著者の所属・活動拠点の国は、ボツワナです。
掲載誌:Frontiers in Food Science and Technology
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
屋台で売られる食べ物は、手頃な値段で手軽に食事ができる身近な存在です。一方で、その衛生面には不安が残るとされています。研究チームは、ボツワナの首都ハボローネに隣接する郊外地域トロクウェンで、営業許可を持つ屋台業者を対象に調査を行いました。
この種の調査は、業者が食品安全について何を知り(知識)、どう考え(態度)、どう行動しているか(実践)を尋ねる方式が中心です。ただし本人の申告だけでは、実際の行動を正確に捉えきれない可能性があります。そこで著者らは、質問票に加えて調査者が作業の様子を直接観察する方法を組み合わせました。目的は二つです。一つは知識・態度・自己申告の実践と、観察された取り扱いの実態を把握することです。もう一つは、性別や学歴などの属性との関連を調べることです。
調査の方法
調査期間は2025年9月20日から12月16日までです。地区当局の記録をもとに、選定された10地区から登録済みの屋台業者133人を特定し、そのうち100人を無作為に選びました。選ばれた100人全員が、質問票と観察評価の両方に参加しています。
質問票では、食品安全の基本原則を知っているかどうかなどを「はい・いいえ」で尋ねました。このため論文は、結果を「正しい知識を試験で確かめたもの」ではなく、「本人が知っている・意識していると答えた割合」として扱っています。あわせて、規制や研修に対する態度と、日頃の衛生行動の自己申告も尋ねました。観察では、調理場所や器具、保存状態、個人の衛生、害虫対策、ごみの管理などをチェックリストで確認しました。参加者のうち、食品安全の正式な研修を受けたことがない人は63%でした。
主な結果
基本的な認識については、多くの人が肯定的に答えました。食品を扱う前の手洗いの重要性を認識していると答えた人は94%、食品安全の基本原則に通じていると答えた人は85%でした。一方、より専門的な項目では回答が低くなりました。鶏肉の推奨中心温度を知っていると答えた人は24%、冷凍食品の安全な解凍手順は51.1%、生の食品と加熱済み食品の交差汚染を防ぐ方法は55%、傷みやすい食品の保存温度は58.2%でした。
態度の面では、全員が「規制を守ることは商売の成功に必要」に同意しました。研修や指導を受けたいという人は98%、定期的な衛生検査が必要だという人は97%でした。ただし「指針に従うと商売の負担が増える」という項目では、同意と不同意がちょうど半々に分かれました。
自己申告の行動では、全員が石けんでの手洗いや作業着の洗濯をしていると答えました。その一方で、すぐに食べられる食品を素手で扱うと答えた人も全員に上りました。十分な手洗い設備があると答えた人は2%、適切なごみ処理設備があると答えた人は3%にとどまりました。定期的な健康診断、エプロンやマスクの着用を報告した人はいませんでした。
観察では、調理場所と器具(89%)、保存場所の清潔さ(86%)、個人の衛生(86%)が高い水準でした。これに対して、洗浄用薬剤の使用(54%)、冷蔵庫・冷凍庫の定期的な霜取り(50%)、冷凍食品の安全な解凍(49%)などは低めでした。また、食品安全の探索的な知識・意識スコアには、性別、年齢、国籍、婚姻状況、学歴、営業形態、研修経験のいずれによっても統計的に有意な差は見られませんでした。
研究が示すこと
著者らは、一般的な衛生意識は高い一方で、温度管理や解凍、交差汚染の防止といった具体的で実践的な項目に課題があると指摘しています。手洗いやごみ処理の設備が乏しいなど、業者が働く環境にも課題がみられました。論文は、基本的な衛生に加えて具体的な取り扱いまで扱う実践的な教育を、設備や監視の支援とあわせて検討する価値があると述べています。
ただし、この研究は一時点の調査であり、属性と行動の因果関係や研修の効果を示すものではありません。また、食品の微生物汚染や食中毒の発生は調べていないため、観察された取り扱いが健康にどう影響するかについて結論は出せないと著者らは明記しています。研究チームは本研究を、この地域の屋台の食品安全を考えるための基礎的な資料と位置づけています。
原著論文の著者・所属:Sarah Tshepho Pona Matenge(Department of Healthcare Service Management, School of Leadership and Management, Boitekanelo College)、Moffat Nakedi(Department of Healthcare Service Management, School of Leadership and Management, Boitekanelo College)、Ellen Tsholofelo(Department of Health Promotion, School of Public Health, Boitekanelo College)、Preeti Unnithan(Department of Quality Assurance and Curriculum Development, Gaborone, Botswana)、Kefentse Mosarwane(Department of Counselling, School of Rehabilitation, Boitekanelo College)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Sarah Tshepho Pona Matenge, Moffat Nakedi, Ellen Tsholofelo, et al. Food safety knowledge, attitudes, practices, and observed food handling practices among licensed street food vendors in Tlokweng, Botswana. Frontiers in Food Science and Technology 2026-10-21. DOI: 10.3389/frfst.2026.1961032. 原著ライセンス:CC BY.