著者の所属・活動拠点の国は、ベトナムです。
掲載誌:Polish Journal of Food and Nutrition Sciences
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
ドラゴンフルーツは水分が多く組織もやわらかいため、収穫後に傷みやすい果物です。論文によると、ベトナムは主要な生産国の一つで、生産量の多くが輸出に回っています。そのため、加工によって品質を安定させ、付加価値を高める方法が求められています。
加工品の一つに、水分を20〜30%ほどまで減らしたセミドライフルーツがあります。完全に乾燥させた果物とは違い、やわらかく噛みごたえのある食感を保ちながら保存しやすくなるのが特徴です。一方、温風で長時間乾燥させると、色が悪くなったり、熱に弱い成分が失われたりするおそれがあります。
そこで研究チームは、乾燥前の下処理(前処理)として、濃い糖液に果肉を浸して水分を引き出す「浸透脱水」と、浸漬中に超音波を当てる「超音波併用浸透脱水」に注目しました。浸す液には、一般的な砂糖(ショ糖)と、低カロリーの甘味料として知られる糖アルコールのエリスリトールを使いました。目的は、これらの前処理が赤肉ドラゴンフルーツの乾燥の速さや、セミドライ製品の成分・見た目・食味にどう影響するかを調べることです。著者らによると、赤肉ドラゴンフルーツでこうした前処理を体系的に調べた研究はまだ行われていませんでした。
どのように調べたか
果肉を縦横4cm、厚さ0.75cmの角切りにし、3種類の液に浸しました。濃度30°Brixのショ糖液、50°Brixのショ糖液、30°Brixのエリスリトール液です(°Brixは溶けている糖分などの濃さを示す単位です)。通常の浸透脱水では室温で120分間浸しました。超音波併用の処理では、同じ液に浸したまま超音波洗浄槽で周波数37kHzの超音波を30℃で10分間当てました。
前処理後の果肉は60℃の温風で乾燥させ、重さの変化から乾燥の進み方を記録しました。比較のため、前処理をしない果肉も同じ条件で乾燥しました。記録したデータに乾燥の進み方を表す数式モデルを当てはめ、水分が22g/100gに下がるまでの時間を予測しています。
その水分量まで乾燥させた製品について、赤い色素ベタシアニンの量、ポリフェノールの総量、抗酸化能、色、乾燥による縮み具合を測りました。さらに、訓練を受けていない50人の評価者が、色・食感・味などを9段階で評価しました。
主な結果
通常の浸透脱水では、30°Brixのエリスリトール液と50°Brixのショ糖液で抜けた水分量が同程度でした。いずれも30°Brixのショ糖液の約2倍です。著者らは、エリスリトールの分子がショ糖より小さいことが関係していると考えています。超音波を併用した処理では、わずか10分で、30°Brixショ糖液に120分浸した場合と同程度の水分が抜けました。
乾燥時間の予測では、前処理なしの12.62時間に対し、30°Brixのエリスリトール液で超音波併用処理をした試料が9.92時間と最も短くなりました。21.4%の短縮です。一方、50°Brixの濃いショ糖液を使った試料は、前処理で多くの水分が抜けたにもかかわらず乾燥時間は12.38時間で、前処理なしとほぼ変わりませんでした。著者らは、糖が多くしみ込んで組織が変化し、内部から水分が抜けにくくなった可能性を挙げています。
成分については、120分間の通常の浸透脱水を行った試料で、前処理なしと比べてベタシアニンが18.8〜21.3%、ポリフェノールが7.6〜9.1%少なくなりました。研究チームは、水に溶けやすい成分が長い浸漬中に液へ溶け出したためと考えています。これに対し、エリスリトール液で超音波併用処理をした試料は、ベタシアニン(100gあたり12.93mg)、ポリフェノール、抗酸化能のいずれでも前処理なしの試料と統計的な差がありませんでした。また、ベタシアニンやポリフェノールの量と抗酸化能の間には強い相関が見られました。
乾燥による面積の縮みは、前処理なしの28.28%に対し、エリスリトール液で超音波併用処理をした試料では16.84%に抑えられました。この試料は前処理なしと比べて明るさや赤みの値が高く、色の差を示す値は7.19でした。官能評価でも、この試料は色・食感・味で9点満点中平均7点を超える評価を得ました。
研究が示すこと
この研究は、乾燥前に短時間の超音波処理とエリスリトール液を組み合わせることで、赤肉ドラゴンフルーツの乾燥時間を短くできることを報告しています。同時に、色素やポリフェノールを前処理なしと同程度に保ち、形や色、食味の評価も良好な結果が得られました。著者らは、この組み合わせが、有用成分を多く含み食味も保たれたセミドライのドラゴンフルーツをつくる方法として有効だと結論づけています。
著者:Linh Tran Khanh Vu(Department of Food Technology , Faculty of Chemistry and Life Sciences , Ho Chi Minh City University of Technology and Engineering , No. 1 Vo Van Ngan Street , Thu Duc Ward , Ho Chi Minh City , Vietnam)、Quynh L.D. Pham(Department of Food Technology , Faculty of Chemistry and Life Sciences , Ho Chi Minh City University of Technology and Engineering , No. 1 Vo Van Ngan Street , Thu Duc Ward , Ho Chi Minh City , Vietnam)、Tien H.T. Dang(Department of Food Technology , Faculty of Chemistry and Life Sciences , Ho Chi Minh City University of Technology and Engineering , No. 1 Vo Van Ngan Street , Thu Duc Ward , Ho Chi Minh City , Vietnam)、Ngoc Lieu Le(Department of Food Technology , International University , VNU-HCM , Ho Chi Minh City , Vietnam)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Linh Tran Khanh Vu, Quynh L.D. Pham, Tien H.T. Dang, et al. Effects of Erythritol and Ultrasound-Assisted Osmotic Dehydration on Drying Kinetics, Bioactive Retention, and Quality of Semi-Dried Red-Fleshed Dragon Fruit. Polish Journal of Food and Nutrition Sciences 2026-10-12. DOI: 10.31883/pjfns/240491. 原著ライセンス:CC BY.