青魚に多く含まれるDHA・EPAといった長鎖オメガ3脂肪酸は、心血管の健康を支える栄養素として知られています。持久系スポーツなどで日々ハードなトレーニングを積むアスリートは、一般の人以上に食事管理に気を配っているイメージがあるかもしれません。しかし、実際に彼らの体内のオメガ3レベルはどうなっているのでしょうか。今回、オーストラリアを拠点とする多様な競技のトップアスリートを対象に、血液中のオメガ3の状態と、食事からのDHA・EPA摂取量を調べた研究が「スポーツ・メディシン-オープン」誌に発表される予定です。
研究でわかったこと
この研究では、18〜45歳のオーストラリア拠点のアスリート595名(男女、17競技)を対象に、複数の施設で調査が行われました。参加者は「高水準」「エリート」「世界トップレベル」に相当する競技レベル(ティア3〜5)の選手たちです。研究チームは、指先から採取した少量の血液(乾燥血液スポット)を用いて血中脂肪酸を分析し、オメガ3の充足度を示す指標である「オメガ3指数(O3I)」を算出しました。あわせて、魚介類の摂取頻度を尋ねる質問票を用いて、食事からのDHA・EPA摂取量も調べています。
その結果、参加者全体の平均O3Iは5.88%(標準偏差1.40)でした。心血管疾患リスクの低減と関連するとされる目安の8%以上に達していたのは、全体のわずか7%にとどまり、多くの選手が4〜6%(60%)または6〜8%(30%)の範囲にあり、4%未満の選手も3%存在しました。また、DHA・EPAの合計摂取量が多い群ほどO3Iも高くなる傾向がみられ(摂取量の四分位が上がるほどO3Iが上昇)、男性は女性よりO3Iが高いという結果も示されました。
オメガ3サプリメントを利用していると回答した選手(全体の19%)は、利用していない選手に比べてO3Iの中央値が明らかに高く(利用者7.02% vs 非利用者5.38%)、サプリメント使用とO3Iの関連が示唆されています。一方で、食事(魚などの食品)からのDHA・EPA摂取量は1日あたり中央値261mgにとどまり、実に72%の選手が1日500mg未満しか摂取していないという結果でした。なお、食品からのDHA・EPA摂取量そのものには男女差はみられなかったとされています。
この研究の位置づけ・読むうえでの注意
この研究は、ある時点でのオーストラリア拠点のアスリートを対象とした横断調査であり、O3Iや摂取量と競技パフォーマンスやケガ、実際の心血管疾患発症との因果関係を直接示すものではありません。あくまで「この集団ではO3Iが低い選手が多く、食事からのDHA・EPA摂取量も少なめだった」という実態を捉えた一つの研究であり、他の国・地域や競技レベルの異なる集団に同様の結果が当てはまるかどうかは、この研究だけからは判断できません。
まとめ
今回の調査では、オーストラリア拠点の高水準・エリート・世界トップレベルのアスリートの多くが、心血管リスク低減の目安とされる8%以上のオメガ3指数に達しておらず、食事からのDHA・EPA摂取量も1日500mg未満にとどまる選手が大多数を占めることが示されました。研究チームは、こうした結果から、スポーツ関連組織や競技団体がアスリートのDHA・EPA摂取を後押しする取り組みを検討する余地があると述べています。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:オーストラリアの高水準・エリート・世界トップレベル(ティア3〜5)の男女アスリートにおけるオメガ3指数と自己報告によるDHA・EPA摂取量:横断研究(スポーツ・メディシン-オープン・2026年07月)