ジャガイモを長く保存できる形に加工する方法のひとつに、薄切りにして乾燥させ粉末などにする手法があります。天日や太陽光を利用した乾燥は電気代がかからず導入しやすい一方、時間がかかるうえに色や栄養が損なわれやすいという弱点も指摘されてきました。今回、エチオピアのバヒルダール大学に所属する研究者らが、マイクロ波による下処理と太陽光乾燥を組み合わせることで、この弱点を補えるかを調べた研究を発表しました。
実験にはSolanum tuberosum L.、いわゆるジャガイモのスライスが使われました。研究チームは「スライスの厚さ」と「マイクロ波による前処理の時間」という2つの条件を変化させながら乾燥の様子を観察する要因計画という手法を採用しています。厚さは3ミリメートルから7ミリメートルの範囲、マイクロ波処理の時間は0分(処理なし)から6分の範囲で設定され、乾燥にはArc'Teryx乾燥機という太陽光乾燥装置が用いられました。評価の対象は、乾燥にかかる速度だけでなく、色や吸水性といった理化学的・機能的な特性、さらにビタミンCなど栄養成分の保持率にも及んでいます。
薄く切って電子レンジ加熱すると乾燥は速くなる
結果として、スライスの厚さとマイクロ波前処理の時間は、いずれも乾燥のしかたに統計的に意味のある影響を与えることが確認されました(p<0.05)。もっとも乾燥が速かったのは、スライス厚3ミリメートルにマイクロ波6分の前処理を組み合わせた条件で、乾燥完了までの時間は5.67時間と最も短く、乾燥速度や水分の減り方も最大になったと報告されています。乾燥の過程全体を通じて見られたのは「減率乾燥期」と呼ばれる段階で、これは食品内部の水分が表面まで拡散してくる速さが乾燥全体のペースを決めている状態を指します。
色や栄養、扱いやすさにも変化
乾燥条件を最適化したケースでは、仕上がりの色調や明るさが改善したほか、ビタミンCの保持率も最大10.40mg/100gまで高まったとされています。一方で、たんぱく質や炭水化物といった一般成分やミネラルの含有量は、条件を変えてもほぼ変化しなかったと報告されています。また、乾燥後の粉末を水に戻したときの吸水能力は最大271.53%まで向上し、油を吸う力(吸油能)も高まった一方で、かさ密度は低下しました。これらの変化は、粉末が水で戻りやすく、扱いやすい性質を持つことを示唆していると研究チームは述べています。
この研究をどう読むか
この論文の要約には研究の限界について明示的な記載はありません。今回の結果は、特定の乾燥装置と条件範囲のもとで得られたものであり、ジャガイモの乾燥・粉末化におけるひとつの知見として位置づけられます。マイクロ波前処理と太陽光乾燥の組み合わせが常にこの研究と同じ結果をもたらすと断定するものではなく、あくまで一つの研究として今後さらに検証が重ねられていく性質のものと考えられます。
まとめ
この研究では、ジャガイモスライスの厚さとマイクロ波前処理の時間を組み合わせて太陽光乾燥を行うことで、乾燥時間の短縮や色調・ビタミンC保持率の改善、吸水性や取り扱いやすさの向上が見られたことが報告されました。太陽光を利用した乾燥という省エネルギーな手法に、短時間のマイクロ波処理を組み合わせる工夫が、食品加工の効率と品質の両立に役立つ可能性を示す知見として注目されます。
※本記事は原著論文の翻訳ではなく、研究内容を独自に解説したものです。出典(原著論文):Kagnew Belayhun Admassie, Aynadis Molla Asemu, Birhanu Ayitegeb Ambaw. Performance and quality assessment of microwave-pre-treated solar drying of potato slices using an Arc'Teryx dryer. アプライド・フード・リサーチ (2026). DOI: 10.1016/j.afres.2026.102535. 原著ライセンス: cc-by-nc-nd.