この研究は、ドイツの研究機関の研究論文です。
掲載誌:Zeitschrift für Tourismuswissenschaft
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
旅行先で何を食べるかは、いまや旅そのものを決める大きな理由のひとつになっています。同時に、食に関する体験をどう見つけ、どう評価し、どう他者へ広めるかという過程には、ソーシャルメディア(SNS)が深く関わるようになりました。著者らは、こうした傾向がとりわけ強いとされるZ世代に注目しています。
この研究が扱ったのは、ドイツのZ世代において、SNSが「食を動機とする旅行」の意思決定をどの程度左右しているのか、という問いです。ここでいう食を動機とする旅行(料理・食文化を目的とした観光)とは、現地の料理や飲食体験そのものを目当てに訪問先を選ぶような旅の形を指します。
調べ方
著者らは、オンラインアンケート調査を実施しました。調査票はSoSci Surveyという調査プラットフォームを用いて作成され、Instagram上で配布されています。実施期間は2025年11月1日から12月30日までと報告されています。
アンケートには1,061件のアクセスがあり、そのうち最後まで回答された761件が分析対象として採用されました。SNSから受ける影響の程度は、4段階のリッカート尺度(「あてはまる」から「あてはまらない」までを段階で選ぶ回答形式)による5つの質問項目をまとめた「ソーシャルメディア影響指標(SM-Index)」という単一の尺度で測定されています。著者らは、この尺度の内的整合性(複数の質問が同じ事柄を一貫して測れているかの指標)としてクロンバックのα係数.816を報告しました。
主な報告結果
記述統計と推測統計による分析の結果、SNSが食を動機とする旅行の意思決定に及ぼす影響は全体として中程度であり、SM-Indexの平均値は2.62だったと報告されています。
内訳を見ると、項目によって差がありました。最も強い動機づけの影響を示したのは、作り込まれていない「本物らしい」視覚的コンテンツで、平均値は3.02でした。一方、インフルエンサーに関連する影響は最も小さく、平均値は1.76にとどまっています。著者らはこの対比から、回答者にとっては発信者の影響力・権威よりも、コンテンツから感じ取られる真正性(本物らしさ)のほうが重く働いていると述べています。
行動面での影響も大きく報告されました。回答者の63.6%が、SNSの投稿だけをきっかけに、食に関わる体験を少なくとも一度は予約した、あるいは実際に訪れたことがあると答えています。
この報告が示すこと
この研究は、SNS上の食の情報が、閲覧にとどまらず実際の予約や訪問という行動にまでつながっている実態を、ドイツのZ世代という限定された対象について数値で示したものです。著者らは、これらの知見が観光業やホスピタリティ産業のマーケティングにとって意味を持つと指摘しています。
とりわけ、影響力の大きな発信者を起用することよりも、体験の真正性が伝わる視覚的な内容のほうが強く働いていたという対比は、食と旅をめぐる情報の受け取られ方を考えるうえでの手がかりになります。
著者:Jens Rüdiger(IU Internationale Hochschule Campus Mannheim Lise-Meitner-Allee 10 Mannheim Deutschland)、Steffen Spiegel(IU Internationale Hochschule Campus Bremen Senator-Apelt-Straße 51 Bremen Deutschland)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Jens Rüdiger, Steffen Spiegel. Unlocking Culinary Journeys: The Influence of Social Media on Food Tourism among Generation Z. Zeitschrift für Tourismuswissenschaft 2026-09-25. DOI: 10.1515/tw-2026-0018. 原著ライセンス:CC BY.