言や情報をくれたという項目には、43人全員が「そう思う」または「強くそう思う」と答え、オンラインでの参加がうまく機能したという項目も同様でした。PICNICが子どもの食事に関する情報と支援を共有するのに適しているという項目、提供された情報を事実として正しいと感じるという項目でも、否定的な回答はありませんでした。

親としての自信についても変化が報告されています。「子どもに健康的な食習慣をうながせると、どのくらい自信があるか」を0から10で尋ねる指標(妥当性が確認された尺度の項目)の平均点は、両時点のデータがそろった42人で、開始時の7.69から追跡時の8.17へと上がりました。研究チームの報告によれば、この平均0.48点の増加は統計的に有意でした(95%信頼区間0.11〜0.84、P=.01)。ここで言う「統計的に有意」とは、観察された差が偶然のばらつきだけでは説明しにくいという意味であり、効果の大きさそのものを示すものではありません。

知識や気づきを得たと感じた内容としては、新しい食べものをどう導入するか、食事の場面を実際にどう切り抜けるか、出されたものを食べたがらない子どもにどう応じるか、といった実践的な項目で「強くそう思う」の回答が多く集まりました。また参加者は、PICNICで得た情報を子どものもうひとりの親(33人)、友人(25人)、家族(24人)へと共有していました。招待される時期については、30人が生後3〜4か月ごろが適切だと考えていました。

Facebookグループの使われ方には特徴がありました。ワークショップ後、グループは参加者や招かれたパートナー・友人を含む60人に成長し、4か月間に研究チームからの投稿52件と、親が投稿した質問17件が共有されました。ただし「いいね」やコメントといった目に見える反応は少なく、投稿あたりの「いいね」は平均2件でした。一方、閲覧という静かなかかわりはより多く、チームの投稿は平均39回、親が立てた質問の投稿は平均47回読まれていました。よく読まれたのは、どんな食べものを出すか、水をいつどのように与えるか、家族そろっての食事、「親が用意し、子どもが決める」という考え方を扱った投稿でした。否定的なコメントを受けた経験は、40人が「ない」と答えています。

インタビューの分析からは3つのテーマが導かれました。論文で紹介されているうち、ひとつは子どもの食べさせ方への自信です。親たちは内容を分かりやすく実践しやすいと感じ、子どもが自分で食べる力への信頼が増したと語りました。ピューレや市販の瓶詰めにとどまらず、つかんでかじれる大きさに切ってみる勇気が出た、子どもが食べている間に台所を片づけて回るのをやめて一緒に座るようになった、といった具体的な変化が報告されています。管理栄養士や栄養士が答えてくれるという点が情報の信頼性を支え、だからこそ祖父母や友人にも自信をもって伝えられたという声もありました。もうひとつのテーマは、共同の「安全な場」としての役割です。ほかの親の質問を見聞きできることで、自分だけが迷っているのではないと分かり、心強く感じたと語られています。

この報告が示すこと

この研究は、対照群のない小規模な試行であり、参加者の多くは大学を卒業したスウェーデン生まれの母親でした。効果の大きさを確かめることが目的ではなく、オーストラリアで育ったプログラムがスウェーデンという別の文脈で実施でき、親に受け入れられ、目的に合っているかを見きわめることが狙いでした。

報告からうかがえるのは、専門家が根拠にもとづく助言を平易な言葉で届け、しかも親同士がお互いの疑問を目にできる場をつくると、親が食事の時間に向き合う手がかりになりうる、ということです。「いいね」の少なさと閲覧の多さの対比は、こうしたオンラインの場での支えが、活発なやりとりという形をとらなくても届いている可能性を示しています。子どもの食事をめぐる不安が最も高まる離乳食の入口で、親が孤立せずに信頼できる情報にたどりつけるかどうか――この研究は、そこに手を差しのべる方法のひとつを、実際に試したうえで描き出しています。

著者:Kerith Duncanson、Anna Jörnvi、Sara Ask、Malin Högman、Erica Belestam Vikman、Richard Ball、Maria Henström

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Kerith Duncanson, Anna Jörnvi, Sara Ask, et al. Parents’ Experiences From Participating in an Online Peer Support Child Feeding Intervention: The “PICNIC Sweden” Explanatory Sequential Mixed Methods Feasibility Study. JMIR Pediatrics and Parenting 2026-09-22. DOI: 10.2196/93565. 原著ライセンス:CC BY.