「健康を優先して食べ物を選ぶ人」もいれば、「とにかく美味しさや気分を優先する人」「手軽さを重視する人」もいます。こうした食品選びの優先順位は、単なる好みの違いだけでなく、その人のパーソナリティ(性格特性)と関係しているのでしょうか。今回紹介する研究は、日本の大規模なデータを用いて、食品選択に関する価値観と、性格特性や年齢・性別などの人口統計学的特性との関連を調べたものです。
食品選択に関する価値観は、比較的安定した心理的要因であり、性格や食行動と結びついている可能性があると考えられています。しかし、日本においてこうした価値観が個人差とどう関連しているのかは、これまではっきりしていませんでした。そこでこの研究では、健康・栄養、簡便性、味・気分、価格の手頃さ、メディア・話題性など6つの食品選択価値観について、それぞれをどの程度優先するかという「相対的な優先順位」に着目しました。
研究でわかったこと
この研究では、15歳から102歳までの日本人回答者141,761人のデータを用い、人口統計学的特性、性格特性の代表的な枠組みである「ビッグファイブ(誠実性・外向性など5つの特性)」、そして「ダークトライアド」と呼ばれるマキャベリズム・ナルシシズム・サイコパシーという3つの特性が、6つの食品選択価値観の相対的な優先順位とどう関連するかが、重回帰分析という統計手法を用いて検討されました。
その結果、年齢や性別といった人口統計学的特性は、特に健康や家族に関わる価値観について、特徴的な関連を示すことが報告されています。性格特性との関連では、ビッグファイブのうち「誠実性」が高い人ほど健康・栄養を重視する傾向が、「外向性」が高い人ほど簡便性を重視しない一方で味・気分を重視する傾向が見られたとされています。
またダークトライアドの特性では、「ナルシシズム」が高い人ほどメディア・話題性を重視し、味・気分を重視しない傾向がある一方、「マキャベリズム」はこれらの価値観や価格の手頃さについて、ナルシシズムとは対照的な関連を示したことが報告されています。これらの関連は、人口統計学的特性や他の性格特性の影響を統計的に調整した後でも、おおむね維持されていたとのことです。
この研究の位置づけ・読むうえでの注意
この研究は、食品選択に関する相対的な優先順位が、ビッグファイブのような広範な性格特性と、ダークトライアドのような社会的に望ましくないとされる性格特性の両方について、それぞれ異なるパターンで関連していることを示すものだと位置づけられています。また、こうした優先順位が人口統計学的な背景も反映していることが示唆されています。
ここで紹介したのはあくまで一つの研究の結果であり、性格特性が食品選びの優先順位を決定づけるといった因果関係を証明したものではありません。要旨に示された内容以上の解釈は控えるべきであり、今後さらなる研究によって知見が積み重ねられていくことが期待されます。
まとめ
今回の研究では、日本の大規模なデータをもとに、食品選択における優先順位が性格特性や人口統計学的特性と関連していることが示されました。健康を重視するか、味や手軽さを重視するかといった食品選びの背景には、その人のパーソナリティが反映されている可能性がある、という視点は、自分自身や周囲の人の食習慣を見つめ直す一つのきっかけになるかもしれません。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:食品選択価値観、パーソナリティ特性、人口統計学的特性の関連(パーソナリティと個人差・2026年08月)