著者の所属・活動拠点の国は、中国です。

掲載誌:Frontiers in Sustainable Food Systems

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

生鮮農産物の供給網では、商品の傷みやすさと企業間の密接なつながりによって、一部の企業の停止が他の企業へ連鎖するおそれがあります。研究チームは、中国・長江デルタの企業データから供給網を構築し、どのような障害がネットワーク全体の機能低下につながるのか、在庫の余裕や緊急時の協力、停止後の復旧がその影響をどう変えるのかを調べました。

何を、どのように調べたか

研究チームは、江蘇省、浙江省、安徽省、上海市を対象に、企業の登記情報と上場企業が公表する主要な仕入れ先・販売先の情報を用い、1,669社と6,139本の供給・需要関係からなるネットワークを構築しました。中核となる上場農業企業の取引関係は、別のデータベースでも照合しました。

このネットワーク上で、一部の企業を最初に停止させ、その影響が取引先へ広がる過程をシミュレーションしました。企業を無作為に選んで停止させる条件と、取引先が多い中核企業から順に停止させる条件を比較し、最初に停止させる企業の割合を全体の10~90%で変えました。各条件について50回の独立した実験を行い、結果を平均しました。

モデルには、在庫の状態に応じた企業の停止確率、停止した企業が担っていた取扱量を他社へ振り分ける仕組み、輸送距離に伴う鮮度低下を組み込みました。在庫容量の余裕や、近距離の企業へ優先的に振り分ける度合いなどを変え、稼働を続ける企業の割合と、企業間のつながりの効率、停止後の回復を評価しました。なお、モデル内の時間は影響が伝わる反復回数であり、実際の時間や日数ではありません。

主な報告結果

中核企業を優先的に停止させる条件では、企業数としては比較的小さな障害でも、つながりの機能が大きく損なわれました。取引先数が多い上位10%の企業を最初に停止させると、連鎖が落ち着いた後の接続効率は障害前の約19.7%まで低下しました。一方、稼働を続ける企業の割合は約75%でした。著者らは、企業が多数残っていても、それらを結ぶ中核が失われることで供給網が分断される結果として報告しています。

停止後の復旧では、企業数の回復速度は、無作為に停止させた場合と中核企業を狙った場合で同程度でした。しかし、接続効率の回復は主に無作為な停止の後に見られ、中核企業を狙った停止の後には弱いままでした。論文は、企業の重要性を区別しない復旧では、ネットワークを支える特定の中核企業が十分に復旧するとは限らないと説明しています。

在庫容量の余裕を表す係数では、0.35~0.45に、効果が頭打ちになる最適域が報告されました。また、緊急時の取扱量の振り分けを近隣企業に集中させると、影響が広がる範囲を狭められましたが、その便益も早い段階で頭打ちになりました。中核企業の停止ですでに分断されたネットワークでは、振り分け方を変えても接続効率の改善は小さいという結果でした。

この報告が示すこと

研究チームは、日常的な局所障害への対応と、供給網の骨格を損なう障害への備えを分けて考える必要があると結論づけています。緊急物資の到着や業務再開を速めるだけでなく、中核企業の取引先を多様化し、代替経路をあらかじめ確保するという、ネットワーク構造への対策を重視しています。

ただし、このネットワークは公開情報に基づくため、企業間の取引頻度や実際の物流量、商品ごとの違いを反映していません。果物、野菜、肉、水産物などを共通の取扱量として扱い、停止判定の条件も企業間で共通にしています。一部のパラメーターには、実際の企業の操業データによる調整も必要とされています。そのため著者らは、結果を個別品目の予測ではなく、生鮮農産物の平均的な供給網の性質を示すものと位置づけています。

原著論文の著者・所属:Qiang Xiao(School of Economics and Management, Lanzhou Jiaotong University)、Xinyue Wang(School of Economics and Management, Lanzhou Jiaotong University)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Qiang Xiao, Xinyue Wang. Cascading failure mechanisms in the fresh agricultural product supply chain of China’s Yangtze River Delta. Frontiers in Sustainable Food Systems(出版社:Frontiers Media) 2026-09-21. DOI: 10.3389/fsufs.2026.1956954. 原著ライセンス:CC BY.