この研究は、アメリカの研究機関の研究論文です。

掲載誌:Microorganisms

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

果物や野菜に豊富に含まれる色素成分「カロテノイド」は、生理活性を持つことが知られており、腸内の環境に働きかけることで腸内細菌の構成に影響を与える可能性が指摘されています。しかし、こうした関連を若い成人世代で調べた研究はこれまで限られていました。今回、フロリダ国際大学の研究者らのグループが、ラテン系の新成人(18〜25歳)を対象に、食事から摂取するカロテノイドの量と腸内細菌の多様性や構成との関連を調べたパイロット研究(予備的研究)を発表しました。

研究でわかったこと

この研究は横断的な解析で、対象となったのはラテン系の新成人50名です。参加者の平均年齢は20.3±2.19歳で、74.0%が女性でした。食事の摂取量は3回の24時間思い出し法(前日に食べたものを聞き取る方法)によって評価され、カロテノイドの摂取量は連続的な数値として、また摂取量の多さで3つのグループ(三分位)に分けて解析されました。腸内細菌の構成は、便サンプルを用いた16S rRNA遺伝子のV3〜V4領域のシークエンシング(塩基配列解析)によって調べられました。

腸内細菌の多様性については、細菌の種類の豊富さや均等性を示す「α多様性」を多変量線形回帰で、サンプル間の細菌構成の違いを示す「β多様性」をPERMANOVA(9999回の並べ替え検定)で、それぞれ関連する要因を調整した上で解析しました。その結果、カロテノイド摂取量を連続変数として扱った場合には、α多様性ともβ多様性とも統計的に有意な関連は見られませんでした。

一方で、摂取量を三分位に分けた解析では、カロテノイド摂取量が多いグループほど、Chao1という指標で示される細菌の「豊富さ」が高い傾向が名目上見られました(回帰係数B=7.06、95%信頼区間0.40〜13.7、p=0.038)。ただし、この関連は複数の比較を行った際の誤検出を調整するベンジャミニ・ホックバーグ法による補正を行うと、統計的な有意性を保てませんでした。さらに、食物繊維や果物・野菜の摂取量も追加で調整した感度分析では、カロテノイド摂取量の三分位区分と「unweighted UniFrac」という細菌構成の違いを示す指標との間に関連が見られました(R²=0.08、p=0.009)。加えて、探索的な解析では、摂取量のグループによって存在量が異なる特定の細菌の分類群(タクサ)も見つかりました。

この研究の位置づけ・読むうえでの注意

今回の結果から、著者らは「カロテノイド摂取量は腸内細菌全体の多様性とは関連しなかったものの、探索的な解析では、細菌の豊富さや分類群の構成といった特定の側面との関連が観察された」とし、ラテン系新成人においてカロテノイドが腸内細菌群集構造の一部の特徴と関連している可能性を示唆しています。ただし、これはあくまで50名を対象としたパイロット研究であり、著者ら自身も「これらの予備的な知見は、より大規模な研究での確認が必要である」と述べています。三分位解析で見られたChao1豊富度との関連も、多重比較の補正後には有意性が保たれなかった点には注意が必要です。

まとめ

この研究は、ラテン系新成人という特定の集団において、食事由来のカロテノイド摂取量と腸内細菌の多様性・構成との関連を予備的に検討したものです。全体的な多様性との明確な関連は確認されなかった一方で、細菌の豊富さや一部の分類群との関連を示唆する探索的な結果が得られました。これらはあくまで一つの予備的研究の結果であり、結論が確定したものではないため、今後より大規模な研究による確認が待たれます。

※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。出典(原著論文):ラテン系新成人における食事性カロテノイド摂取量と腸内細菌の多様性・群集構成(マイクロオーガニズムズ・2026年08月)

著者:Alexandra Briceno(Department of Dietetics and Nutrition, Robert Stempel College of Public Health & Social Work, Florida International University, Miami, FL 33199, USA)、Cristina Palacios(Department of Dietetics and Nutrition, Robert Stempel College of Public Health & Social Work, Florida International University, Miami, FL 33199, USA)、Vijaya Narayanan(Department of Dietetics and Nutrition, Robert Stempel College of Public Health & Social Work, Florida International University, Miami, FL 33199, USA)、Florence George(Department of Mathematics and Statistics, Florida International University, Miami, FL 33199, USA)、Sabrina Sales Martinez(Department of Dietetics and Nutrition, Robert Stempel College of Public Health & Social Work, Florida International University, Miami, FL 33199, USA)