子供の食習慣には、日々の食事を用意する親の影響が大きいと考えられています。もし親の『味の感じ方』と子供のむし歯のなりやすさに関係があるとすれば、親を調べることで子供のむし歯リスクをある程度予測できるかもしれません。今回紹介するのは、インドの大学の小児歯科(Department of Pedodontics, College of Dental Sciences, Davangere)に所属する研究グループが、父親・母親・子供の『味覚知覚』と『むし歯の経験』の関係を調べた研究です。
どのように調べたか
研究では、6〜12歳の子供とその両親、合わせて113組が対象になりました。まずアンケート調査を行い、食事のパターンや歯みがきなどの口腔衛生習慣について情報を集めました。
むし歯の経験は、大人にはDMFT指数(永久歯のむし歯・喪失・修復歯の本数を示す指標)、子供にはdeft指数(乳歯を対象にした同様の指標)を使って記録されました。
味覚の評価には、6-n-プロピルチオウラシル(PROP)という苦味物質を染み込ませた試験紙が使われました。参加者はこの試験紙を使った反応をもとに、苦味を強く感じる『スーパーテイスター(supertaster)』、中程度に感じる『ミディアムテイスター(medium taster)』、ほとんど感じない『ノンテイスター(non-taster)』の3グループに分けられました。得られたデータは、統計ソフトSPSS 21.0を用いてKruskal Wallis検定やカイ二乗検定で分析されています。
わかったこと
結果を比較すると、母親と子供の味覚知覚のあいだには統計的に意味のある関連が見られましたが、父親と子供の味覚知覚のあいだには関連は見られなかったと報告されています。
また、親と子供それぞれのむし歯経験については統計的に意味のある関連が見られた一方で、親の味覚知覚と子供のむし歯経験のあいだには関連が見られなかったとされています。
研究チームは、PROP試験紙で調べた苦味の感じ方とむし歯の経験のあいだに強い逆相関があると結論づけています。つまり苦味を強く感じる人ほどむし歯が少ない傾向がうかがえたということです。ただし、親の味覚知覚と子供のむし歯経験そのものとのあいだには相関は認められなかったとされています。研究チームは、PROP感受性検査が、食の好みに対する個人の遺伝的な感受性を評価する手段として今後役立つ可能性があると述べています。
この研究を読むうえで
この研究は113組の親子を対象にした横断的な調査であり、ある時点での関連を統計的に示したものです。母親と子供の味覚知覚に関連が見られた一方で、父親と子供には見られなかった、親の味覚知覚と子供のむし歯経験には関連が見られなかったなど、結果には一様でない部分も含まれており、単純に『親の味覚を調べれば子供のむし歯を予測できる』と言い切れるものではありません。一つの研究の結果であり、今後さらなる検証が必要と考えられます。
まとめ
今回の研究では、父親・母親・子供113組を対象に、PROP試験紙による味覚知覚とDMFT/deft指数によるむし歯経験が調べられました。母親と子供の味覚知覚には関連が見られた一方、父親と子供、および親の味覚知覚と子供のむし歯経験には関連が見られなかったと報告されています。研究チームは、苦味の感じ方とむし歯経験のあいだに強い逆相関があるとし、PROP感受性検査が食の好みに対する遺伝的感受性を評価するツールとして今後活用できる可能性を指摘しています。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:父親、母親、子供間の味覚知覚と齲蝕経験の評価と比較(インターナショナル・ジャーナル・オブ・コンテンポラリー・ペディアトリクス・2026年08月)