発酵食品には独特の風味がある一方、発酵や加工の過程で生成される化学物質にも関心が向けられています。中国の伝統的な発酵魚料理である臭鱖魚(シマヘダイ、発酵させたマンダリンフィッシュ)を対象に、N-ニトロソアミン(NAs)という物質群の含有量を調べ、日常的な食事パターンの違いによって健康リスクがどう変わるかを検討した研究が報告されました。

研究でわかったこと

研究チームは、臭鱖魚のサンプルに含まれる10種類のニトロソアミン(NAs)を定量しました。サンプルの中には検出限界未満(未検出)の値が多く含まれていたため、Quantile-Quantile(Q-Q)プロットというモデルを用いて、より精度の高い濃度分布関数を推定しています。その結果、サンプルの2.97%が、NDMA(ニトロソジメチルアミン)について中国の基準値である4µg/kgを超えていたことが示されました。

さらに、罹患調整生存年数(DALY)という指標を使い、4つの食事パターン(ケトジェニック食、地中海式食、中国食品指南、DASH食)と、異なる曝露頻度(摂取頻度)のもとで、臭鱖魚由来のニトロソアミン曝露による累積的な健康リスクを評価しました。9種類のニトロソアミンによる累積的な疾病負担は、4つの食事パターンと4つの曝露頻度の組み合わせにおいて、4.52×10⁻⁹から1.09×10⁻⁵ ppy(人年あたり)の範囲でした。健康影響として最も懸念されたのは肝臓がんで、次いで肺がん、膀胱がんが挙げられています。食事パターン別にリスクの中央値を比較すると、ケトジェニック食が最も高く、次いで地中海式食、中国食品指南、DASH食の順であったと報告されています。一方で、本研究で定義した4つの食事パターンの枠組みの中で、臭鱖魚由来のニトロソアミン曝露のみを考慮した場合、月1回程度の摂取であれば安全な範囲にあることが示されました。

この研究の位置づけ・読むうえでの注意

この研究は、臭鱖魚という特定の発酵食品に含まれるニトロソアミンについて、複数の食事パターンや摂取頻度を組み合わせてリスクを評価したものであり、あくまで一つの研究です。示された数値やリスクの序列は、本研究で設定した条件(食事パターンの定義や曝露頻度の区分など)のもとでの推定であり、個々人の実際の食生活や健康状態によって結果は異なり得ます。研究チームは、中国疾病予防管理センター北京市食品中毒診断・トレーサビリティ技術重点実験室(北京)などに所属しています。

まとめ

今回の研究では、臭鱖魚に含まれる10種類のニトロソアミンを定量し、4つの食事パターンのもとでの累積的な健康リスクをDALYという指標で評価しました。一部サンプルでNDMAが中国の基準値を超えていたこと、肝臓がんが最も懸念される健康影響として挙げられたこと、リスクの大きさは食事パターンによって異なり、ケトジェニック食が最も高かったことなどが報告されています。ただし、本研究の条件下では月1回程度の摂取は安全な範囲とされており、著者らはこの結果が食事パターンの最適化やニトロソアミン関連のがんリスク低減に向けた科学的知見を提供するものとしています。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:シマヘダイ(臭鱖魚)中の10種ニトロソアミンの定量と4つの食事パターンにおける累積健康リスク評価(エコトキシコロジー・アンド・エンバイロメンタル・セーフティー・2026年08月)